北陸企業News-進捗率の高い企業-【今村証券アナリストレポート】
●進捗率の高い企業
東証プライム市場に上場する3月期決算企業の今期業績は、純利益が7%の減益予想だ。米関税政策や為替の円高が収益を圧迫することが主な要因だ。とはいえ日本をはじめとして各国と米国の関税をめぐる交渉が進展するなか、関税政策の影響は4月時点の想定からは緩和されており、市場では企業業績の上方修正期待が強まっている。
以下は北陸の3月期決算企業の第1四半期純利益と、通期業績予想に対する進捗率だ。今回は通期利益予想に対する進捗率が高い企業の中から、セーレン、石川製作所、田中精密工業を取り上げる。

●セーレン <3569> [東証P]
レーティング:OUTPERFORM
担当 近藤浩之
◆3年間で300億円の成長分野投資を実施

早くも今期(2026年3月期)会社予想を上方修正した。引き上げ額は営業・経常利益が11億円、純利益が9億円だ。第1四半期は、「車輌資材」(自動車・鉄道等のシート材、エアバッグ、加飾部品)が好調で、アジアでの販売増加、品質改善や経費削減活動が寄与した。「エレクトロニクス」(導電性素材、工業用ワイピングクロス、ビスコテックス・システムおよびサプライ等)、「ハイファッション」(各種衣料製品、衣料用繊維加工)も伸びた。

今期からの3年間で総額300億円の成長分野投資を実施する。主な投資先は、「車輌資材」においては、合成皮革「QUOLE」(クオーレ)を増産する。「QUOLE」は重量が本革の約1/2と軽量化に役立ち、耐久年数は10年以上、耐摩耗性は本革の4倍である。「夏熱くならず、冬冷たくならない」素材のため車内体感温度を下げてエアコン稼働の抑制が可能となり、製造工程で水や溶剤の使用を抑えたり、リサイクル糸や植物由来の原料を使用したりといった環境負荷低減や、動物愛護にも貢献できる。今期はメキシコで増産投資を実施する。
また「エレクトロニクス」では人工衛星や半導体などの成長を狙う。人工衛星事業は、福井県や東京大学などと連携し超小型人工衛星、超小型人工衛星搭載機器の製造を手掛けている。今後は生産能力の引き上げに加えて、衛星運用・データ提供までのワンストップサービス構築を目指す。半導体事業は、シリコンウェーハ上に回路の素材となる層を作る工程である成膜加工サービスを提供しており、増産に向けて新工場を建設する。
この300億円の投資とは別枠で、6月にはユニチカ繊維事業の買収も発表した。2005年に買収したカネボウ繊維事業(現KBセーレン)を再生した経験を活かし、今後10年で100億円規模の投資を行って事業拡大につなげていく。
今後の株価推移はベンチマーク(TOPIX)を上回ると考え、投資判断は「OUTPERFORM」。
●石川製作所 <6208> [東証S]
レーティング:NEUTRAL
担当 織田真由美
◆売上の7割程度が防衛関連。日本政府の防衛強化で収益改善

防衛機器、紙工機械の二本柱に加え、繊維機械の部品加工などの受託生産も収益を支える。レンゴー <3941> [東証P]の持分法適用関連会社。
2026年3月期第1四半期連結業績は増収増益。政府が2022年12月に策定した防衛力整備計画で2023年度から2027年度までの5年間の防衛費を総額43兆円程度と定めたことで、当社の防衛機器の受注も2023年度から急増、前期末(2025年3月期末)の受注残高が291億2100万円と積み上がっていたことで売上高は前年同期比39.1%増収の36億1100万円となった。
利益については防衛生産基盤強化法の施行に伴い粗利益率が18.0%と前年同期に比べて3.2ポイント改善したことが大きく、営業利益が2億3400万円に拡大した。
一方、受注高は今期に入り低迷気味だ。防衛力整備計画における当社の受注は一巡した様子で、第1四半期の受注高は前年同期比18.3%減の33億3900万円にとどまった。足元の受注残高は288億円程度と見られ、なお高水準にあるため当面の収益は安定して推移するとみられるものの、受注動向には注意が必要だ。

