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【特集】ボルテージ Research Memo(5):来期以降で継続的な収益拡大の流れを創ることが重要


■業績動向

(1) 2015年6月期決算

2015年6月期(2014年7月?2015年6月)は、売上高10,599百万円(前期比5.1%増)、営業利益467百万円(同24.2%減)、経常利益485百万円(同24.9%減)、当期純利益232百万円(同20.3%減)となった。ボルテージ<3639>は2015年1月の中間決算時に通期見通しを下方修正したが、その修正予想に対しては、上振れでの着地となった。

同社の業績は、通期見通しを下方修正した後の第3四半期及び第4四半期に大きく改善した。その要因については、1)回収基準を厳格化したうえで、広告投下し、さらにF2PタイトルでのCM回収パターンを確立できたこと、2)F2P新規タイトルをヒットさせるためのセオリーをブラッシュアップできたこと、3)海外向け英語版恋愛ドラマアプリ事業においてL10N好調を維持できたこと、の3点が挙げられる。一方で、下方修正の大きな要因であったサスペンスアプリは下期も低迷が続いた。

市場セグメント別に見ると、主力事業の日本語版恋愛ドラマアプリは、売上高8,900百万円、営業利益1,204百万円となり、売上高営業利益率は13.5%に達した。他方、英語版恋愛ドラマアプリは、赤字が縮小傾向にあるものの、依然として10%を超える営業損失率となっている。また、サスペンスアプリは、売上が計画の約25%程度にとどまる結果となった。

(2) 2016年6月期第1四半期決算と見通し

(i)第1四半期決算
10月29日に発表された2016年6月期第1四半期は、売上高2,782百万円(前年同期比5.1%増)、営業損失75百万円(前年同期は41百万円の損失)、経常損失83百万円(前年同期は35百万円の損失)、当期損失75百万円(前年同期は46百万円の損失)と、増収ながら損失は拡大する決算となった。

収益の内訳を見ると、日本語版恋愛ドラマアプリは、売上高が前年同期比6%増となったのに対し、営業利益は同70%減と大幅な落ち込みとなっているのが目立つ。これは、「恋乱」や「花男」など好調なアプリがある一方でLINE向けの「悪魔」が初期不具合によって収益貢献が期待外れとなっていることや、名作IPタイトル導入に伴うロイヤリティ支払が費用を押し上げたことが要因だ。英語版恋愛ドラマアプリは、「Curses」のリリース後ろ倒しというマイナス要因を吸収して、売上高が前年同期比38%増と大幅な増収となった。サスペンスアプリは2015年12月のリリースに向けて、開発費用先行のタイミングとなり、営業損失だけが目立つ結果となった。

(ii)通期見通し
2016年6月期について同社は、売上高11,500百万円(前期比8.5%増)、営業利益800百万円(同71.2%増)、経常利益800百万円(同64.8%増)、当期純利益400百万円(同72.0%増)を予想している。2016年6月期第1四半期決算を踏まえて、特に変更はない。

同社が新規プロジェクトとして進めるタイトルが想定通りに出揃い、その上で結果を残すことができれば、2016年6月期予想で掲げる収益の水準はクリアすることが出来るだろう。しかし現実にはリリースのタイミングもあるため、期間業績という点では、必ずしも計画通りにはならない可能性も残している。2016年6月期の業績はまさにそのあたりが左右することになるだろう。

前述のように、2016年6月期第1四半期は、当初の期待値ほどの利益が獲得できていないものと弊社では推測している。したがって、2016年6月期第2四半期及び通期の業績予想に対しては、多少、警戒の目をもって臨む必要があるというのが弊社の考えだ。特に、第2四半期単独のハードルが高くなった一方、新規アプリのリリースが第2四半期後半から第3四半期に予定されている点を踏まえると、第2四半期決算には注意が必要だと考えている。

しかし今期の業績数値以上に重要な視点は、来期以降にかけて継続的な収益拡大の流れを創ることが出来るかにあるだろう。日本語版恋愛ドラマアプリでは、名作IPタイトルとLINE向けという新しい分野での道筋を確立することが重要であり、特にLINE向けアプリでは、LINE独特の要素(例えば、LINEでの交友関係はリアルの交友関係でもあること)にマッチしたアプリ構造などが不可欠になってくるだろう。英語版恋愛ドラマアプリでは、軌道に乗ったL10Nの幹を一段と太くするとともにDRAGONとUS REALでも一定の足跡を残すことが出来るかがカギとなる。特にUS REALでは、「Curses」のリリースを大きく後ろ倒ししただけに、北米展開の成否には大きな注目が集まることになるだろう。また、サスペンスアプリも進退をかけた挑戦になるというのは前述のとおりだ。

サスペンスアプリや英語版恋愛ドラマアプリにおけるリリース時期の後ろ倒しや、LINE GAMEアプリの不調といったマイナス要因で第2四半期決算に対する警戒感が強まっているのは前述のとおりだ。しかし第2四半期から第3四半期にかけては期待の大型アプリも市場に複数投入される計画で、例年通り下期での挽回は十分に可能だろう。一方で、足元での1Q投入新規タイトル「ダウト~嘘つきオトコは誰?~」には期待を上回る大きな注目が集まった。これは、これまでの恋愛アプリ(理想の男性キャラと恋に落ちる)とは異なり、イケメンなダメ男を自ら証拠を集めながら見極めて排除していくというもので、今までにないコンセプトがユーザーの心を動かしている様だ。

また、直接業績に関係するわけではないが、フジテレビで放映されている人気ドラマ「オトナ女子」ではヒロインの勤務先が恋愛アプリ制作会社であることから、同社も番組制作に協力している。こうした点は長い目で見て、同社の知名度と恋愛ドラマアプリの認知度の向上に良い影響をもたらすことになるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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