オンコリス Research Memo(8):新型コロナウイルス感染症治療薬は優先順位を下げ、鹿児島大学にて研究を継続
■開発パイプラインの動向
3. 新型コロナウイルス感染症治療薬「OBP-2011」
オンコリスバイオファーマ<4588>は鹿児島大学との共同研究で、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対して強い増殖抑制効果を有する低分子化合物を複数特定した。2020年6月には、同研究成果に基づいて鹿児島大学が出願中の抗SARS-CoV-2薬の特許譲受に関する契約を締結し、開発に着手した。
2021年3月に複数の候補化合物の中からヌクレオカプシド※阻害剤「OBP-2011」を開発品とすることを決定し、経口剤として無症状から軽症患者を対象とした治療薬の開発を進めてきが、動物実験(ハムスターモデル)の結果、「OBP-2011」がウイルス量を減少させる効果を持つことは確認されたものの、投与量が多量に必要となることが判明し、薬剤を効率的に体内に吸収させるための投与手段の見直し(経鼻投与等)が課題として浮上した。
※ ヌクレオカプシドとは、ウイルスのゲノム(DNAあるいはRNA)とゲノムを包むタンパク質(カプシド)の総称。
また、作用機序の解明も課題となっており、2022年3月に国立感染症研究所と共同研究契約を締結して作用機序の解明に取り組んできたが、契約期間中に解明するまでには至らなかった。新型コロナウイルス治療薬としては既に先行品が発売され緊急性が薄れたことや財務状況なども考えて、「OBP-2011」の開発に関しては優先順位を引き下げ、鹿児島大学にて作用機序の解明と標的タンパク質の特定を進め、コロナウイルス以外のRNAウイルス(インフルエンザ、エボラ出血熱等)についても効果があるかどうか研究を進めることになった。RNAウイルス全般に効果があることが確認されれば、将来に未知のRNAウイルスによってパンデミックが生じた際に、有効な治療薬として役立つ可能性があるためだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