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4100 戸田工業

東証S
2,054円
前日比
-23
-1.11%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
0.63 20.37
時価総額 125億円
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決算発表予定日

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戸田工業 Research Memo(8):次期中期経営計画で新たな再生目指す(2)


■戸田工業<4100>の中長期の成長戦略

(2) 誘電体材料
誘電体材料は、MLCCの小型化に対応したさらなる微粒子化を追求しながら、コスト削減を図り、先端材料としての事業拡大を目指す。MLCCのサイズトレンドは、スマートフォンなどモバイル機器の普及により、0603サイズが1005サイズを抜き最大比率となり、0402サイズの比率も高まっている。さらに0201サイズも通信モジュールやウェアラブル機器などでの利用が見込まれる。一方、車載向けはECU小型化で1005サイズが主流となっているが、小型化よりも酷寒から灼熱まで広い温度範囲で安定した特性を出せる高信頼性の製品が求められている。現在、環境対応車や自動運転支援の普及で、自動車1台当たりのMLCC使用数量が従来の100個~3,000個程度から3,000個~6,000個程度まで伸長している。また今後はパワートレイン系、xEV系、ボディ系、走行安全系、インフォテインメント系、すべての分野で使用個数が拡大するとみられる。

MLCCの内部構造は、チタン酸バリウム(BaTiO3:TB)からなる誘電体層とニッケルからなる電極層が積層された構造となっている。高性能化を実現するためには電極層、誘電体層の薄層化・多層化が必要で、構成材料のナノ粒子化が求められる。内部電極では内部電極層(金属)と誘電体層との機械的接合強度を高めるためにTBナノ粒子が共材として必要で、同社はこの共材を主に供給している。電極層の機械的強度を上げる理由は、製造工程で電極層の割れや欠けを防ぐためで、MLCCの電気特性の低下や故障を防ぐ効果がある。共材は電極と誘電体層の間の電界を均一化し、誘電体層の電気分極を高めるなど重要な役割を持つ。同社は水熱合成法という製法を利用し、他社にない均質で高分散性の超微粒ナノ粒子(30~100nm)を製造している。同製品の生産額は大きくないが共材としての付加価値は非常に高いとみられる。今後は高容量化で電極層のさらなる薄層化が進み、電極材料として100nm以下のNi粒子に20nm以下の共材が必要とされるなど、さらなる微細化が進むとみられる。また同社は共材供給に加え、分散体供給も始める。分散体は、粒子同士の凝集を防ぎ、均一な誘電体層を形成するために使用される。現在は水熱合成法で製造したものを一度乾燥してユーザーに出荷し、ユーザー側で分散剤を付加して利用している。同社は乾燥させずに湿式状態のままユーザーに提供できる分散剤を開発中で、分散体で出荷できれば付加価値が高まろう。車載用では高温下での性能に優れ、高い静電容量も必要となるため超微粒、均一、高誘電率などが求められる。自動運転などでは安全性の担保が重要で、均質性を兼ね備えた同社の材料は、MLCCを内製化しているメーカーで、共材利用に加え、誘電体層向け分散体でも採用が広がる可能性がある。

(3) LIB用材料
同事業の主体は連結対象として正極材料の前駆体を扱うカナダの戸田アドバンストマテリアルズが連結売上の対象であるが、主力は持分対象のBTBMである。EV普及拡大の中で収益の刈り取り期に入り、売上拡大が期待される。現状、BTBMの提供する主な正極材料はハイニッケル系であり、高級車は航続距離などの点でニッケルコバルトアルミン酸リチウム(Hi-Nickel NCA)の採用が継続するとみられる。さらに日系メーカーに対してはニッケルコバルトマンガン(NCM)系正極材料(CAM)をPPESへ納入することが決まった。BTBMは従来NCA(円筒型電池)正極向けが多かったが(国内トップは住友金属鉱山<5713>、2位がBTBM)、PPESへ納入するのはNCM(角/ラミネート型)正極向けである。国内では日亜化学工業(株)が供給しているが、PPESが2024年の生産開始に向け姫路で約7GW/年相当の生産能力拡大を行うなど、今後のトヨタ自動車のEV戦略とともに拡大が期待される。なおBTBMは小野田事業所のCAM増設を実効中で2024年後半に生産開始、CAMとして年産6万トン、バッテリーセルとして年間45GWh分まで増加させる計画である。一方、戸田アドバンストマテリアルズは納入先の電池メーカーが欧州車向けに正極の前駆体を供給しているが、足元は欧州EVが中国勢に押されて伸び悩んでいた。しかし品質問題などで中国製EVの輸入規制をかける動きがあり、欧州車メーカーのEV販売が拡大しているため2024年3月期をボトムに回復が期待される。

同社はこれまでLIB用材料として車載用、とりわけハイパワーEV向けのビジネスを展開してきたが、この方向性に変化はない。しかしリチウム資源の調達とコスト問題の懸念から、主に定置用電源に利用される安価で資源制約のないナトリウムイオン電池の開発も行っている。具体的には鳥取大学と同社が共同研究を行い、同社が独自開発した酸化鉄(Fe2O3)微粒子に対してアンチモン(Sb)を添加すると、ナトリウムイオン電池の負極として優れた特性を得られることを発見した。同社は「酸化鉄とある種の金属との複合化」が様々な課題を解決する鍵となることを生かす方針である。さらに、この知見は固体電解質を用いた電池にも応用可能なため、長期的に同社の電池材料開発に大きなインパクトを与える可能性がある。

(4) 軟磁性材料
磁力を保持する力が小さく、磁石にはくっつくが外部の磁界を取り除くと速やかに磁性がなくなる軟磁性材料について車載用中心に開発を行う。具体的には、電子部品搭載製品の増加によるノイズ問題が大きな課題となっており、ノイズ対策材料やEV用非接触給電向け厚膜大判フレキシブルフェライトプレート、ノイズ抑制用フレキシブルフェライトシートやテープなどの販売を推進している。また開発品としてシリコーン樹脂に軟磁性メタル粉などを混合させたミリ波電波吸収シート、ソフトフェライト粉末をエポキシ樹脂に混合させ優れた透磁率を有するエポキシ系磁性接着剤、高性能インダクターなど電子部品の実現を可能とする高い球形度と均一な粒度分布を兼ね備えたサブミクロンサイズのFe基軟磁性メタル粉末などもあり、今後、大きく売上の拡大が期待される。

このような軟磁性材料事業の強化をより加速するために、同社は2023年12月31日に持分法適用関連会社である韓国の戸田イスコーポレーション(以下「TIC」)を完全子会社化した。TISの収益連結は2025年3月期となるが、2025年3月期には約5,000百万円の連結売上寄与が見込まれ、軟磁性材料、軟磁性部材の売上が電子素材事業の中でボンド磁石に次ぐ事業規模になる。

(5) その他の開発品
5G対応の周波数帯(28/39GHz帯)対応で高い透過減衰量を示す電波吸収用フェライト粉(M型フェライト粉)、5G対応薄型電波吸収シート、100kHz~数100MHz帯の広い周波数帯で電界と磁界の両方のノイズをシールドする電磁界シールドシート、形状制御技術により均一に分散する特性をもつ多層カーボンナノチューブといった新機能性材料など、様々な新製品群を投入する意向で、先端素材開発企業として企業変革を実行していく。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)

《SI》

 提供:フィスコ

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