サスメド Research Memo(6):DTxプラットフォーム事業ではブロックチェーン技術を活用し臨床試験効率化支援
■サスメド<4263>の事業概要
4. DTxプラットフォーム事業
DTxプラットフォーム事業では、不眠障害治療用アプリの開発過程で獲得したノウハウをベースに、治療用アプリ開発プラットフォーム「QDTx(R)」を活用したDTx開発支援サービス、医療ビッグデータを分析する機械学習自動分析サービス「Awesome Intelligence」、製薬企業向けに臨床試験の効率化を支援する汎用臨床試験システム「SUSMED SourceDataSync」などを提供している。
特に「SUSMED SourceDataSync」は、ブロックチェーン技術を実装したモニタリングシステムにより、臨床試験で求められる高い水準でのセキュリティとデータ改ざん耐性を同時に実現するとともに、モニタリングに関する工数と費用の大幅削減に貢献する。「Awesome Intelligence」はクラウドサービスとして提供し、リアルワールドデータをはじめとした医療ビッグデータ解析などに活用される。
同社は、治験で求められるモニタリングのデータ照合作業をシステムで代替するため、2017年からブロックチェーン技術の活用に関する研究開発を行い、多数の特許を取得している。また「SUSMED SourceDataSync」は、内閣府規制のサンドボックス制度※1の採択とグレーゾーン解消制度※2を利用して、2020年12月に厚生労働大臣より正式にGCP省令※3の求めるモニタリングの要件を満たすシステムとして認可された。
※1 IoT、ブロックチェーン、ロボットなどの新たな技術や、プラットフォーマー型ビジネス、シェアリングエコノミーなどの新しいビジネスモデルの社会実装に向け規制官庁の認定を受けた実証を行い、その結果を用いて規制の見直しにつなげる制度。
※2 現行の規制の適用範囲が不明確な場合においても事業者が安心して事業活動を行えるように、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度。
※3 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令で、GCPはGood Clinical Practiceの略。
その後も、医療機関・学術研究機関・製薬企業などとの共同研究やアライアンスによってブロックチェーン技術を応用し、更なる信頼性向上や領域拡大を推進している。2021年6月にはEPSホールディングス(株)とブロックチェーン技術を活用した治験業務の効率化を目的に業務提携した。
2022年5月には国立精神・神経医療研究センター(以下、NCNP)と共同で、ブロックチェーン技術を活用したレジストリデータの信頼性向上に関する研究を開始した。同年6月には、神経・精神科領域で新薬の開発などを展開する日本発バイオベンチャー企業のアキュリスファーマと、企業治験として世界初となるブロックチェーン技術を活用した治験の実施に関する契約を締結し、同年11月にはアキュリスファーマが「SUSMED SourceDataSync」を活用し、ヒスタミンH3受容体拮抗薬/逆作動薬Pitolisantのナルコレプシー患者を対象とする国内第3相臨床試験を開始した。
2023年1月には、アキュリスファーマが「SUSMED SourceDataSync」を活用した2つ目の治験としてPitolisantの閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の眠気に対する国内第3相臨床試験を開始した。またリニカル<2183>及びClinChoice(株)と「SUSMED SourceDataSync」を活用した効率的かつ効果的な臨床試験フルサポートサービス提供体制構築に向けて業務提携した。2023年9月には、国立大学法人東北大学と「SUSMED SourceDataSync」を用いて(一社)日本心血管インターベンション治療学会及び関連学会が実施する静脈疾患レジストリの構築を行う基本合意書を締結した。ブロックチェーン技術による医療機器のリアルワールドデータ活用を推進する。また「SUSMED SourceDataSync」が耳鳴治療用アプリ「SMD403」の特定臨床研究に導入された。
当面は研究開発費用が先行
5. リスク要因
一般的なリスク要因としては、新薬開発と同様に、治療用アプリ開発における研究開発の不確実性や副作用・製造物責任、法的規制、知的財産権に関わる訴訟などがある。既に医療機器製造販売承認を取得している不眠障害治療用アプリ「サスメド Med CBT-i」については、保険収載の時期及びその後の市場での普及がリスクとして想定され、当面は多額の研究開発費用が先行して期間損益のマイナスが継続する可能性がある。
こうしたリスク要因に対して同社は、治療用アプリのシーズ獲得とパイプライン開発を推し進めることで将来の利益拡大を目指すとともに、保有する開発パイプラインの他社への導出やマイルストン収入の獲得など、より早期に収益計上を可能とする方策についても検討するとしている。また、研究開発型企業として多額かつ長期にわたる研究開発費の負担が続くため、安定的な収益源を確保するまでは必要に応じて適切な時期に資金調達などを実施して財務基盤の強化を図る方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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提供:フィスコ