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【市況】【植木靖男の相場展望】


「海外勢の買い侮り難し」

●押し目買いの時代は「長期」に

 5月に入っての株式市場は5月7日を安値に順調に下値を切り上げている。
 
 1月から4月まで月足は4ヵ月連騰であるが、いまの状況では5月も陽線となりそうだ(本稿は5月28日執筆)。

 09年3月のリーマンショック後をみると、月足で陽線は42本、陰線は28本と明らかに09年3月の底入れから上昇基調に転じたことがわかる。

 つまり、押し目買いの時代に入っている証しである。このことはいまは株式を長期に保有すればするほど評価益が大きくなることを意味する。

 ところが、現実はどうか。個人投資家は現物を、この間売りまくっているのだ。09年1兆6000億円、10年2兆9000億円、11年1兆円、12年2兆4000億円、13年11兆7000億円、14年4兆9000億円、今年に入っても3兆5000億円を早くも売り越している。累計では実に28兆円の売り越しである。

 こうした個人の現物売りに買い向かったのが海外勢である。日本人が自らの国の株式を売り、海外勢がそれを買う。なんと皮肉なことではないだろうか。

 この押し目買いの時代は、それまでの戻り売りの時代の長さから斟酌すれば、今後相当期間続くと予想される。一体、個人はいつまで売り続けるのであろうか。

 とはいえ、“明日の何より今日の糧”という格言もある。長期投資より短期投資を好む投資家も多い。というよりむしろ、いまは目先筋の方が多いようだ。

 では、短期的な見通しはどうみるべきか。

 いまの市況環境をみると、圧倒的に好材料が目立つ。たとえば、景気でいえば本年1-3月のGDPは実質2.4%と2期間連続プラスとなった。また、機械受注もプラスが続いている。訪日観光客は4月176万人と過去最高となった。小売りなど内需企業に与える影響は大きい。

 そして、何よりも円安、原油安は輸出企業にとっても内需企業にとってもプラスだ。失業率は徐々に低下、完全雇用に近づいている。

 株価の基本的要因である企業収益は、上記要因により前期に続いて今期も史上最高益更新の見込みである。PERも欧米のそれより低く割安感が広がっている。

 さらに企業統治改革、スチュワードシップコードなど企業の稼ぐ力の強化や企業の自社株買いなど株主還元策が広がり、これまた株価にとって大きなプラスとなっている。

 一方、需給面では海外勢は依然として買い越し基調が続いている。欧州のマイナス金利拡大で運用先に困った資金が日本株にシフトしている可能性が指摘されている。GPIFの株式重視や日銀のETF買いも続いている。今後はゆうちょの株式買いも期待できよう。
 
●円安下での物色対象
 
 このようにみると、好材料は十指にあまりあるほどだ。

 こうしたなかでは、株式を買うのは当たり前。逆に弱気を吐けば“お前は阿呆か”と非難されかねない。

 だが、筆者にはどうしても引っかかるところが一点あるのだ。それは市場を巡る環境があまりに良いのだ。逆にいえば、これ以上の良い環境とはなにを指すのか、と問いたくなるほど好環境すぎるのだ。ここへきての10連騰は如実にそれを表しているといえよう。

 ところで、こうした地合の中での物色を考えたい。

 ここ円安が再び進行し始めた。膠着状態にあっただけにマグマが蓄積されていたようだ。一気に123円台後半まで円は急落した。

 驚きはこの一気呵成の円安進展もさることながら、これまで薄れていた円安=輸出株高が再燃したことだ。もちろん、輸出企業といっても海外生産拠点を多く有する、あるいは国内回帰が難しい製造業もあり、一概に輸出企業有利とはいえないが、好業績かつ大幅増配、自社株買いなどに積極的な優良銘柄はここぞとばかり連日、市場を賑わしている。

 今回は、こうした銘柄に絞ってみたい。値がさ株が多く、ここからはボラティリティが大きくなるのを覚悟したうえで注目したい。

 高い技術力を持ち国内生産に徹するホトニクス <6965> 、スマホ、航空機、自動車向けの3本柱が好調なミネベア <6479> 、将来、介護ロボに進出する安川電 <6506> などがおもしろそうだ。

 また、6月に公的資金を完済するりそなHD <8308> 、経営の自由裁量によりどのような株主優遇を打ち出すか楽しみである。なにせ50円額面に換算すれば僅か70円ほどと信じられないような株価だ。期待したい。

2015年5月28日 記

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