日本リビング保証 Research Memo(3):保証サービスを中心に住宅領域及び非住宅領域の事業を展開
■日本リビング保証<7320>の事業概要
1. 事業概要
(1) ビジネスモデルと特徴・強み
同社は、戸建・マンション等の住宅建物、水回り等の住宅設備機器、太陽光発電・蓄電機器、教育用PC・タブレット端末、EV(電気自動車)、家電等の顧客企業へ、設備延長保証サービスの提供、点検・修繕工事の受託、業務効率化を支援するSaaSプロダクトの提供など、金融やオペレーションを組み合わせた資財価値最大化ソリューションを提供している。
一般的に設備・機器のメーカー保証は1?2年程度に設定されることが多いが、製品を使用する最終ユーザー(住宅オーナー等)側には「故障や破損等のトラブルは一般的なメーカー保証期間を経過した後に発生することが多いため、もっと長期の保証が欲しい」という要望が強く、こうしたニーズに応えたのが同社の設備延長保証サービスである。なお設備延長保証サービスについては、保証コストを事業者が負担して初期標準保証期間を長期に引き延ばすケースと、保証コストを消費者が負担して任意加入とするケースに大別される。同社の場合は工務店・住宅販売会社と設備保証の契約を行い、購入時から延長保証サービスが付帯される「設備保証付き住宅」などとして販売することが多い。保証期間中は所定の不具合が発生した際に、無料で修理・交換等のサービスを享受できる。
報告セグメント区分は、住宅領域を対象とするHomeworthTech事業、及びHomeworthTech事業の知見・ノウハウを活用して非住宅領域に展開するExtendTech事業としている。ビジネスモデル(サービス提供の仕組み)は、両事業とも基本的には同じである。各種製品・サービスを製造・販売する顧客企業に対して、保証サービスやSaaSプロダクトを中心とするアフターサービスソリューションを提供する。顧客企業は最終ユーザーとの間で販売契約を結んで代金を受け取る。この販売契約には、製品価格に保証料が含まれているケースや、オプションとして保証を付けるケースなどがある。保証サービスの対象となる設備・機器に故障・破損等のトラブルが発生した場合は、最終ユーザーからの依頼または顧客企業からの依頼に基づいて、同社が顧客企業を代行する形で修理事業者(外注の協力会社等)を手配・派遣し、点検・修理・交換等を行う。同社の売上は、顧客企業から契約に基づく保証料やアフターサービスにかかわる利用料等を計上する。
最終ユーザーにとっては保証期間延長によって安心感が得られるメリットがあり、顧客企業にとっては同社のサービスを利用することで延長保証にかかる運営コストを負担することなく、最終ユーザーとの接点が長期化することで販売促進につながるなどのメリットがある。保証サービスや業務効率化を支援するSaaSプロダクト等により、BtoBtoC形で顧客企業のアフターサービスを陰で支える“黒子役”のビジネスモデルである。
保証制度の運営はバックアップ損害保険締結・運用やオペレーションなどが特殊であるため高度な専門性が必要であるが、それに対応できることが同社の強みである。社内に保険・オペレーション・金融の各領域で経験豊富な人材を揃え、保証制度導入を検討する顧客企業に対し、大手損害保険会社とも連携しながら顧客企業のニーズに合わせて適切な保証制度を設計・構築するノウハウを持ち、業務オペレーション代行・サポートまでトータルでソリューションが提供できる。そして創業以来のコアマーケットである住宅領域においては、大手ハウスメーカー、マンションデベロッパー、地方工務店など累計4,000社以上の顧客に幅広いソリューションを提供している。
(2) 主要サービス・プロダクト
HomeworthTech事業は、住宅領域において大手ハウスメーカー、マンションデベロッパー、地方工務店等向けに、保証サービスやSaaSプロダクトを中心とする各種アフターサービスソリューションを提供している。主要サービス・プロダクトとしては、新築住宅向け設備保証サービスの「住設あんしんサポート」「住設あんしんサポートプレミアム」「建物20年保証バックアップサービス」「資産価値保証プログラム」「地震あんしんサポート」など、中古住宅向け設備保証サービスの「住設あんしんサポート5」「建物あんしんサポート」「売買あんしんサポート」「既存設備サポート」など、アフターサービス業務受託サービスの「長期メンテナンスシステム」「メンテナンスサポートデスク」など、住宅事業者専用のポイント積立・決済制度の「おうちポイント制度」及びこの利用を促進するためのアプリ「おうちマネージャー」、最終ユーザー向けの「うちもキーピング」「うちもウォレット」、住宅点検・修繕履歴管理アプリ「おうちアルバム」、リアルタイム遠隔サポートアプリ「おうちLiveアシスト」、保証申込から保証書発行や修理受付まで保証業務がシームレスに完結するDXアプリ「My Warranty」、住宅事業者のお客様対応業務を支援する問い合わせ自動対応アプリ「おうちbot」などがある。
HomeworthTech事業では、保証サービス契約残高積み上げに向けたサービスバリエーション拡充戦略や営業エリア拡大戦略を推進している。サービスバリエーション拡充戦略において、直近では2023年10月に三井不動産レジデンシャル(株)が運営する「三井のすまいLOOP」会員向けに、業界初の住宅メンテナンスサービス「sumamori」を提供開始した。加えて2024年4月には非住宅木造建築を対象とした長期保証サービスを提供開始し、同年5月には(株)ADDIXと、住宅事業者向けデジタルマーケティングサービスの共同開発を決定した。同年7月には、地盤ネットホールディングス<6072>の子会社である地盤ネット(株)と業務提携して「地盤補償」及び自動対応アプリ「おうちbot」の新プランをそれぞれ提供開始した。同年8月にはリフォームビジネスにDXと金融を実装するSaaS×Fintechの新サービス「KROX」を提供開始した。
ExtendTech事業は、非住宅領域において保証サービスやSaaSプロダクトを中心とする各種アフターサービスソリューションを提供している。主要サービス・プロダクトは、太陽光発電・蓄電システム機器向け保証サービス、風力発電施設向け保証サービス、教育ICT機器(PC・タブレット端末等)向け保証サービス、家電領域向け保証サービス、音楽領域向け保証サービス、事業者向け倉庫管理デジタルプラットフォーム「Warranty Logistics Technology」、保証業務DXアプリの「My Warranty」などがある。
ExtendTech事業では、事業領域拡大戦略やサービスバリエーション拡充戦略に注力している。直近では2023年9月に産業用・系統用大規模蓄電池の保証サービス「ESS Warranty System」を、トヨタ自動車<7203>が運営する中古車両整備機器の売買Webサービス「メカコミ」へ保証サービスを、同年12月にはEVリユースバッテリーを活用した産業用太陽光自家消費蓄電池システムへ、国内初となる10年保証サービスをそれぞれ提供開始した。2024年4月には国際航業と業務提携し、国際航業が再生可能エネルギー事業者向けに提供する太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションサービス「エネがえる」シリーズにおいて、国内初となる「経済効果シミュレーション保証」を提供開始した。
なお、子会社のリビングポイントは、資金決済法における前払式支払手段(第三者型)発行者として「おうちポイント」を発行している。これは通常の電子マネーと同様に少額決済に対応できるほか、有効期間を15年に設定しており将来の大規模修繕費用の積み立てとしても活用できる。リビングポイントは、ポイント未使用残高の100%相当の金額(資金決済法では未使用残高の2分の1以上の供託を義務付け)を発行保証金として供託しており、未使用残高は2024年6月期末時点で2,362百万円となった。子会社のリビングファイナンスはファクタリング事業やエスクロー事業などを展開している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《HN》
提供:フィスコ