今期業績予想は、受注残高が高水準にある中で消化が進み、防衛生産基盤強化法による利益率改善も寄与し増収増益見通し。営業利益は前期に比べて44%増益、純利益は同4%増益見通しだ。営業利益に比べて純利益の伸び率が小さいのは株式報酬制度導入によるもので、その費用は第2四半期以降に計上される。通期業績見通しに対する第1四半期の純利益の進捗率は36%と高いが、想定通りの進捗の様子だ。来期についても高水準の受注残高が収益の支えとなり、今期並みの業績が期待される。
株価は地政学リスクによって大きく変動する傾向がある。地政学リスクが高まれば上昇余地もあろうが、業績面からみた株価のバリュエーションは妥当な水準と考える。
●田中精密工業 <7218> [東証S]
レーティング:NEUTRAL
担当 近藤浩之
◆電動化領域の量産体制構築

四輪車、二輪車、汎用の部品製造が主力(部品製造事業)。自動車販売事業(モビリティ事業)、FA(ファクトリーオートメーション:工場自動化)設備の製造・販売など(ソリューション事業)も手掛ける。ホンダグループ向け、四輪エンジン部品「ロッカーアームASSY」(エンジンのバルブ開閉タイミングとバルブのリフト量をエンジンの回転域に合わせて切り換えるための部品)依存の脱却に取り組んでいる。
今期(2026年3月期)の会社予想は、営業利益、純利益が前期比2割強減る見通しだ。成長投資に伴う費用が嵩む想定で、電動化領域(ハイブリッド車、電気自動車(EV))の増産に向けた投資のほか、ソリューション事業やモビリティ事業の新工場建設を実行中だ。

モーターカバーやインバーターフレームを主要製品とする電動化領域は、前期に16億円の新規売上を獲得し、今期には22億円に、2028年3月期には54億円に拡大する目標を掲げている。目標達成に向けて、今期は国内と米国でアルミ鋳造マシンや工場物流の自動化システム、外観検査工程の完全自動化システムを導入する。また、今年2月に鋳造金型の製造販売を手掛ける米谷製作所を子会社化して金型設計から部品製造までの一貫加工体制を構築したことにより、品質やコスト面での更なる向上を目指す。EVの航続距離延長、バッテリー容量低減に寄与する高性能モーターコアの製造技術なども開発し、国内外で売り込んでいる。
第1四半期実績は減収減益となったものの、通期会社予想に対する進捗率は営業利益が32.5%、純利益が37.3%と高く、会社への取材を通しても会社予想を若干上回っているような印象を受けた。そこで、今村証券による今期業績予想は、売上高406億円(前期比+0.3%)、営業利益24億円(同▲11.3%)、純利益16億円(同▲10.5%)とし、営業利益、純利益は会社予想から3億円上振れると想定した。来期(2027年3月期)は、現在実行中の成長投資が収益に寄与して、今期今村証券予想比1割強の増益になるとみる。投資判断は「NEUTRAL」とする。
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金融商品取引業者 北陸財務局長(金商) 第3号
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株探ニュース
東証プライム市場に上場する3月期決算企業の今期業績は、純利益が7%の減益予想だ。米関税政策や為替の円高が収益を圧迫することが主な要因だ。とはいえ日本をはじめとして各国と米国の関税をめぐる交渉が進展するなか、関税政策の影響は4月時点の想定からは緩和されており、市場では企業業績の上方修正期待が強まっている。
以下は北陸の3月期決算企業の第1四半期純利益と、通期業績予想に対する進捗率だ。今回は通期利益予想に対する進捗率が高い企業の中から、セーレン、石川製作所、田中精密工業を取り上げる。

