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【特集】キトー Research Memo(3):16/3期は大幅な増収増益、海外売上比率は80%近い

キトー <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

(1) 2016年3月期(実績)

●損益状況
キトー<6409>の2016年3月期は売上高で55,821百万円(前期比11.7%増)、営業利益で5,221百万円(同53.8%増)、経常利益で4,576百万円(同33.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益で2,497百万円(同23.2%増)となった。売上高が増収となったのは主にピアレス社の影響(前々期は半年の寄与に対して前期は通年の寄与)によるが、円安も寄与している。地域別売上高は日本の比率が22.7%、海外が77.3%となり、この点ではグローバル企業の仲間入りをしたと言えるだろう。

営業利益は前期比で増益となり中間期時点での修正予想を上回ったが、内容は必ずしも計画どおりではなかったようだ。また各地域の状況も以下のようにまだら模様であった。

セグメント別の状況は以下のようであった。平均為替レートは、USドルが120.1円(前期109.9円)、カナダドルが91.8円(同96.5円)、ユーロが132.6円(同138.8円)、人民元が19.2円(同17.2円)であった。

a)日本
日本は売上高で25,415百万円(前期比3.7%増)、営業利益で5,521百万円(同16.8%増)となった。民需は設備投資向けを中心に比較的堅調に推移したが、当初期待したほどの伸びにはならなかった。一方で建築土木関連の需要はようやく動きが出てきたものの、全体としては本格的回復と言えるレベルではなかった。利益面においては、増収であったことと、工場の生産性改善が寄与したことなどから2ケタの増益となったが、「増収・増益であったが、社内目標ほどではなく、必ずしも満足いく結果ではなかった」と同社は述べている。

b)米州
米州は売上高で27,965百万円(同27.3%増)、営業利益で1,121百万円(同50.7%増)となった。売上高が大幅増となったのは主にピアレス社買収の影響(前々期は半年の寄与に対して前期は通年の寄与)と円安による部分が大きく、実態は必ずしも期待したほど良くはなかったようだ。ピアレス社分を除いた売上高(現地通貨ベース)は、第1四半期が前年同期比9.6%増、第2四半期が同3.4%増であったのに対して、第3四半期は同10.0%減、第4四半期が同2.0%減となり下半期に入ってから失速した。またピアレス社自体の売上高も、第3四半期が27百万ドル(前年同期比23%減)、第4四半期が26百万円(同3.8%減)となり、特に第3四半期に急速に悪化した。主な要因は、暖冬の影響によりタイヤ用チェーンの売上高が不振であったこと。また原油市況の下落により、エネルギー関連企業の投資が減ったことである。

c)中国
中国では同社製品に対する評価は高く市場シェアは高まっているが、経済減速による市場全体の落ち込みの影響を受けて同社製品への需要も低迷した。中国の状況は当初から厳しいと見ていたが、結果は予想以上に厳しかった。売上高は7,870百万円(同7.5%減)であったが円安によって底上げされており、現地通貨ベースではさらに大きな減収だった。ただし中国では、人件費を可能な限り変動費化するなどの経費削減策により、利益は計上しているので、その結果円安の影響もあり営業利益は867百万円(同3.7%増)となった。

d)アジア
アジアは売上高で5,166百万円(同5.6%減)、営業利益61百万円(前期は374百万円の損失)を計上した。減収ながら黒字転換し、前期比では大幅な利益改善となった。

利益改善の最大の要因は、前々期の大幅赤字の原因となったタイ(アジア部門の半分以上を占める)の体質改善が進み利益を計上したこと。タイ以外のアジアは多くが赤字であるが、その中でまだ規模は小さいながら新政権移行に伴いインドでの売上高が順調に拡大していることは、今後にとっては明るい材料である。

e)欧州・その他
欧州の売上高は1,686百万円(同0.3%増)、営業利益31百万円(同239.7%増)と増収増益となったが、小規模であるため全体の収益に与える影響は小さい。国別では南欧(主にイタリア)は比較的堅調であったが、ドイツと北欧(北海油田関連が主な顧客)不振であった。

●財政状況
2016年3月期末の財政状況は以下のようになった。流動資産は37,599百万円(前期末比2,878百万円減)となった。主要科目では現金及び預金が1263百万円減、受取手形及び売掛金が832百万円減、たな卸資産が1,253百万円減となった。固定資産は23,040百万円(同336百万円増)となり、内訳は有形固定資産11,901百万円(同260百万円減)、無形固定資産7,896百万円(同1,112百万円減)、投資その他資産3,242百万円(同1,709百万円増)となった。無形固定資産が減少しているのは主にピアレス社ののれん償却が進んでいるため。この結果、資産合計は60,639百万円(同2,543百万円減)となった。

流動負債は15,072百万円(同2,020百万円減)となったが、主な変動は支払手形及び買掛債務の減少811百万円、短期借入金の減少723百万円などである。固定負債は19,527百万円(同937百万円減)と減少したが、 長期借入金が1,338百万円減少したことが主な要因である。純資産は26,040百万円(同413百万円増)となったが、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加1,801百万円による。

●キャッシュ・フローの状況
2016年3月期のキャッシュ・フローは以下のようであった。営業活動によるキャッシュ・フローは4,502百万円の収入(前期3,338百万円の収入)となった。主な収入は税金等調整前当期純利益の計上4,210百万円、減価償却費1,814百万円、のれん償却費386百万円で、主な支出は法人税等の支払額2,200百万円などであった。投資活動によるキャッシュ・フローは3,572百万円の支出(同8,402百万円の支出=主にピアレス社買収)となったが、主な支出は有形固定資産の取得1,317百万円、関係会社出資金の払込1,337百万円など。財務活動によるキャッシュ・フローは1,900百万円の支出(同7,050百万円の収入)となったが、主な支出は長期借入金の返済2,836百万円、配当金の支払い694百万円による。この結果、現金及び現金同等物は1,256百万円減少し、期末の残高は8,521百万円となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《HN》

 提供:フィスコ

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