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【特集】日本調剤 Research Memo(5):国の政策は医療費抑制へと移っている


■調剤報酬改定の影響

(1)現況

健康保険制度における各種報酬は2年ごとに見直される。調剤薬局業界は2016年4月に調剤報酬改定を迎えることが予定されている。改定の具体的内容や改定幅などは、当然ながら現時点では明らかになっていない。国の政策は、かつては医薬分業に力点が置かれた時代もあったが、ここしばらくは医療費抑制へと移っている。その結果出てきたのが、ジェネリック医薬品の使用促進と在宅医療への対応だ。調剤報酬改定は、国の政策推進のための最有力なツールであり、2016年の改定もそれに沿った方向で進められると考えられる。

2015年6月30日閣議決定の「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太の方針)によれば、医療介護分野で政策に変更はないようだ。この前提に立つと、2016年の調剤報酬改定の方向性もこれまでと大きくは変わらないと考えられる。しかし一方で「メリハリある配分」という表現に象徴されるように、政策推進に向けて「加算点」制度のみならず「減点」などが取り入れられる可能性も取り沙汰されている。一部報道では、財務省が調剤基本料の「特例」拡大・点数引き下げを要望していることが報じられている。

(2)日本調剤への影響

前述のように、改定の内容が明らかになっていない現状では、日本調剤<3341>の収益への影響を試算するのは困難だ。しかしながら、定性的な表現ではあるが、調剤報酬改定のマイナス影響に対しては、同社は相対的に強い抵抗力を有している、というのが弊社の見方だ。

まず、政策に変更がないという前提に立てば、ジェネリック医薬品使用促進と在宅医療対応は今後も柱であり続ける。この点で同社が進捗度が最も高い企業であることは前述のとおりだ。仮に、「メリハリある配分」が実行されたとして、それは上記2大施策に対して進捗の遅れた薬局に対するペナルティの性格を有するものと想定される。そうであれば、高い進捗度を有する同社には無縁の話と言える。

もう1つ取り沙汰されているポイントに、門前薬局をターゲットにした「特例」の強化がある。これは通常の薬局であれば調剤基本料として41点が得られるところを、「月当たりの処方箋受付回数が4000回超かつ集中率70%超、もしくは、月当たりの処方箋受付回数が2500回超かつ集中率90%超」の薬局は「特例」として調剤基本料を25点に下げる、という制度だ。財務省はこの「特例」を拡大して「1200回超かつ70%超、もしくは、2500回超かつ50%超」の薬局も25点に引き下げるというものだ。

仮にこの制度改正が実現したとしても、同社への影響は極めて小さいというのが弊社の見解だ。理由は、同社の門前薬局はすでにこの「特例」に該当して調剤基本料が25点に引き下げられているためだ。適用範囲拡大という形での制度改正が同社へ及ぼす影響は小さいと言える。

まとめると、同社は調剤報酬改定による収入の『削りシロ』が小さい企業ということができる。調剤報酬改定は何らかの形でマイナス影響を及ぼすことが懸念されるが、その度合いは相対的には小さいというのが同社の今の立ち位置だ。むしろ、中小薬局の淘汰が進むと想定されるなかで、資本力を有する大手調剤薬局チェーンの強みを活かして、ビジネスチャンスへと転換できる可能性もあると考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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