●セーレン <3569> [東証P]
レーティング:OUTPERFORM
担当 近藤浩之
◆3年間で300億円の成長分野投資を実施

早くも今期(2026年3月期)会社予想を上方修正した。引き上げ額は営業・経常利益が11億円、純利益が9億円だ。第1四半期は、「車輌資材」(自動車・鉄道等のシート材、エアバッグ、加飾部品)が好調で、アジアでの販売増加、品質改善や経費削減活動が寄与した。「エレクトロニクス」(導電性素材、工業用ワイピングクロス、ビスコテックス・システムおよびサプライ等)、「ハイファッション」(各種衣料製品、衣料用繊維加工)も伸びた。
売上高・利益の推移

今期からの3年間で総額300億円の成長分野投資を実施する。主な投資先は、「車輌資材」においては、合成皮革「QUOLE」(クオーレ)を増産する。「QUOLE」は重量が本革の約1/2と軽量化に役立ち、耐久年数は10年以上、耐摩耗性は本革の4倍である。「夏熱くならず、冬冷たくならない」素材のため車内体感温度を下げてエアコン稼働の抑制が可能となり、製造工程で水や溶剤の使用を抑えたり、リサイクル糸や植物由来の原料を使用したりといった環境負荷低減や、動物愛護にも貢献できる。今期はメキシコで増産投資を実施する。
また「エレクトロニクス」では人工衛星や半導体などの成長を狙う。人工衛星事業は、福井県や東京大学などと連携し超小型人工衛星、超小型人工衛星搭載機器の製造を手掛けている。今後は生産能力の引き上げに加えて、衛星運用・データ提供までのワンストップサービス構築を目指す。半導体事業は、シリコンウェーハ上に回路の素材となる層を作る工程である成膜加工サービスを提供しており、増産に向けて新工場を建設する。
この300億円の投資とは別枠で、6月にはユニチカ繊維事業の買収も発表した。2005年に買収したカネボウ繊維事業(現KBセーレン)を再生した経験を活かし、今後10年で100億円規模の投資を行って事業拡大につなげていく。
今後の株価推移はベンチマーク(TOPIX)を上回ると考え、投資判断は「OUTPERFORM」。
●石川製作所 <6208> [東証S]
レーティング:NEUTRAL
担当 織田真由美
◆売上の7割程度が防衛関連。日本政府の防衛強化で収益改善

防衛機器、紙工機械の二本柱に加え、繊維機械の部品加工などの受託生産も収益を支える。レンゴー <3941> [東証P]の持分法適用関連会社。
2026年3月期第1四半期連結業績は増収増益。政府が2022年12月に策定した防衛力整備計画で2023年度から2027年度までの5年間の防衛費を総額43兆円程度と定めたことで、当社の防衛機器の受注も2023年度から急増、前期末(2025年3月期末)の受注残高が291億2100万円と積み上がっていたことで売上高は前年同期比39.1%増収の36億1100万円となった。
利益については防衛生産基盤強化法の施行に伴い粗利益率が18.0%と前年同期に比べて3.2ポイント改善したことが大きく、営業利益が2億3400万円に拡大した。
一方、受注高は今期に入り低迷気味だ。防衛力整備計画における当社の受注は一巡した様子で、第1四半期の受注高は前年同期比18.3%減の33億3900万円にとどまった。足元の受注残高は288億円程度と見られ、なお高水準にあるため当面の収益は安定して推移するとみられるものの、受注動向には注意が必要だ。

今期業績予想は、受注残高が高水準にある中で消化が進み、防衛生産基盤強化法による利益率改善も寄与し増収増益見通し。営業利益は前期に比べて44%増益、純利益は同4%増益見通しだ。営業利益に比べて純利益の伸び率が小さいのは株式報酬制度導入によるもので、その費用は第2四半期以降に計上される。通期業績見通しに対する第1四半期の純利益の進捗率は36%と高いが、想定通りの進捗の様子だ。来期についても高水準の受注残高が収益の支えとなり、今期並みの業績が期待される。
株価は地政学リスクによって大きく変動する傾向がある。地政学リスクが高まれば上昇余地もあろうが、業績面からみた株価のバリュエーションは妥当な水準と考える。
●田中精密工業 <7218> [東証S]
レーティング:NEUTRAL
担当 近藤浩之
◆電動化領域の量産体制構築

