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ラピダスが鳴らす復活の鐘、超買い場の「日の丸半導体・特選6銘柄」 <株探トップ特集>


―動き出す「最先端半導体」量産化シナリオ、“国産”が輝く新ステージは変身株の宝庫―

 週末10日の東京株式市場は主力株をはじめ幅広く売りがかさむ展開となり、日経平均株価は6日ぶりに大幅反落となった。注目された日銀の金融政策決定会合は「現状維持」であったのだが、これを受けて後場寄りは先物主導でいったん下げ渋ったものの、その後は再び大きく値を崩す格好となった。一時下げ幅は500円強に広がる場面もあり、これまでの強気一辺倒のムードが吹き飛んだ。ただ、こうしたマクロ面からの売り圧力は、個別株の観点では好実態株の拾い場を提供している場合が多い。

 今、株式市場で強弱観が対立している注目度の高いテーマといえば「半導体 」である。市況悪化が観測される一方、日米ともに同関連株は昨年秋口を底に戻り足に転じている銘柄が相次いでいることも事実だ。株価は経済の先行きを映し出す鏡とも言われる。半導体関連セクターの収益環境は深い闇に包まれているようで、株価動向を見る限り実は黎明が近いということが雄弁に語られているかにもみえる。東京市場でも、数年前まで相場の牽引役を担っていた銘柄群が、かつての勢いを取り戻すタイミングが近づいている。

●夜明け前の暗闇こそが買い場に

 半導体の在庫調整圧力は世界の半導体メーカーの業績にも深い爪痕を残している。特にメモリー市況はスマートフォンの急速な売れ行き鈍化で需給バランスが悪化、韓国サムスン電子やSKハイニックスなどの業績の落ち込みが話題となった。国内ではレーザーテック <6920> [東証P]が23年6月期の受注高見通しを従来計画から大幅下方修正し、業界関係者にネガティブサプライズを与えたことも記憶に新しい。

 しかし、これらは夜明け前が一番暗いという諺(ことわざ)がずばり当てはまる事例である。昨年夏場以降に悪化した半導体市況も、前方にはトンネルの出口を示す光明が見え始めている。来年以降はデータセンターの更新需要が本格化するほか、世界的なメタバース市場の拡大や、自動車のエレクトロニクス武装も追い風となる。更に「Chat GPT」など想定以上に急激な進化を続ける人工知能(AI)の社会実装が加速していることで、これが半導体需要を押し上げる要因となることが予想される。2030年に半導体需要は1兆ドル(約136兆円)規模に膨らむとの試算もあり、これは昨年比で2倍の水準となる。構造的に半導体市場は膨張を続け弾けることはない。前方に見える谷が深く見えても、それは長い目でみれば、わずかな起伏に過ぎない。

●日の丸半導体復活を担う「ラピダス」登場

 米中摩擦という政治的な背景はあるが、日本で官民を挙げて半導体事業への資金投下の動きが本格化していることは見逃せない変化だ。そうしたなか、国内半導体業界の新たな歴史の舞台に、日の丸半導体新会社として鳴り物入りで登場したのが「ラピダス」である。同社はトヨタ自動車 <7203> [東証P]、ソニーグループ <6758> [東証P]、NTT <9432> [東証P]、NEC <6701> [東証P]、デンソー <6902> [東証P]といった日本を代表する錚々(そうそう)たる企業が出資して設立され、「2ナノ製品」と呼ばれる最先端半導体の量産を目指す計画にある。既に北海道千歳市で製造拠点(工場)を設立することを発表しており、投資金額は5兆円規模になる見込みとも伝わっている。

 日本は半導体生産の各工程で世界の上位に食い込む半導体製造装置 メーカーが数多く存在する。ラピダスの登場に伴う新たな半導体設備投資需要の発現が、製造装置や素材関連メーカーに強力なフォローウインドとなることは間違いない。現時点で世界的な半導体の在庫調整圧力が継続していることは確かである。しかし、それは最先端分野における日の丸半導体復活がもたらすダイナミズムに何ら影を落とすものではない。

