ファーマF Research Memo(11):「繊維」「電池素材」「バイオスティミュラント」分野の新市場を創造
■ファーマフーズ<2929>の成長戦略
3. 新市場創造
新市場創造では、拡大基調である健康市場において、ブランド強化、海外市場開拓(米国市場開拓、越境ECによる中国市場開拓、ハラール認証による東南アジア市場開拓)、国内市場における通販ビジネスの深耕化(100万人超のD2Cプラットフォームを活用した新製品・サービスの展開)、BtoBからBtoCへのビジネスモデル転換(同社ブランド製品の大手ドラッグストアやコンビニエンスストア流通網への展開)、SDGsへの取り組み(未利用資源のアップサイクル市場創造)、健康サポート機器や医療機器分野への進出(健康器具、美顔器、測定機器、補聴器)などを推進する。
このうち米国市場開拓については「ファーマギャバ(R)」のFDA(米国食品医薬品局)によるGARS(Generally Recognizes As Safe)認証取得を目指す。FDA GARS取得によって現在のサプリメント対象から一般食品や飲料にも対象が広がるため、米国の大手食品・飲料メーカーでの採用につながり、米国市場が急拡大する見込みだ。東南アジア市場開拓についてはベトナムに合弁会社を設立する覚書を締結し、健康食品製造工場を建設する予定である。将来的にはベトナム以外の東南アジアへの展開も視野に入れているようだ。
未利用資源のアップサイクル市場創造については、未利用の天然由来原料や卵殻膜の高度利用により「繊維」「電池素材」「バイオスティミュラント」分野での市場創造を目指している。このアップサイクルにより、国内で年間26万トン廃棄されている卵殻及び卵殻膜を高付加価値製品に転換し、持続可能な社会の実現を目指す。
2023年9月に、NEDOが公募する「バイオものづくり革命推進事業」プロジェクトに、卵殻膜アップサイクルプラットフォームとして3つの領域(ハイブリッド繊維、新規蓄電素子材料、農業用バイオスティミュラントペプチド)が委託及び助成事業として採択された。そして2024年2月にNEDOと「バイオものづくり革命推進事業」プロジェクトについて正式契約し、5ヶ年の研究開発事業がスタートした。卵殻膜加水分解物をナノファイバー化することで電気的特性に優れた蓄電素子の材料開発が可能であることも見出しており、今後は繊維や農業の分野に留まらず、ナノファイバーを原料とした電子・電池材料など幅広い産業利用に適した特性を持つ「卵殻膜素材」の開発・量産化に向けて、NEDOの補助を受けながら今後5年間で総額50億円超(明治薬品の新工場建設約80億円を含めると合計約150億円)の研究開発投資及び設備投資を行う計画としている。
「繊維」の分野では、卵殻膜を活用した次世代サステナブル繊維「ovoveil(オボヴェール)」が、2024年2月に京都大学の土佐尚子特定教授の秋冬コレクションに採用され、世界四大ファッションウィークの1つであるニューヨークファッションウィーク(NYFW)で公開された。「ovoveil」の特徴は、卵殻膜が本来持っている美肌・健康機能と、カシミヤに似た滑らかな風合いを持つことである。今後も大手アパレルメーカーの採用に向けて商談を推進する。
「電池素材」の分野では、2023年6月に信州大学先鋭領域融合研究群国際ファイバー工学研究拠点(以下、IFES)との共同研究により、世界初の卵殻膜を用いたナノファイバーのメンブレン(膜)の作製に成功した。今後はIFESと産学間の業務提携を締結し、卵殻膜ナノファイバーを用いた生体膜創傷被覆材をはじめとするメディカル分野や、スーパーキャパシタなどの電池素材分野への応用を目指して研究を進める。
「バイオスティミュラント」の分野では2021年9月に三洋化成工業と、世界の農業危機の解決に向けて両社の開発・技術力を融合させた「アグリ・ニュートリション基本計画」を策定し、2022年に宮崎県新富町で新たな農業システムの構築を目指す実証実験を開始した。今後の予定として、2024年に両社の技術を融合したバイオスティミュラントによる多収性、耐性、機能性を高めた高付加価値作物の開発、2025年に高付加価値作物の未利用部位由来の高機能健康食品及び化粧品の同社通販チャネルで販売、2026年にターゲット作物の拡大及び6次産業化、ブランド化の推進、2030年に持続可能な農業システムの開発を目指している。なお2023年12月にワケンビーテック(株)より植物内生酵母を含む農業用微生物資材事業を譲り受け、2024年1月に農業資材であるバイオスティミュラント第1弾としてGABA含有乳酸菌発酵液「K-3」の自社通販チャネルでの販売を開始した。「K-3」は全国20ヶ所以上で行ってきた果菜類の栽培に関する研究成果として、トマトやパプリカの収穫時期短縮や収穫量の増加が確認されている。
このほか2022年7月には、卵由来の液体肥料の製造を行うENEGGOにENEOSホールディングスと共同出資し、(株)グリーンテクノ21及びその子会社ENEGGOとの業務提携契約を締結した。これにより、国内最大規模の卵殻及び卵殻膜の調達を行い、卵殻膜繊維や液体肥料など化成品分野を強化していく。
M&A・アライアンスを積極推進
4. 新組織創造
新組織創造では、安心して働ける給与水準や成長するためのインセンティブなど組織・人事・採用面の改革、海外製造・営業拠点構築などGlobal Solution Teamの育成・強化、M&A・アライアンスの実施などを積極推進する。M&A・アライアンスについては、手元現金と融資枠を活用して、新製品・新市場に関連する売上高30億円~200億円規模の企業を視野に入れている。2023年1月には、PF Visionary Fund投資事業有限責任組合を設立し、運営開始した。スタートアップ企業への投資により、抗体創薬及びヘルスケア事業でイノベーションを加速する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《SO》
提供:フィスコ