児玉化 Research Memo(1):事業構造改革の効果により収益構造は大きく改善。2025年3月期は収益回復見込み
■要約
児玉化学工業<4222>は1946年に創業した樹脂加工メーカーで、この分野において独創的な成形法を開発することで発展を遂げてきた。1962年に東京証券取引所(以下、東証)第2部市場に上場、2022年4月の東証市場区分再編に伴いスタンダード市場へ移行した。
セグメントは、主力の「モビリティ事業(旧 自動車部品事業。以下同じ)」「リビングスペース事業(旧 住宅設備・冷機部品事業)」及び「アドバンスド&エッセンシャル事業(旧 アドバンスドマーケット事業)」の3つに分かれる。「モビリティ事業」は、各種ピラー類、ラッゲージトリムやトランクトリム、ドアトリム、スポイラー、フェンダーカバー、インストルメントパネル、フロントスポイラーやスカートなど、自動車関連製品を幅広く手掛けている。近年では、プラスチックを含浸した長繊維ガラスマット成形において、従来工法では困難とされていた均一な長繊維ガラスの分散を維持しつつ複雑な形状の賦形を可能にしたガラス繊維マットプレス新工法製品の量産化に成功した。また、高品位に印刷・シボ付けされたフィルムを、加飾に不向きとされる複雑な3次元形状の基材へ均一に貼合することを可能とした三次元加飾工法による製品の量産化など、新規品の開発・拡販を進めている。一方、「リビングスペース事業」は、洗面化粧鏡、キッチン、トイレ、バスなど、水周りに採用される樹脂製品を提供しており、とりわけ洗面化粧鏡は代表的な製品だ。さらに、「アドバンスド&エッセンシャル事業」は、ゲームパッケージなどを展開する。2020年3月期には一時的に債務超過に陥ったが、これは資本増強策を実施した際の払い込みが期をまたいだためであり、既に債務超過は解消している。さらに、事業再生ADR債務を完済するとともに、事業再生計画期間が終了、本格的に収益が上向く局面に入り、それに伴い攻めの経営姿勢を取れるようになった。
同社はタイやベトナムといった東南アジアでも事業展開しており、2024年3月期の東南アジア売上高構成比は、主力の「モビリティ事業」で49.3%、「リビングスペース事業」で38.0%となっている。過去には海外で苦戦を強いられた経験があり、不振が続いていたインドネシアから2018年3月に撤退したほか、2020年4月には中国からも撤退、生産体制の再構築や収益構造の抜本的な見直しをするなどの事業構造改革も進めてきた。
2024年3月期は、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響は、国内の第5類移行とともに後退したものの、原油高騰や円安に伴う資材高などがマイナスとなった。さらに、主要ユーザーである完成車メーカーの不祥事により、新製品が計画よりも納入が後倒しの状況となるなど、これが伸び悩みの要因となった。こうしたことを背景に、売上高は14,696百万円(前期比4.5%減)と減収を余儀なくされ、営業利益は165百万円(同56.6%減)と前期に続いて落ち込んだ。なお、2025年3月期の業績は、売上高が15,400百万円(前期比4.8%増)と小幅増収ながら、営業利益が460百万円(同178.1%増)と大幅増益を見込んでいる。
■Key Points
・自動車部品と住宅設備・冷機部品に強みを持つ樹脂加工メーカー
・事業構造改革の効果により収益構造が大きく改善、事業再生が完全に完了
・2025年3月期は大幅増益で回復を見込む
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
《HN》
提供:フィスコ