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【市況】【コモディティー】まだ早い、原油価格の本格反発 /小菅努氏 <夏の相場観>

大起産業・調査研究室室長 小菅努氏

 夏(7~9月)の国際原油相場は、弱含みの展開を想定している。昨年後半の原油相場急落から1年が経過しているが、なお供給過剰状態に陥った原油需給のリバランスが終了する目処が立たず、需給緩和状態が維持される可能性が高いためだ。

 国際エネルギー機関(IEA)は6月月報において、2015年の世界石油需要を前年比で日量140万バレル増の9400万バレルとし、昨年の70万バレル増から劇的な拡大を見せるとの見方を示した。一方、米国のシェールオイル生産は5月、6月に続いて7月も減産を強いられる見通しになっている。これは、国際原油需給の歪み(=過剰供給)をもたらした「石油需要の伸び鈍化」と「シェールオイルの大規模増産」という二つの動きが修正を迫られていることを意味する。

 しかし、石油輸出国機構(OPEC)がシェア確保を優先して大規模な増産政策を展開する中、なお需給均衡状態を達する目処は立っていない。5月のOPEC産油量は12年8月以来の高水準である日量3133万バレルに達しており、6月5日に開催された総会でも減産主張の声は聞かれなかった。国際原油需給は、7~9月期もなお日量200万バレル近い供給過剰が発生すると推計しているが、OPEC主導の需給調整は期待できず、更なる原油安で高コスト原油に市場からの退出を促すことが要求される。

 足もとでは製品供給の混乱、ドル相場の反発などが原油価格をサポートしている。しかし、今後は製品供給の安定化とドル高圧力と連動して、改めて下値模索の展開を想定している。特にドル相場が3~4月の水準に回帰すれば、WTI原油50ドル、ブレント原油55ドルといった価格水準までの値下がりも想定できる。

<プロフィール>

1976年生まれ。筑波大卒業後、大起産業に入社。同社営業本部、NY事務所駐在等を経て現職。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、穀物、農産物などのコモディティー市場全般、及び金融市場をカバー。需給の循環、マネーフロー分析を重視。

編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ)     【夏の相場観】特集 より

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