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【特集】株価“沸騰中” 6テーマ再検証・前編 ― バイオ、ドローン、有機EL <GW特集>

ペプドリ <日足> 「株探」多機能チャートより

―バイオ、ドローン、有機EL―

【その1 バイオ関連】 創薬ベンチャーにモテ期到来!

 東京株式市場ではテーマ物色の波が勢いを増している。そのなかで、バイオ関連株は調整局面を交えながらも、個人投資家を中心に総花的な人気が継続しそうだ。

 東証マザーズ指数が2月下旬から一気に騰勢を強め、2003年9月の指数創設時のレベルである1000の大台を回復、直近はさらに上値を追う展開で一気に1200台まで水準を切り上げ、07年1月以来9年4カ月ぶりの高値圏に歩を進める場面があった。これは、そーせいグループ <4565> [東証M]を筆頭とする時価総額上位に名を連ねるバイオベンチャー株の加速的な株価上昇が原動力となっている。

 バイオ関連株人気の背景には政府の資金面、法制面における全面的なバックアップに加えて、世界的な新薬不足を背景とした創薬ベンチャーに対するメガファーマ(大手製薬会社)の提携ニーズが背景にある。

●規制緩和と新薬ニーズの高まりが追い風に

 遡ること1年半、14年11月に再生医療の実用化を目指す「再生医療安全性確保法」と「医薬品医療機器法」(旧薬事法)の関連2法が施行されたが、この法制面の規制緩和に伴い再生医療品について早期承認の流れが形成され、関連ベンチャーにとって研究開発意欲を強く刺激する格好となった。また、政府は13~22年度の10年間で1100億円を再生医療および創薬研究に充てる予算を決めており、これも同分野に展開する企業に追い風となっている。

 世界的な新薬不足を背景にメガファーマが創薬ベンチャーに対し資本業務提携や、あわよくばM&A含みでその技術を取り込むことに舵を切り始めていることもポイントだ。希少性の高い新薬開発技術力を持っていながら、研究開発に充てる資金面に苦慮するバイオベンチャーにとっても、メガファーマとの連携はポジティブな選択肢となっている。

 また、ここ最近はゲノム編集もテーマ性を帯びており、バイオ関連物色の新たな手掛かり材料となっている。ゲノム編集とは多数の遺伝子のうち、ターゲットとするものを、酵素を使って正確に操作する最先端の遺伝子改変技術のこと。これまで、倫理面などで問題もあったが、内閣府の専門調査会が、ゲノム編集でヒトの受精卵を操作することを、基礎研究に限って認める見解をまとめたことで、大きく山が動いた。

 個別銘柄では、そーせいは時価総額3500~4000億円規模を往来するマザーズ市場のバイオベンチャーの中核的存在だが、この規模に及んでくると、個人投資家を中心とした短期資金の対象にとどまらず、ファンド系資金の組み入れ需要も底流している。これが株価変貌の引き金を引いた感触がある。

 これに追髄するかたちで、マザーズ市場ではアキュセラ <4589> [東証M]、サンバイオ <4592> [東証M]、ナノキャリア <4571> [東証M]、ヘリオス <4593> [東証M]、グリーンペプタイド <4594> [東証M]、アンジェス  <4563> [東証M]などの出世株が輩出された。

 また、東証1部ではペプチドリーム <4587> がそーせいと肩を並べる時価総額で、バイオベンチャー業界のツートップ。このほか東証1部上場のバイオ関連としてはタカラバイオ <4974> や新日本科学 <2395> などが折に触れ脚光を浴びることが多い。

【その2 ドローン関連】 災害時に活躍、無人配送にも期待

 ドローンとは遠隔操作や自動コントロールによって飛行する無人機のことを指し、近年急速に注目度を高めている。目の役割を担うセンサーを搭載して災害現場の状況把握や橋梁やトンネルなどの点検を行うほか、農薬の散布といった農作業などへの応用も利く。

 15年12月10日に改正航空法、いわゆるドローン規制が施行されたが、ドローンに関する法整備は普及加速に向けた第一歩ともいえ、関連銘柄へのマークを強める契機となった。政府は福島県の復興・再生の推進力とするため、エネルギー、医療、ロボットなどさまざまな研究開発のための環境整備を進める方針にあるが、その一環として同県内にロボットの研究開発拠点を設け、災害対応ロボットや小型無人機「ドローン」などの実証試験を実施する計画にある。

