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ティー・ワイ・オー Research Memo(10):18/7期の売上高目標500億円を掲げ、更なる成長加速へ


■中期経営計画とこれまでの進捗

ティー・ワイ・オー<4358>は、2014年7月期を初年度とする中期経営計画「TYOグループ中期経営計画2013」を進めている。

過去5年間にわたり、本業回帰による事業の再生及び再構築を進めてきたが、収益力、財務基盤ともに急激な回復を遂げたことから、更なる成長を追求するフェーズへの移行を目指す内容となっている。広告代理店取引の継続強化、広告主直接取引の躍進、海外事業の新規展開によって、2017年7月期には、売上高40,000百万円(3年間の年平均成長率14.6%)、営業利益2,700百万円(営業利益率6.8%)を目標としている。また、2018年7月期の売上高目標として50,000百万円(4年間の年平均成長率17.1%)を掲げており、さらに成長を加速させる方針である。

財務面では、2014年7月期にネット有利子負債残高をゼロとする目標を達成したが、その一方で、財務基盤の強化に一定の成果を収めたことや、今後は成長重視の積極的な事業拡大に取り組む方針から、2016年7月期に自己資本比率を50%以上に引き上げるという当初目標にかかわらず、成長のための有効な資金活用に注力するとした。

(1)広告代理店取引の継続強化

広告代理店取引の継続強化を図るための施策として、a)「面」の拡大(人員増強やブランド拡充等)を中心に、b)上流への領域拡大(広告代理店に対するクリエイティブ機能の補完を図ることによる連携強化等)、c)下流への影響力強化(外注業者や同業者との連携強化等)を掲げている。広告代理店取引の2018年7月期の売上高は26,000百万円(年平均成長率7.1%)を目標としている。

(2)広告主直接取引の躍進

一方、成長分野と位置付けている広告主直接取引については、a)営業力の強化(人員増強やブランド拡充等)、b)機能の充実(ブランディング、マーケティング機能を拡充)、c)新規広告主の獲得、d)既存広告主案件の拡大等を掲げている。特に、広告主直接取引は、従来のCM制作やWeb制作に加え、国内イベント市場、プロモーションメディア市場などを含む広大な市場が対象となる。広告主直接取引の2018年7月期の売上高は18,000百万円(年平均成長率35.4%)を目標としており、売上高構成比率は現在(2015年7月期)の22.7%から36.0%に上昇することになる。

同社では、人員拡充・近年積極的に採用してきた人材の戦力化等による営業力向上を図っており、上流からの一括受注の大型案件も着々と増加している。また、国内においても事業成長を加速させるM&Aを積極的に行う方針としており、広告主直接取引の拡大につながるPRやセールスプロモーションを始めとした一定規模以上の企業を対象に検討を進めている。

2015年3月には民事再生手続き中のスカイマーク(株)に対するブランド再生支援を決定した。まずは、無償でのサービス提供となるが、同社のブランディング(ブランド設計及びコミュニケーション戦略の上流領域)における実力を知らしめる絶好の機会であり、営業面での先行投資的な効果に狙いがあるとみられる。

また、前述のとおり、2015年8月にグラフィック領域を強みとし、海外にもネットワークを有するK&Lを連結子会社化したことに加え、2015年9月には広告コミュニケーションのアイデア開発、ディレクションを行うクリエイティブ・ブティックである(株)MIURA&Company(以下、MIURA&CO)を設立した。代表には、JR東海の「シンデレラ・エクスプレス」シリーズ等をはじめ、長年にわたり数多くの作品を同社グループと生み出してきた三浦武彦(みうらたけひこ)氏が就任する。同社グループ全セクションの機能をフル活用し、映像コンテンツの企画・制作はもちろん、ワンストップでブランド設計から実践までの支援を行う予定であり、同社グループのクリエイティブ力及びブランディング力の一層の強化に狙いがあるとみられる。

(3)海外事業の新規展開

海外事業については、現地の独立系エージェンシーを買収することを視野に検討を進めている。既に現地で自走して利益を上げている企業の買収を想定しているため、展開当初は現地クライアントへのサービスの継続が中心となるが、将来的にはASEAN10ヶ国及びインドにてクリエイティブ企業のネットワークを創り、当該エリアで日系企業や地域間事業展開を図る現地企業へのサービスを提供できる体制を構築することを目指している。海外事業の2018年7月期の売上高は4,000百万円を目標としている。

2014年8月にアジア戦略部を新設し、戦略的M&Aの実現に向けて本格的な準備を進めてきた。2015年3月には海外事業の統括管理会社(TYO-ASIA PTE.LTD)をシンガポールに設立すると、2015年7月期には、前述のとおり、アジアにおける戦略M&Aの第1段階としてインドネシアに合弁会社(PT TYO FIRST EDITION)を設立した。成長著しいインドネシアの広告市場においてシェア拡大を図るほか、インドネシアにおける日系企業との取引拡大を目指している。上海などアジア地域を中心に海外ネットワークを有するK&Lを合わせた今回の戦略的M&Aにより、海外売上高目標4,000百万円のうち2,000百万円については達成の目途が立ったとしており、今後は、残り2,000百万円を積み上げるべく、第2弾以降のM&A候補先の調査及び選定を進めている。

同社の中期経営計画の達成は、外部要因(好調な受注環境や寡占化の進展等)や、内部要因(財務基盤や収益力の回復、クリエイティブ力による差別化、広告主直接取引の本格稼働等)から勘案すると十分に実現可能と判断できる。一方、課題としては、好調な外部環境が想定されるなかで、取りこぼしによる機会損失を回避するための体制づくりにあると言えよう。同社は、先行投資的にスタッフ増強を行ってきたが、クリエイティブ力にこだわる同社ゆえに、クオリティや収益性とのバランスがジレンマとなる可能性が考えられる。

また、広告主直接取引が同社の中期的な成長をけん引する計画であることから、その進捗状況については注意して見守る必要があろう。特に売上計画の進捗はもちろん、規模拡大に伴って広告代理店との関係や同社の収益構造にどのような変化をもたらすか、周辺領域の取り込みをどのように進めていくかがポイントになると考えられる。

海外事業での展開は、現地の広告会社を買収することにより現地メディアとの関係を構築するとともに広告主を囲い込む戦略であるが、同社のクリエイティブ力との融合(現地化)と現地子会社のマネジメントが最大の課題になると考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《HN》

 提供:フィスコ

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