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【経済】矢口 新のマーケット羅針盤 「アベノミクスは、なぜ失敗したか?」 <後編>

日経平均 <週足> 「株探」多機能チャートより

●何が国を守るか?

 私の父は52歳で死んだ。予科練11甲飛出の零戦乗りで、死ぬまで戦闘機や、海軍魂の話をしていた。その後の人生の方がはるかに長いのに、本人にとっては人生最大の出来事だったのだろう。63歳で死んだ姉は少なくとも一時、反戦活動をしていた。共に、胃癌だった。

 父が子供の頃の私に行った教えは3つだけ。2つだったと長いこと思っていたが、そう言えば、もう1つあったと思いだした。「時間厳守」、「犠牲的精神」、「兄弟仲良く」だ。3つ目は、2年前に姉が死んでから思い出した。

 「時間厳守」と「犠牲的精神」は、全く別物のように聞こえるが、そうではない。時間を守ることは、相手の時間を大事にすることだからだ。言葉では何でも言える。相手の時間を貴重なものと思っているならば、相手のことを大事に思っているならば、人は時間に遅れない。大袈裟に言うと、そうなる。

 私も、学校や会社などは随分遅れたが、人との待ち合わせでは、遅れた時を1つ1つ覚えている位だ。遅れないようにするには、早く着きすぎるしかない。自分の時間を犠牲にしないと、時間厳守はできない。

 とはいえ、「犠牲的精神」の教えは、難しい。自分より人を優先できるかと言うと、未だに自信がない。もっとも、若い頃から死に方については考えてきて、誰かのお役に立てて、かつ残された身内が納得できる死に方ができればと考えている。しかし、これは自分を含め、人が決めることではない。

 「兄弟仲良く」は、毛利元就の「三本の矢」に近い。親は先に死ぬから、親孝行などは考えなくていい。親が死んだ後は、兄弟が残るから、仲良くして助け合えと教えてくれた。今なら「私自身の家族と兄弟」仲良くと言っただろう。

 私は何よりも、子供たちと、その家族を守りたい。その意味で、安倍首相が最優先課題としているように思える、安全保障や憲法にも関心はある。

 では、何が本当に国や国民を守るのか?

 2015年の世界の国防費は、1位が米国で5960億ドル、2位が中国で2150億ドル、3位がサウジアラビアの872億ドル、4位がロシアの664億ドル、5位が英国で555億ドルとなっている。日本は8位で409億ドルだ。

 ところが、トランプ氏の「日本はタダ乗り」発言に触発されたウォールストリート・ジャーナルの調べでは、日本は極東米軍に対して約378億ドルの負担を行っている。とはいえ、現状の仮想敵国としている中国には、はるかに及ばない。

 だからこそ日米安全保障条約が重要なのか? という問いへの答えは、何十年も戦争の経験がない、いわゆる識者の見解よりも、NHKテレビの大河ドラマ「真田丸」の方が、よほど参考になる。1つの歴史ドラマに限らず、日本や世界の歴史の教えの方が、米国や中国の思惑を語ってくれる人々の意見より参考になるのだ。結論を言えば、米国は、米国にとって利益となる限りにおいて、日本を守る。このことは、日本を守らない可能性を排除できないどころか、いつの日にか、日本を攻撃する可能性もあるということだ。残念ながら、これが歴史の真実だ。

 では、日本が独自に国を守る力をつければよいではないか? 中国や、あるいは米国相手に? 軍事力の規模からすると途方もないようだが、その方が、他国に頼るよりは現実的な国防なのだ。そのためには、強い「経済」が必要なのだ。

 国を守る力は軍事力だけではない。むしろ、軍事力はその一部でしかないと言える。報道を見ていると、中国は仮想敵国となっている。しかし、実際の中国人たちは日本に来て、日本の製品を喜んで買って帰る。このことは、日本がより良いものをつくることの方が、平和に貢献することを意味しないか?

 戦争すれば人が死ぬが、まだ戦争を始めていない日本で、経済的な貧困のために多くの人々が死につつある。安倍首相は政治の優先順位を見失ったように思えてならない。

●民を信じない官の国に未来はない

 そもそも、現在における官とは誰か? 民のなかから、たまたま選択したり、選択されたりして官になっただけではないか? そして官となれば、増税で民を苦しめ、規制や税源で民を振り回し、それでいて増税で得た資金をうまく使えずに、更に民を苦しめる。

 安倍首相は初心に帰るべきだ。アベノミクスの「三本の矢」の、金融政策は引き返せないところまで飛んでいる。財政政策と規制緩和による成長がなければ、すべての矢が折れる。

 今の政府と官庁がなすべきことは、民を信じて減税を行うことだ。それが、個人消費拡大、景気拡大を通じて税収を増やし、ひいては財政再建にもつながると言える。

2016年5月2日 記

矢口 新(やぐち あらた)
アストリー&ピアス、野村證券、グリニッジ・キャピタル・マーケッツ、ソロモン・ブラザーズ、スイス・ユニオン銀行などで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤める。2002年5月株式会社ディーラーズ・ウェブ創業。2013年4月まで同社代表取締役社長。JTI(Japan Trading Intelligence)初代(2003-7年)代表。


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