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【特集】ムサシ Research Memo(3):17/3期は選挙システム機材部門の売上貢献に期待

ムサシ <日足> 「株探」多機能チャートより

■2016年の投資視点:選挙システム機材部門

(1)結論

ムサシ<7521>は選挙関連機材のトップメーカーであり、証券市場においても選挙関連銘柄として高い認知度を誇っている。2016年は7月に参院選挙が行われるため、選挙システム機材部門が同社の収益を押し上げると期待されている。しかし、現在の会社側の業績予想は、いつものように保守的な予想となっている。加えて、参院選以外にも大規模選挙が起こる可能性があり、選挙システム機材部門の収益が、現在の会社予想を大きく上回る可能性があると弊社ではみている。2016年においては、同社にポジティブサプライズが起こる可能性があることを常に意識しておくべきであるというのが、当レポートの最大のメッセージだ。

(2)同社の収益構造と過去の振り返り

同社は紙の卸売から事業をスタートし、富士フイルム(現・富士フイルムホールディングス<4901>)の特約代理店としてマイクロフィルム機材や感光材料の販売へと進出した。それが現在の非破壊検査機材やスキャナー、印刷機器の販売事業へとつながっている。これらの事業は言わば商社ビジネスであるため、安定性はあるが収益性は高くない。

そうしたなかで選挙システム機材は、金融汎用システム機材と並んで、同社のオリジナル製品を扱っており、子会社の武蔵エンジニアリング(株)で設計・製造を行っている。メーカーとしての収益を確保できることに加えて、この分野では高シェアに支えられて価格主導権も有しているため、この事業部門の採算性は、同社の中ではとび抜けて高いとみられる。その結果、選挙システム機材部門の収益変動が同社全体の収益を左右する構造となっている。

下のグラフで過去の推移を見ると、選挙システム機材事業の売上高は、国政選挙によって大きく押し上げられる傾向にあることが明白だ。1993年3月期から2016年3月期までの24期間について分析すると、衆院選は8回行われ、実施年の平均売上高は33億32百万円だった。同様に、参院選も8回行われ、実施年の平均売上高は28億31百万円だった。国政選挙がなかった年は8期あり、その平均売上高は16億36百万円だった。国政選挙実施年の売上高が、未実施年のそれを明確に上回っていることがわかる。

なお、このグラフにはもう1つのメッセージがある。いずれのパターンにおいても、年々、売上高が右肩上がりで推移しているということだ。前述のように、2016年3月期は国政選挙未実施年ながらも売上高は24億76百万円に達し、未実施年の過去最高を記録した。これはかつての国政選挙実施年のそれに匹敵する水準だ。この背景には自動読取分類機のような高額な機器の販売が増加してきていることがあると弊社では考えている。自動読取分類機は普及率が50~60%程度とまだ成長余地が大きいことに加え、最初の市場投入から15年が経過し、更新需要も大きな市場に成長してきている。

国政選挙と同社の選挙システム機材部門の売上高の相関性は、今後も継続すると弊社では考えている。理由はいろいろあるが、特に重要な点は、同社の選挙機材の中でも高額製品である読取分類機は、省力化に大きく貢献する機械ということだ。選挙実施費用の中の最大の費目は人件費だ。機器の価格は一見すると高価だが、複数回の選挙を実施する過程で人件費の節減効果が着実に産み出せる点が評価されているからこそ、ここまで普及したと弊社では考えている。この分野で80%以上のシェアを有し、また「開く投票用紙」や投票用紙交付機、計数機、投票箱などのほか、様々な告知啓発用品など周辺機材をワンストップで提供できる同社は、今後も選挙関連市場の需要を着実に取り込んでいけるものと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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