四輪車、二輪車、汎用の部品製造が主力(部品製造事業)。自動車販売事業(モビリティ事業)、FA(ファクトリーオートメーション:工場自動化)設備の製造・販売など(ソリューション事業)も手掛ける。ホンダグループ向け、四輪エンジン部品「ロッカーアームASSY」(エンジンのバルブ開閉タイミングとバルブのリフト量をエンジンの回転域に合わせて切り換えるための部品)依存の脱却に取り組んでいる。
今期(2026年3月期)の会社予想は、営業利益、純利益が前期比2割強減る見通しだ。成長投資に伴う費用が嵩む想定で、電動化領域(ハイブリッド車、電気自動車(EV))の増産に向けた投資のほか、ソリューション事業やモビリティ事業の新工場建設を実行中だ。
売上高・利益の推移

モーターカバーやインバーターフレームを主要製品とする電動化領域は、前期に16億円の新規売上を獲得し、今期には22億円に、2028年3月期には54億円に拡大する目標を掲げている。目標達成に向けて、今期は国内と米国でアルミ鋳造マシンや工場物流の自動化システム、外観検査工程の完全自動化システムを導入する。また、今年2月に鋳造金型の製造販売を手掛ける米谷製作所を子会社化して金型設計から部品製造までの一貫加工体制を構築したことにより、品質やコスト面での更なる向上を目指す。EVの航続距離延長、バッテリー容量低減に寄与する高性能モーターコアの製造技術なども開発し、国内外で売り込んでいる。
第1四半期実績は減収減益となったものの、通期会社予想に対する進捗率は営業利益が32.5%、純利益が37.3%と高く、会社への取材を通しても会社予想を若干上回っているような印象を受けた。そこで、今村証券による今期業績予想は、売上高406億円(前期比+0.3%)、営業利益24億円(同▲11.3%)、純利益16億円(同▲10.5%)とし、営業利益、純利益は会社予想から3億円上振れると想定した。来期(2027年3月期)は、現在実行中の成長投資が収益に寄与して、今期今村証券予想比1割強の増益になるとみる。投資判断は「NEUTRAL」とする。
| 【レーティングの定義】 OUTPERFORM:今後12カ月間のトータルリターンがTOPIXの予想リターンを10%超上回ると予想される。 NEUTRAL:今後12カ月間のトータルリターンがTOPIXの予想リターンの+10%と-10%の間に入ると予想される。 UNDERPERFORM:今後12カ月間のトータルリターンがTOPIXの予想リターンを10%超下回ると予想される。 トータルリターン:株価変動率+配当利回り 目標株価は12カ月間の投資を想定しており、将来発行されるレポートで修正されることもあります。 |
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今村証券株式会社
金融商品取引業者 北陸財務局長(金商) 第3号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
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【アナリストによる証明】
本資料に示された見解は、言及されている発行会社とその発行会社等の有価証券について、各アナリストの個人的見解を正確に反映しており、さらに、アナリストは本資料に特定の推奨または見解を掲載したことに対して、いかなる報酬も受け取っておらず、今後も受け取らないことを認めます。
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【免責・注意事項】
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的とし、信頼できると思われる各種データに基づき作成したものですが、正確性・完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見・予測等は、作成時点における今村証券の判断に基づくもので、今後、予告なしに変更されることがあります。本資料は投資結果を保証するものではございませんので、本資料の内容について第三者のいかなる損害賠償の責任を負うものでもありませんし、本資料に依拠した結果として被った損害または損失について今村証券は一切責任を負いません。投資に関する最終決定はご自身の判断で行ってください。今村証券は本資料に関するご質問やご意見に対して、何ら対応する責任を負うものではありません。
今村証券及びその関連会社、役職員が、本資料に記載されている証券もしくは金融商品について、自己売買または委託売買取引を行うことがあります。
本資料は今村証券の著作物であり、著作権法により保護されております。今村証券の事前の承認なく、また電子的・機械的な方法を問わず、本資料の全部もしくは一部引用または複製、転送等により使用することを禁じます。
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※今村証券より提供されたレポートを掲載しています。
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