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【特集】株価“沸騰中” 6テーマ再検証・後編 ― 自動運転、フィンテック、AI <GW特集>

アイサンテク <日足> 「株探」多機能チャートより

―自動運転、フィンテック人工知能(AI)

【その4 自動運転】 完全自動化に向け日進月歩

 我々の日常の風景を大きく変える「第4次産業革命」の目玉といえば、それはやはり「自動運転車」ということになるだろう。自動運転車とは読んで字のごとく目的地まで自動操縦でヒトやモノを運ぶクルマのことで車載カメラやレーダー、赤外線センサーなどを使って周囲の状況を認識し、人工知能(AI)の判断により安全かつ効率的な完全自動走行を目指す。同分野はまさに日進月歩、開発普及のシナリオ実現に向け、業界の垣根を越えてグローバルに関連各社がしのぎを削る状況にある。

 自動運転は自動ブレーキなどの安全運転支援システムを「レベル1」として位置づけ、自動駐車システムの段階が「レベル2」、さらに高速道路で自動運転を行い、ケースに応じドライバーが対応する「レベル3」、そしてドライバーの操作を全く必要としない完全自動化された最終目標地点を「レベル4」として分類されている。

 完成車メーカーをはじめ、大手自動車部品メーカーや電機メーカーなどメガサプライヤーにとって大きなビジネスチャンスが訪れていることは間違いない。その市場規模もケタ違いに巨大である。安倍政権では、東京五輪開催年の2020年をひとつの区切りとして自動運転車の普及促進に向け積極的に取り組む姿勢をみせているが、五輪開催後10年を経た30年には20兆円規模のメガマーケットが創出されるとの試算がある。さらに5年後の35年には、「レベル4」の完全自動化された自動車が世界の新車販売台数の1割を占めるともいわれている。

●日産が「レベル3」市場投入で風雲急

 これまで日本は欧米に比べ官民の連携が希薄で、同分野の技術深耕では後塵を拝していたが、ここにきて協調体制を構築し一気に挽回する構えにある。トヨタ自動車 <7203> を筆頭に大手完成車メーカー6社は自動運転に必要な8分野での共同研究に動き出しているが、政府は自動車メーカーや地図メーカーと組んで18年までに自動運転に必要な情報を盛り込んだ3D地図の作成などインフラ作りに本腰を入れる計画だ。

 4月中旬には日産自動車 <7201> が高速道路上をほぼ自動走行する市販車を8月に発売する方向にあると伝わったことで、関連銘柄が一気に動意づいたのは記憶に新しい。また、今年のIPOの目玉といわれ、現時点で上場銘柄の多くと提携し、共同開発を進捗させている自動運転関連の有力ベンチャーZMPの存在も、テーマ買いの動きを底流で活性化させる役割を担っている。

 物色対象としてこれまで人気の中軸を担ってきたのはGIS(地理情報システム)や電子地図分野で技術を先駆させる銘柄群で、既にその代表格のアイサンテクノロジー <4667> [JQ]やドーン <2303> [JQ]などは株価を大きく変貌させている。アートスパークホールディングス <3663> [東証2]、ベリサーブ <3724> 、コア <2359> にも市場の熱い視線が注がれているほか、ZMPと協業するディー・エヌ・エー <2432> 、テクノスジャパン <3666> 、ハーツユナイテッドグループ <3676> なども折に触れスポットライトが当たる。

 また、オールドカンパニーに属する銘柄群も負けてはいない。カーエレクトロニクス分野で実績を積み重ねてきたクラリオン <6796> やパイオニア <6773> 、JVCケンウッド <6632> には新たな活躍の舞台が与えられており、足もとの業績動向だけでなく、久々にテーマ買い対象として物色資金の波が押し寄せている。

【その5 フィンテック】 世界の金融新潮流にキャッチアップ

 金融とITの融合を意味する「フィンテック」は、これまでの金融業界の秩序や枠組みを揺るがす歴史的な潮流として株式市場でも認知が進んでいる。

 政府は3月4日、「ビットコイン」など仮想通貨に対する規制を盛り込んだ資金決済法改正案を閣議決定し、事実上、仮想通貨に対し貨幣としての機能を認めた。これを受けて局面は一気に前進した。また、日銀は資金決済のシステムを担当する決済機構局内に「フィンテックセンター」を新設しており、ITと金融を融合したサービスであるフィンテックの将来性を、金融を司る中央銀行も認知したことで、テーマ物色の流れも勢いづいた。

 直近、金融庁はフィンテック関連のベンチャー企業育成に向けた環境整備のために、有識者会議の設置を決めている。

●カギを握る「ブロックチェーン」

 また、民間ではインフォテリア <3853> [東証M]をはじめ34社が一丸となってブロックチェーン技術の開発や推進を行う「ブロックチェーン推進協会」の設立を発表している。ブロックチェーンとは分散型台帳技術とも訳され、第3者機関に頼ることなく、取引記録(トランザクション)を一つのブロックにまとめて、そのブロックをチェーンのように連鎖させて保存したもの。チェーン状に連結することで、意図的なデータの変更や改ざんを実質的に不可能とする。ビットコインの基盤技術として注目され、現時点ではフィンテックを大きなくくりとする株式市場のテーマ買いの中軸を占めている。

