市場ニュース

戻る
 

【市況】米国株式市場見通し:住宅と小型株に注目、金利にポジション解消の動きも


欧州株式相場が上昇した流れを受け、週初は買いが先行。3月下旬頃から下落の目立っていたハイテク銘柄の一角や小型株に幅広く買い戻しの動きが広がり堅調推移となった。ダウ平均と大型株で構成されるS&P500指数が相次ぎ史上最高値を更新。S&P500指数は節目となる1900ポイントを上回る場面もあった。しかしその後は再び小型株やハイテク株への売りが優勢となった。週半ばになるとウクライナ東部で戦闘が激化していることが嫌気された。週後半になると著名ヘッジファンドマネージャーが株式相場にやや慎重な見方を示したほか、5月住宅市場指数が市場予想に反して悪化したことで軟調推移となった。週末にかけては当局への提出書類で明らかとなった大口投資家の3月末時点での保有銘柄が物色されたほか、4月住宅着工件数が予想を上回ったことが好感された。しかしながらミシガン大学消費者信頼感指数が下振れし上値も抑えられた要因となった。結局週を通じて主要株式指数は下落した。

個別ではコカコーラが、シングルカップコーヒーのキューリグ・グリーン・マウンテンの持ち分を16%へと引き上げたことでキューリグが上昇。ネットワーク機器のシスコシステムズは、決算が減収ながら予想を上回ったことで堅調推移となった。セキュリティソフトのシマンテックも好決算を発表して上昇。一方で小売のウォルマートやコールズが冴えない決算を発表して下落。時計やアクセサリーのフォッシルは慎重な今四半期の業績見通しを示したことで売られた。

大型株で構成されるダウ平均やS&P500指数が過去最高値を更新する一方で、ハイテクやバイオ関連企業の割合が多いナスダック総合指数は3月の年初来高値から約6%、中小型株で構成されるラッセル2000指数は高値から約9%の下落となっており、小型・大型株、成長・割安株の分類で株価の騰落率に差が生じる傾向が強まっている。今の所、これまで買われすぎていた小型・成長株に対する評価調整の域を出ていないが、調整がさらに進むようであれば相場全体の上値も重くならざるを得ないだろう。

また生産者物価指数が予想以上の伸びを示したものの、ウクライナ情勢などを理由に米国債10年物利回りが2.5%を割り込む水準まで低下し、リスク回避傾向が強まっている。FRBによる利上げは早くとも1年先と見られる中、長期金利の上昇を見込んで債券を売り持ちにしていた投資家が金利負担に耐えられず、ポジション解消の動き(ショートカバー)に出ているとの見方が多い。

先週の5月住宅市場指数が予想外の低下、4月の数値も下方修正されたことから住宅市場への警戒感も広がっている。イエレンFRB議長や著名投資家のバフェット氏なども住宅市場の回復の弱さに言及したほか、若年層の失業率や、現金購入(キャッシュバイヤー)の割合の高さ、世帯形成の低迷など構造的な問題も指摘されている。今週は4月中古住宅販売件数(22日)や4月新築住宅販売件数(23日)の発表が予定されており、注目を集めそうだ。また21日に公開される4月29・30日開催のFOMC(連邦公開市場委員会)議事録の中でも、住宅市場に関して何らかの言及があるか注意したい。このまま住宅市場の不調が続くようだと、量的緩和縮小ペースに影響を与える可能性も否定できない。

個別企業ではアパレルのアーバン・アウトフィッターズ(19日)、ギャップ(22日)、ディスカウントストアのターゲット(21日)、ダラーツリー(22日)、TJX(20日)、ホームセンターのホームデポ(20日)、ロウズ(21日)、宝飾品小売のティファニー(21日)など小売各社の2-4月期決算の発表が多数予定されている。先週はディスカウントストアのウォルマートが冴えない決算を発表する一方で、百貨店のノードストロームが好決算を発表しており、富裕層を対象とする高価格帯商品の販売が好調との見方が広がっている。

小売以外ではクラウド関連のセールスフォース・ドットコム(20日)やPCメーカーのヒューレット・パッカード(22日)の決算発表も予定されている。セールスフォース・ドットコムは赤字が続く一方で売上高の拡大を続ける、「ハイフライヤー」や「モメンタム」と呼ばれる銘柄の代表格の一つであり、決算発表が下落トレンドに歯止めをかけることができるか注目される。

《TN》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均