【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 米国長期金利、株価に細心の注意
株式評論家 植木靖男
●“トランプ陶酔境”から目覚める市場
3月21日、日経平均株価は400円超と急落した。直前まで2万円回復は必至との期待が強かっただけに衝撃的であった。トランプ大統領誕生以降で最も大きな下落幅であるばかりでなく、これは16年6月安値を起点とする今回の上昇相場が終わりを告げたことを確認するものだ。
より細かくみれば、本年大発会で16年6月からの上昇相場が終わり、その後は日柄整理で推移していたが、ここへきて値幅整理に移行したようだ。
今回の日本株の急落は、米国株の大幅安が背景にある。NYダウも21日は半年ぶりの大幅安となった。米国株のスタートも16年6月。日本株がほぼ半年、米国株はほぼ9ヵ月で頭打ちとなった。
では、今後、株価はどう展開するのであろうか。日本株が依拠する米国株は観念的にはトランプ大統領が掲げる政策の実現性に懸念があるということ。結局、議会が応としなければ実現されないところに弱みがある。
当面、オバマケアの代替法案がすんなりといかないことが憂慮されている。ここで頓挫するようであれば、市場が期待する巨額のインフラ投資も先行きどうなるかははなはだ疑問である。(編集部注:本稿執筆後にトランプ大統領はオバマケア代替法案を撤回)
要はトランプ政策への期待が萎み、陶酔境から目覚めて現実に引き戻されつつあるのだ。
●最悪シナリオでは米国9年の上昇相場に異変も
もちろん、米国株が急落したからといって日本株がそれに追随する必要はない。だが、そこに為替というあってないような化け物が存在するし、日本株の主役は海外勢である。米国株が急落すれば米長期金利は下げ、ドルは安くなるという方程式がある。
では、米長期金利はどこまで下げるのか。年初来、2.3%から2.6%の高値もみ合いにある。現状では下限の2.3%前後で反転するとみられる。であれば、ドル円相場は無理を言っても110円割れか。そして株価は米国株があと200~300ドル安、日本株はこれまでのもみ合いの下限である1万8700円~1万8800円処で下げ止まるはず。このシナリオが最も楽観的なものかもしれない。
逆に最悪のシナリオはなにかといえば、米国株価は09年3月のリーマンショック以降の足かけ9年に及ぶ上昇相場が終わりを告げたとみるケースだ。
株価は9年間で3倍強になっている。この上昇にストップがかかったとすれば、1ヵ月や2ヵ月の調整では終わらないであろう。米長期金利にしても16年7月の1.36%に対する二番底として2%前後まで急落するリスクもある。ドル円相場も105円前後さえあり得るかもしれない。
ともかく、今後の米国金利、株価には細心の注意が必要であろう。
2017年3月24日 記
株探ニュース