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【特集】【日本株・ストラテジー】佳境に入ったアベノミクス相場第2弾 /武者陵司氏 <夏の相場観>

武者リサーチ代表 武者陵司氏

 年初の米国経済不振は一過性のものである可能性が強まった。米国経済はほぼ完全雇用に近づき、賃金と物価上昇圧力は高まり、年内利上げの可能性が高い。年後半の金融市場は米国経済の加速とドル高を基調とするのではないか。ギリシャ・ユーロ問題、中国不安、米国利上げの可能性とその影響などの懸念材料はすでに相場に織り込まれ、危機への深刻化を止めるサーキットブレーカーは敷設されている。ドル高、米国株伸び悩み、先進国金利リスクの高まりで日欧株物色が強まるだろう。

 日本では好調な企業収益に疑問の余地はない。野村証券による金融除く300社集計によると2015年度予想営業利益率17%(税引増益率17%)と過去最高を更新する。企業所得を起点とする好循環が始まり、賃金上昇、設備投資増加、自社株買いと増配などが需要増加の起点となっている。また輸出物価から始まったデフレ脱却は、建設積算単価、不動産価格、輸入商品価格、国内外食価格、ホテル室料など広範に広がっている。ESPフォォーキャスト(エコノミスト41人によるコンセンサス)によると石油価格下落、消費税増税価格転嫁値上げの一巡により2015年央にはCPI上昇率はほぼ0%まで低下するが、2016年末には1.3%まで上昇すると予想されている。日銀の2016年度前半に2%という目標達成は困難だが、デフレ脱却と内需拡大を推進に整合的物価上昇である。

 最大の懸念中国リスクは顕在化しない見通し。引き続き日本株高を予想する第一の要因は実体経済の顕著な改善。第二に好需給が継続すると想定される。2013年15兆円日本株をネットで買った外国人は2014年には8000億円と沈黙したが、2015年に入っても5月までにようやく2.8兆円買い越したところであり、依然日本株式はアンダーウエートになっている。個人も2015年1~5月ですでに4.5兆円の大幅売り越しとなっており、待機資金は巨額になっている。GPIFやゆうちょ銀行、年金、保険など組み入れ増加もあり、内外すべての投資家において日本株投資余力は空前の規模になっていると推測される。安倍首相訪米の成功により、地政学的裏付けがより確かになっていることも日本株投資に安心感を与えるだろう。TPPの合意がなされればそれも大きな心理的支援となる。

<プロフィール>

1973年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。1988年~1993年ニューヨーク駐在、大和総研アメリカでチーフアナリスト、米国のマクロ・ミクロ市場を調査。1997年ドイツ証券調査部長兼チーフストラテジスト、2005年ドイツ証券副会長を経て、2009年武者リサーチを設立。

編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ)     【夏の相場観】特集 より

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