アートネイチャ Research Memo(9):第3四半期決算の内容と今後を踏まえて業績予想の修正を発表
■業績動向
1. 2024年3月期第3四半期の業績概要
アートネイチャー<7823>の2024年3月期第3四半期の業績は、売上高が31,913百万円(前年同期比1.3%減)、営業利益が2,652百万円(同20.6%減)、経常利益が2,713百万円(同17.2%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益が2,002百万円(同0.7%減)となった。なお、決算発表と同日に2024年3月期の業績予想の修正を発表し、第3四半期までの決算内容と今後の動向を踏まえ、売上高、利益共に当初計画を下回るものとなった。
日本経済は、2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが2類相当から5類へ変更されたことなどにより正常化が進み、個人消費やインバウンド需要が回復しつつある一方、円安の進行や原材料価格、エネルギー価格の高騰等による物価上昇などもあり、依然として先行きが不透明な状況が続いている。このような環境ではあったが、同社は、2024年3月期を初年度とする中期経営計画「アートネイチャーAdvanceプラン」を策定し、同社の強みを生かして様々な課題に挑戦し、業績や毛髪市場におけるシェアを伸長させるとともに新領域の事業を獲得・拡充することで、「次代を切り拓くアートネイチャー」として飛躍するべく事業活動を積極的に推進した。
この結果、男女ともにオーダーメイドウィッグの新規販売が苦戦した一方、女性向け既製品ウィッグ(ジュリア・オージェ)の販売が好調だった。オーダーメイドウィッグの苦戦は、個人消費好転の影響が旅行や外食などに集中してウィッグ購入の優先順位が下がったこと、発売して2年が経ったレディースオーダーメイドウィッグ「フィーリン」の反響が落ち着いてきたこと、メインターゲットとなる中高齢層に向けた対応策に工夫が足りなかったことなどが要因だと思われる。また、女性向け既製品ウィッグ(ジュリア・オージェ)の好調は、出店先である商業施設の売上や来館人数が増加したことに伴って試着数が増加したこと、スタッフのモチベーションや販売スキルの向上、店内オペレーションの見直しなどによりリピートに対する販売体制を強化できたこと、女性向けオーダーメイドウィッグの販促で好評なタレントを既製品にも採用したことなどが要因だと考えられる。なお、その他の減収幅が広がっているが、試行錯誤中の通販で採算を重視したことが要因である。
以上から、全体の売上高は微減となった。加えて、費用面については広告宣伝費などの様々な経費を抑制したものの、円安や原材料高などに伴う物価高の影響で売上原価が増加し、初のベースアップなどにより人件費も増加したことから、営業利益は2ケタ減益となった。
なお、各事業の活動としては、引き続き年2回新商品を市場に投入した。なかでもけん引役となったのがフィーリンで、春には通気性とフィット感がさらにアップした「フィーリン4」、秋にはさらに風に強くなった「フィーリン ウルトラフィット」を発売した。好調のジュリア・オージェでは、ピンでとめない比較的安価なウィッグ「タッチデボーテ」を発売(TV通販専用)、男性用ウィッグ向けには、秋から新たなCMキャラクターを採用した。また、出店と移転リニューアルも積極的に進め、「ジュリア・オージェ イオンモール高崎店」と「レディースアートネイチャー 三越日本橋サロン」の2店を新規に出店したが、なかでも「レディースアートネイチャー 三越日本橋サロン」はハイエンド顧客の多い百貨店にオーダーメイドウィッグと既製品ウィッグを併設したことで利便性の高い店舗となった。イベントも積極化しており、ジュリア・オージェ15周年記念大感謝祭や、注目商品をオールラインナップした初の総合展示会「アートネイチャー フェスティバル2023 in Osaka」を開催し、好評を博した模様である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《SO》
提供:フィスコ