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【市況】英総選挙に向けポンドは交錯【フィスコ・コラム】


今年の後半にも予定される英総選挙に向け、ポンドに売り買い両面の手がかりが浮上しています。支持率回復を狙うスナク政権による国民負担の軽減は、インフレ圧力を押し上げる公算。一方、中東情勢への対応が争点となれば、政治の不安定化につながりかねません。


3月の英中銀金融政策委員会(MPC)で金融政策に関する票決は8対1となり、現行の政策が維持されました。前回反対の3人のうち2人が25ベーシスポイント(bp)引き上げの主張を取り下げ、1人は25bpの利下げを主張。イギリスのインフレ率は昨年11月に前年比+3.9%まで低下したものの、再加速の可能性から利上げの意見が目立ちましたが、直近は利下げを模索していることが明らかになっています。


ポンド・ドルは昨年末から底堅く推移し、2024年に入っても1.25ドル台前半を下値に底堅さが目立ちます。英中銀の利下げ時期は米連邦準備制度理事会(FRB)よりも後とみられ、ポンドは売りづらい地合いが目先も続きそうです。24年の成長率の上方修正と25年のインフレ率の上方修正を受け、主要中銀のなかでも想起の利下げは見込めず、ポンドは中長期的にも買いが見込まれます。


そんななか、スナク政権は総選挙の時期を年後半と決定し、与党・保守党の支持回復を狙い、手を打ち始めました。労働者が納める国民保険料のうち賃金の2%分を引き下げ、負担分を圧縮するのが主眼。そのほか、児童手当の対象拡大、低所得世帯支援の延長など、生活費の高騰に対応する負担の軽減策を打ち出しました。それにより成長率は0.8%と予測し、昨年11月時点の0.7%からわずかに上乗せしています。


国民の可処分所得の拡大はインフレ圧力を強める要因になるものの、市場の反応は限定的でした。やはり保守党が支持率で労働党に大幅なリードを許し、政権交代は時間の問題と見られているためかもしれません。2月行われた下院補欠選挙は、労働党候補が2選挙区でいずれも勝利し、先の総選挙で圧勝した保守党から議席を奪いました。保守党の退潮は鮮明で、労働党は波に乗っているもようです。


ところが、その後、別の選挙区の補選で労働党候補が左派政党を創設した親パレスチナの候補者に敗れる波乱がありました。イスラエルとハマスの紛争で労働党執行部は当初、イスラエルの軍事報復を全面的に支持。ただ、即時停戦を求める声も強く、党内で意見は一致していません。中東情勢が争点になり労働党の弱点が露呈されれば、「スターマー政権」の不安定さを警戒したポンド売りも見込まれます。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《TY》

 提供:フィスコ

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