 ビットコインは保守的な金融機関にとっては距離を置く分野だったが、世界の潮流には抗えず、相次いで関わりを持つ動きが表面化している。既に賽(さい)は投げられた状態にあり、金融機関に先立って同分野に経営資源を注ぎ込む銘柄群はテーマ物色対象として株価の居どころを大きく変えているものが少なくない。

 関連銘柄のなかで、昨年来ツートップ銘柄として株価を先駆させていたのは、暗号通貨関連サービスやブロックチェーン技術開発を手掛けるITベンチャーのテックビューロと提携して、ブロックチェーン環境を実用レベルのクラウドサービスとして一般向けに提供するさくらインターネット <3778> と、同じくテックビューロと協業体制を確立し、金融システムの構築・運用コストを大幅低減するプラットフォーム実現に注力するインフォテリアの2銘柄だ。その後、FX大手のマネーパートナーズグループ <8732> が、世界的大手ビットコイン取引所を運営するクラーケンと業務提携を検討していることを材料に投機資金を呼び込んだ。さらに、マネパGは直近、テックビューロと募集株式引受契約を結ぶとともに、100%子会社を通じて業務提携することを発表、今後の展開にマーケットの視線が集まっている。

 このほかにも、アイリッジ <3917> [東証M]、ウェルネット <2428> 、セレス <3696> [東証M]、GMOペイメントゲートウェイ <3769> 、フィスコ <3807> [JQG]、日本サード・パーティ <2488> [JQ]などが関連有力株として波状的な買いを引き寄せている。

【その6 人工知能(AI)】 10年後にらみ市場の最強テーマに

 これからの10年間、東京市場のみならず世界の株式市場において最強のテーマとなり得るものをひとつ挙げよと言われれば、それは人工知能(AI)関連を置いて他にはない。現在、マーケット関係者の視線を集める有力テーマであるバイオ創薬やドローン、自動運転車ロボットフィンテック、あるいはIoTといったあらゆる技術系分野で、AIはそれらと密接に関わりイノベーションの源泉となるからだ。

 自民党はAIの研究開発や産業振興に向けた戦略を指揮する司令塔として首相をトップとする会議の設置を政府に提言している。同分野で先駆する欧米にキャッチアップするべく官民一丸となって取り組み、AI開発費を大幅に拡大して世界の潮流に乗り遅れることのないよう積極注力の構えを打ち出している。

 これに先立って、既に民間では同分野の深耕に積極的な布石を打つ企業が多い。元祖IT関連のシンボルストックであったソフトバンクグループ <9984> は、米IBMと人工知能やロボットを活用したサービスの共同開発を進めている。両社は戦略的提携関係のもとで、Watsonを搭載したヒト型ロボット「Pepper」の開発を進捗させる段階にあり、底流ではこうしたIT大手の本腰を入れた連携がAIの可能性を広げている。

●ディープラーニングで飛躍期入り

 新たなステージへと一気にアクセルを踏み込む契機となったのは、人間の脳を模したニューラルネットワークを駆使するディープラーニング(深層学習)だ。情報の「入力層」と「出力層」の間に隠れた「中間層」を厚くして多層構造とすることでコンピューターの識別能力を人間に限りなく近づけることに成功した。人間によるインプットなしにAI自らが学習し進化を遂げていく。これが飛躍的な生産性の向上を実現させることになる。

 最近大きな話題となったのは、グーグルが開発した人工知能「アルファ碁」が、このディープラーニングを駆使して、囲碁の世界トップ棋士である韓国の李世ドル(イ・セドル)氏との5番勝負で4勝1敗と大きく勝ち越し、内容でも圧倒したことだ。全情報がプレーヤーに公開された「完全情報ゲーム」のなかでも囲碁は盤面が広く、1秒間に数千万手読むといわれるAIソフトであっても序・中盤の段階で終盤の構図まで読み込むのは困難であり、直感の一撃によって進むべき道が“見える”人間の感性に追いつくのはまだ先である、と考えられていた。ところが、この“人間サイドのコンセンサス”をあっという間に覆されたことで、AIの進化スピードや恐るべしとの認識が深まった。

●第4次産業革命のエネルギー源

 安倍政権ではGDP600兆円に向けた「官民戦略プロジェクト」の一環としてAI分野の深耕を掲げ、これが前述のAI研究開発の司令塔設置の動きとつながっている。AIなどがもたらす「第4次産業革命」に伴い、2030年度の雇用は現在より735万人減少するとの試算を経済産業省が明らかにしていることも、ひとつの脅威である。今後は人間の脳とAIの融合で生み出される付加価値が大きなテーマとなり得るが、それだけ関連銘柄に対する期待も大きい。

 AI制御によるIoTデータコントロールおよび次世代ロボットデータコントロールサービスを業界に先駆けて行い、株価を2月中旬から約2カ月間で6倍化近い変貌を遂げたジグソー <3914> [東証M]や、AIを活用した自動翻訳サービスを手掛け同時期に株価を4倍化させたロゼッタ <6182> [東証M]などはその代表格。

 また、「ビッグデータ」「人工知能」「IoT」とマーケティングに関する既存事業のビジネスモデルを活用し、リアル領域を含めた企業と顧客のコミュニケーション効率化を標榜するロックオン <3690> [東証M]も存在感を示す。このほか、UBIC <2158> [東証M]、ALBERT <3906> [東証M]、インテリジェント ウェイブ <4847> [JQ]、ブレインパッド <3655> 、ホットリンク <3680> [東証M]なども関連株として市場の熱視線を浴びている。


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