システムサポート Research Memo(6):Google Clooud関連の売上高が急拡大(1)
■システムサポート<4396>の業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) クラウドインテグレーション事業
クラウドインテグレーション事業の売上高は前年同期比52.2%増の2,394百万円、営業利益は同58.1%増の374百万円と大幅増収増益となった。大幅増収にも関わらず売上総利益率が前年同期比で0.2ポイント上昇の28.0%にとどまった。これは収益性の高い「ServiceNow」の売上構成比が、前年同期の46.0%から38.5%に低下したことが要因と見られる。
売上高の内訳を見ると、「ServiceNow」関連が同27.5%増の922百万円と好調を持続したほか、AWS関連が同63.4%増の825百万円、Microsoft Azure関連が同22.2%増の288百万円、Google Cloud関連が同201.5%増の261百万円、その他が同340.9%増の96百万円と、すべてのクラウド基盤において売上が伸長した。
「ServiceNow」関連については、旺盛な需要に対応すべく技術者の育成や外部パートナーの拡充に取り組んできたことが高成長につながっている。ServiceNow Japan(合)の発表資料によれば、同社の「ServiceNow」認定構築資格取得数は2020年11月の60件から2021年9月に109件、直近2022年9月末には187件と2年間で約3倍に増加しており、取得数では業界2位をキープしている※。市場の拡大に対応する格好で「ServiceNow」のパートナー企業もこの3年間で30社から58社に増加し、全体の資格取得数も約3倍の1,840件に拡大しているが、同社の資格取得数のシェアは10%強をキープしており、引き続き最上位のElite Partnerとしてトップクラスのシェアを維持していると推察される。対象顧客は大企業となるが、東京や大阪だけでなく名古屋や石川エリアなど各拠点で受注が増加しており、現在もなお能力に対して需要が上回る状況が続いているようだ。
※Certified Implementation Specialist/Certified Application Developer/Certified Application Specialistを対象。1位はアクセンチュアで199件。
「ServiceNow」を除くクラウド基盤移行・利用支援関連ではGoogle Cloud関連の急増が目立った。ここ1~2年でGoogle Coudが得意とするデータ分析分野のエンジニアの育成に注力したことで、同分野の受注案件を多く獲得できたことが要因だ(2022年10月時点でGoogle Cloudに携わる技術者は80名以上、認定資格保有数で155件を突破)。こうした実績が認められ、2022年9月には、Google Cloud Partner Advantage プログラムのデータ分析において技術認定の最高評価となるパートナースペシャライゼーションを取得した※。また、同年10月にはGoogle Cloudサービスを活用した3種類のソリューションパッケージ(「Windowsファイルサーバー移行」「データ分析プラットフォーム」「自動スケールするアプリケーションプラットフォーム」)を新たに開発、提供を開始している。いずれも Google Cloud の機能を各目的に合わせて最適に組み合わせているため、導入企業は低コスト・低リスク・短期間(サービス申込みから約3~5週間)で利用が可能となっている。特に、ビッグデータ分析サービスの利活用企業は今後も増加することが見込まれるため、高成長が期待できる分野として注目される。
※Google Cloudのデータ分析でスペシャライゼーションを取得している日系企業は同社のほか、デロイト トーマツコンサルティング(合)、SCSK<9719>の2社がある(2023年2月時点)。
そのほかのクラウド関連としては、Oracle Cloud Infrastructureのほか、2022年から取り組みを開始した「Celonis EMS」についても売上実績が少しずつ出始めているようだ。「Celonis EMS」については現在、技術者の育成を進めている段階にあり、Google Cloudと同様、今後1~2年で売上成長に本格貢献してくるものと予想される。
なお、リセール販売は顧客アカウントのクラウドサービス利用料が積み上がるストック型ビジネスとなるため、導入顧客が増えるごとに売上高が増加するが、2023年6月期第2四半期累計では為替が前年同期に比べて円安に進んだことも増収要因となった。利益率は低いものの継続的に売上が見込める安定収益源となっている。
(2) システムインテグレーション事業
システムインテグレーション事業の売上高は前年同期比8.2%増の5,543百万円、営業利益は同16.8%減の160百万円となった。増収にも関わらず減益となったのは販管費の増加が主因である。既述のとおり販管費の共通費用部分は売上原価に比例して各事業セグメントに配分されるため、販管費が増加した場合、売上規模の大きいシステムインテグレーション事業に負担がかかりやすくなる。売上総利益ベースで見ると同10.5%増の1,330百万円と増益となっており、実際の収益状況は良好に推移したと考えられる。
売上高の内訳を見ると、ITシステム開発が前年同期比8.3%増の2,944百万円、ERP関連が同10.7%増1,564百万円、データベース関連が同4.2%増の1,035百万円といずれも堅調に推移した。特に、ERP関連についてはSAP社の既存製品の保守サポート切れ(2027年)を控えて、「SAP S/4 HANA」へ移行する動きが継続しており、引き続き繁忙状況が続いている。また、データベース関連については主力のOracle製品を中心に堅調に推移した。
(3) アウトソーシング事業
アウトソーシング事業の売上高は前年同期比15.4%増の861百万円、営業利益は同18.9%増の109百万円と2ケタ増収増益となった。売上高の内訳を見ると、AI関連サービスなどを含めたデータセンターサービスが同15.4%増の710百万円、データ分析・入力及びニアショアによる運用保守サービスが同15.5%増の150百万円といずれも好調に推移した。企業が情報システムのBCP対策を強化するなかで、地震の少ない金沢市に拠点を置く同社データセンターを利用するケースが引き続き増加しているものと見られる。売上総利益率も増収効果によって前年同期の30.7%から31.8%に上昇した。前年同期に実施したデータセンターの能力増強投資が一巡したことも利益率の上昇に寄与したものと見られる。なお、データセンターの月額ストック売上については右肩上がりに積み上がっており、直近では100百万円を超える水準となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《NS》
提供:フィスコ