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【特集】郵政3社上場、市場活性化の起爆剤となるか 【後編・改訂版】


―上場成功はアベノミクス継続の必須条件―

 中国経済の先行き懸念と上海市場などの株価急落に端を発し、日本、米国、欧州、新興国と連鎖する世界同時株安の状態が続いている。こうしたなか、反転上昇への突破口として注目されるのが郵政3社の株式市場への同時上場だ。自民党総裁選で無投票再選を果たした安倍晋三首相は、アベノミクスの継続を強調し改めて“経済最優先”を宣言した。その意味での郵政3社上場の成功はアベノミクス第2ステージの必須条件となってきた。

●景気押し上げの起爆剤

 現時点で日本郵政は国有企業で、その株式は国民の財産。政府が貴重な国民の財産であるゆうちょ銀行・かんぽ生命の株式をできるだけ高い価格で売り出したいと考えるのは当然のこと。さらに、郵政3社の株式上場をきっかけに、株式投資を始めた個人投資家が資産を増やすことにつながれば、それが消費を喚起させ、国内景気自体を押し上げる起爆剤にもなり、アベノミクスが掲げてきた“デフレ脱却”実現への大きな支援材料となる。逆に、郵政3社の上場が芳しくない結果に終われば、現状の低迷相場がさらに長期化することにもなりかねない。

●想定価格の3社合計は4900円

 郵政3社の上場を成功させるためには、売り出しの公募価格の水準、上場後の初値、そしてその後の株価形成が極めて重要となってくる。

 今回決まった株式売り出しの想定価格は、日本郵政が1株=1350円、ゆうちょ銀行が同=1400円、かんぽ生命が同=2150円となっている。3社の株価を合計すると、4900円となり、各社とも100株単位のため、3社の株を100株ずつ買うと、単純計算の合計で49万円と、NISA(少額投資非課税制度)の上限である100万円で十分投資家可能な額となっている。ただ、これはあくまで想定価格で、実際の売り出し価格は需要調査の結果などで決まることになる。

●初値は穏健な水準で形成か

 上場後の初値については、28年前のNTT <9432> 上場時のような売り出し価格119万7000円が初値で160万円になるような大幅な値上がりは期待できそうもないという。公開株式数自体が膨大なことや、機関投資家の保有株数が多いことなどから初値は小幅な上昇にとどまるとの見方が多い。ただ、これは裏を返せば上場後に急速に人気が離散して株価急落するなどの懸念も少ないということになる。

●GPIFなど年金の買いが支え

 上場後の中長期的な株価推移について市場関係者は、「メガバンクやトヨタ <7203> のように、日本を代表する主力銘柄のため、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や、日銀のETF(上場投資信託)買いの対象となる」として、大きな買い受け皿の存在を指摘する。

 さらに、今年3月に公務員などが加入する3共済が運用資産を日本株にシフトさせることを決定したが、これが10月1日から本格始動する。3共済だけで、買い余力は2兆円とされており、こうした資金からも郵政3社株への買いが想定される。また、ゆうちょ銀行、かんぽ生命自体も同じ10月頃から、運用資産の日本株シフトを積極化する見通しだ。

 こうして上場後の株価上昇が比較的長い期間をかけての緩やかものであれば、公募株だけでなくセカンダリーで参加して資産株として中長期に保有するのも有力な選択肢となってくる。

●電算システム、JPHDなど注目

 日本郵政の上場で注目を集める個別銘柄としては、情報処理サービス開発を手掛ける電算システム <3630> が挙げられる。同社は、1976年から全国の郵便局の窓口で受け付けた「ふるさと小包」のデータ入力・ラベル印刷などの業務を受託、現在年間で約900万件に達している。

 保育園運営などの子育て支援最大手のJPHD <2749> は、さいたま中央郵便局の元駐車場で休憩施設として利用していた建物の1階部分の改装を行い今年4月に保育所とし、日本郵便と賃貸契約を結び運営を行っている。JPHDは、日本郵便とともに同様の施設開発を検討する方針で、大きな広がりを見せる可能性がある。

 また、マーケティング活動を支援するレッグス <4286> は、郵便局限定の販促グッズを手掛けている。

日刊株式経済新聞 編集長 冨田康夫

【徹底特集! 郵政3社IPO】より

※本稿は9月8日に配信した記事を、東証が10日に日本郵政グループ3社の株式上場の承認を発表したことを踏まえて内容をアップデートして改訂したものです。

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