バルテス Research Memo(1):ソフトウェアテストの専門企業。独自の教育メソッドに特色
■要約
バルテス<4442>は、現 代表取締役社長である田中真史(たなかしんじ)氏によって2004年に設立された。同氏は、それまでは一般的なソフトウェアハウスを経営していたが、日本ではソフトウェアを第三者的に評価するテスト市場が未熟であるため、ソフトの品質が低くコスト高にもなっていることに懸念・疑念を持ち、「世に出るソフトウェアの品質をより向上させていきたい」という想いから同社を設立した。その後、多くのソフトウェアテスト案件に携わると同時に、社内のエンジニア教育にも力を入れ、独自の教育メソッドを確立している。現在でもソフトウェアテストの多くはソフトウェアベンダーの内部で行われる場合が多く、外部企業によるソフトウェアテスト市場は発展途上であることから、今後の同社の成長余力も大きいと言える。
1. 2023年3月期連結業績(実績)
2023年3月期の連結業績は、売上高が9,059百万円(前期比35.1%増)、営業利益が970百万円(同70.1%増)、経常利益が982百万円(同69.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が651百万円(同57.4%増)となった。主要な重要指標(以下、KPI)では、「平均単価」は740千円(前期比44千円増)、「期末の稼働エンジニア数」は1,157名(前期末比229名増)、期中の案件数は3,868件(前期比503件増)となり、いずれも過去最高となった。売上総利益率は29.8%(前期は27.8%)と改善したが、主に収益性の高い大型案件やエンタープライズ系領域が増加したことによる。一方で、販管費は前期比33.8%増となったが予算内であり、増収による売上総利益の増加で吸収したことから、営業利益は大幅増となった。
2. 2024年3月期連結業績(予想)
2024年3月期の連結業績は、引き続き各KPIの上昇を目指すことで、売上高で11,178百万円(前期比23.4%増)、営業利益で1,228百万円(同26.7%増)、経常利益で1,233百万円(同25.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益で833百万円(同28.0%増)を見込んでいる。主力のソフトウェアテストサービス事業ではエンタープライズ案件の拡大・深化を進め、さらなる案件大型化・単価上昇を目指す。Web/モバイルアプリ開発サービス事業では、セキュリティ事業の拡大、新規技術を積極導入し高品質な開発を進める。オフショアサービス事業では、エンジニアの教育を継続しさらなる品質向上を目指す。また2023年4月に子会社化した(株)シンフォーの業績寄与も期待される。
3. 成長戦略
日本のソフトウェアテスト市場においては、依然としてソフトウェアベンダー自身による内部テストが多いのが実情であるが、アウトソーシングの必要性が高まっているのも事実だ。そのため今後は、同社のような専門的な企業へのアウトソーシングが増加することが予想される。このような環境下で、同社は主に4つの基本戦略((1) 人的資本への投資、(2) エンタープライズ領域の拡大、(3) 知的財産の拡大、(4) M&Aと組織強化)を掲げ、投資をコントロールすることで「規模成長」と「高利益率」を両立させる計画だ。定量的な目標としては2024年3月期に売上高100億円を掲げているが、この目標は既に射程内と言えるので、2024年3月期の下期には新しい中期経営計画が発表される予定だ。
■Key Points
・主力はソフトウェアテストサービス事業。市場の拡大に合わせて成長を図る
・2023年3月期は前期比35.1%増収、同70.1%営業増益を達成
・中期戦略の目標である2024年3月期売上高100億円は射程内
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《SI》
提供:フィスコ