市場ニュース

戻る
 

【経済】「アメリカとイランの和解」の理由は対中国の足固めか?~中原圭介~


(中原圭介氏:「もっとも予測が当たるエコノミスト」と言われ、2014年の景気失速と消費増税の断念、シェール革命による原油価格下落などを、すでに2013年の段階で的確に予見していた。)

世界情勢や経済動向をとらえるのに、いま私が一番注目しているのが、中東のイランです。イランは中東の大国ですが、政治的に見て、世界のメインプレイヤーではありません。おまけに、これまで米欧からの経済制裁によって、経済的に非常に大きなダメージを受けていました。

なぜ、そんなイランに注目するのでしょうか。

私はかつて、拙書『シェール革命後の世界勢力図』(2013年6月出版)において、「将来の原油価格が半値になると、世界経済はどのように変わるのか」という内容を、政治的に想定される出来事も含めて著わしました。

しかし新たに注意すべきは、シェール革命が世界に地殻変動をもたらした第1弾の出来事と捉えるとすれば、すでに第2弾の出来事が今年の7月に「アメリカとイランの和解」という形で起こっているということなのです。アメリカとイランの和解は、世界経済の力関係だけでなく、国際政治の戦略をも大きく変えうるポテンシャルを秘めています。そして、新しい地殻変動は早ければ2016年にも現実に起ころうとしているわけです。

ところが、なぜかこの件については、メディアではあまり大きく取り上げられることがありません。


実は、この中東の一国、イランの動向によって、世界のパワーバランスが崩れようとしているからです。

そのきっかけは、長年続いていたアメリカとイランの対立がいままさに解消し、イランを苦しめてきたさまざまな制裁が解除されることです。イランは世界で有数のエネルギー大国で、これまで開発が進まなかった分、今後はエネルギー供給者として大きな地位を占めていくことになるでしょう。

そして、イランによるエネルギーの供給増加は、原油・天然ガス価格の低迷を長期的なものとし、世界経済の構造を一変させる可能性を秘めています。エネルギー資源を巡る各国の駆け引きも本格化していくでしょう。

アメリカとイランの雪解けの背景には、また別の大きな問題も存在します。

それは、アメリカにとっての中国の脅威です。アメリカがいくつもの反米諸国と和解する裏には、覇権争いを挑もうとする中国に対する足場固めがあるのです。

新刊『石油とマネーの新・世界覇権図』(著者中原圭介)より

《TT》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均