 また、4月中旬に熊本県を中心に発生した連続的な大地震ではその被害状況をドローンで撮影した様子を国土地理院が公開。15年12月の改正航空法施行後初めて大規模災害でのドローンの活用が世間に広く認知された。

●アマゾンに続き国内では楽天が…

 また、ドローンの活用について、海外では米アマゾン・ドットコムが荷物の無人配送用途で積極的に取り組んでおり、ドローンを使ってインターネット通販の商品を注文後極めて短時間で届ける計画を進めている。アマゾンはこれに関連し、空域別の飛行ルールを定めるよう日本政府に求めているという話も伝わっている。

 国内では楽天 <4755> が5月9日から、ドローンを活用した一般消費者向けの配送サービス「そら楽(そららく)」を開始すると発表、市場の耳目を驚かせた。

 関連株としては、デジタル地図情報を手掛ける企業として自動運転車関連で取り上げられる銘柄と重複しているものも多い。ドーン <2303> [JQ]やアイサンテクノロジー <4667> [JQ]などはそれに該当するが、このほかにビーマップ <4316> [JQG]やイメージ ワン <2667> [JQ]、アジア航測 <9233> [東証2]、モルフォ <3653> [東証M]、理経 <8226> [東証2]などが挙げられる。

【その3 有機EL関連】 iPhone採用で色めき立つ

 有機ELとは「有機エレクトロルミネッセンス」の略で、特定の有機物に電圧をかけると、有機物が光る現象を指すが、テレビ向けおよびスマートフォン向けで需要拡大の機が訪れている。株式市場でも急速に有力テーマとして頭角を現してきた。

 現在有機ELの量産では、自社のスマートフォン向け中心に独占的に生産する韓国サムスンとテレビ向け中心の韓国LGが双璧となっているが、有機EL材料の開発力など根幹の技術という点で日本企業の実力は世界の先頭を走っている。

 ここにわかに、有機ELにスポットライトが当たる背景となったのは、米アップルが来年にも投入するiPhoneに有機ELパネルを採用する方針にあることが伝わったためだ。iPhoneは現在、スマートフォンの世界販売の20%近くを占めており、そのインパクトは絶大であり、この報道に業界は色めき立った。

 国内では鴻海精密工業傘下で経営再建に踏み出したシャープ <6753> が、有機EL事業に積極的に経営資源を振り向ける構えにあるが、米アップルの有機ELパネル採用方針を受け、この需要に対応するスタンスをみせる。また、ジャパンディスプレイ <6740> も同様に有機ELに経営の軸足を置く。昨年、産業革新機構が主要出資会社となり、ソニー <6758> 、パナソニック <6752> を合わせた4社合弁による有機ELディスプレー専業のJOLED(ジェーオーレッド)を発足させている。

 この国内液晶パネル大手2社の経営戦略は関連部材メーカーにとっても大きな収益機会につながっていく。

●虎視眈々の周辺部材メーカー

 有力関連株として、いち早く株価を動意させているのは保土谷化学工業 <4112> だ。同社は有機EL材料として正孔輸送材のほか、韓国子会社を通じて発光材料を手掛けており、17年3月期は有機ELディスプレーメーカーの輸出拡大が追い風となるほか、米アップルの英断を受けた韓国サムスンやLGなどの巨額投資で大きなビジネスチャンスを得る可能性が出ている。

 このほか、有機ELの発光材料、正孔輸送材、正孔注入材、電子輸送材など一括供給する実力を備える出光興産 <5019> もキーカンパニーとして注目度が高い。

 また、液晶事業のノウハウを生かして有機EL用ITO膜に展開する倉元製作所 <5216> [JQ]は、株価面の値動きの大きさが魅力で個人投資家資金を中心に人気化素地が高い。

 有機EL関連で特許を多数出願しているケミプロ化成 <4960> [東証2]、有機EL製造装置向けで薄膜形成の際に必要な真空チャンバーを受託製造する平田機工 <6258> [JQ]、有機ELを含むフラットパネルディスプレー製造装置を手掛けるアルバック <6728> などもマークされる。

※株価“沸騰中”6テーマ再検証・後編 <GW特集>はこちら


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