 一方、半導体受託生産世界最大手のTSMC<TSM>が、ソニーGなど国内大手企業の参画に加え、経済産業省が巨額の資金支援を行う形で熊本県に工場建設を進めている。TSMCは日本での第2工場建設計画を進める方針も示しており、こうした動きも国内の半導体関連企業にとって幅広く商機を生む土壌となる。

 株式市場で半導体関連銘柄の物色の裾野は広い。しかし、そのすべてが半導体の市場拡大による恩恵で成長トレンドに乗れるとは限らない。カギを握るのは、当該企業ならではの強みを有しているかどうかである。今回のトップ特集では、半導体関連に位置付けられる企業の中で、成長の翼と呼ぶべきポイントを持つ有望株を6銘柄エントリーした。

●半導体・新ステージで上昇気流に乗る6銘柄

◎新光電気工業 <6967> [東証P]

 パソコンやサーバー向け高性能半導体のパッケージ大手で、海外売上比率が約9割を占める。米インテル<INTC>を主要顧客としていることは最大のポイント。独自のセラミック加工技術を駆使して、セラミック静電チャックなど半導体製造装置向け部品にも展開する。また、電気自動車(EV)などに使われるモーターコアも手掛けている。

 21年3月期以降の業績の伸びは特筆に値する。営業利益段階で21年3月期に7.2倍化し22年3月期は更に3倍化を達成、そして23年3月期は前期比30%増の930億円を予想しており、連続で過去最高利益を大幅更新する見通しにある。生産能力増強に向けた設備投資を積極的に進め、業容拡大にも余念がない。

 株価は中長期波動でみて、昨年7月初旬、10月初旬、12月下旬を3点底とする逆三尊を形成し、今年に入り徐々に下値を切り上げ戻り相場の初動を印象づける。この収益力にしてPER7倍台は極めて割安感が強いといえる。昨年3月につけた上場来高値5990円の更新も中期的視野に立って決して高いハードルとはいえない。

◎グローセル <9995> [東証P]

 半導体商社で、車載用マイコン世界屈指のルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]の製品取り扱いを主力としている。また、商社でありながらメーカーとしての側面を持っていることも特長。同社の独自開発による「半導体ひずみセンサー」は超小型で高精度を売り物としており、業界を問わず企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化への取り組みで大きな役割を担っている。

 足もとの業績の伸びも顕著であり、車載用ルネサス製品の好調を背景に、23年3月期の営業利益は期中2度にわたる上方修正を経て前期比36%増の13億円を見込んでいる。更に24年3月期も2ケタの利益成長が有力視される。

 株価指標面からは評価不足が歴然で、年12円配当を継続しながらPBR0.5倍台は大幅な水準訂正に向けた可能性を内包している。株価は2月下旬以降、上値指向を強めているが依然として値ごろ感があり、早晩450円近辺を上限とするボックス圏離脱から、21年1月高値である550円を目指す動きが期待できそうだ。

◎旭ダイヤモンド工業 <6140> [東証P]

 ダイヤモンド工具の専業メーカーで国内上位に位置するが、シリコンウエハー向け研削工具は世界的に需要旺盛な半導体設備投資関連向け案件を獲得している。高精度な切削能力と高寿命で優位性を発揮する固定砥粒方式の電着ダイヤモンドワイヤーは、同社が強みとする製品として収益に貢献している。電子・半導体関連を中心に4つのプロジェクトを推進中で、国内製造拠点の整備に力を入れている。

 23年3月期はシリコン半導体及び化合物半導体向けで高水準の需要を取り込む一方、工場再編費用や電力コスト上昇などの影響が利益面で足かせとなっている。しかし、それでも営業利益は前期比3%増の29億円予想と増益を確保する見通しにあり、来期も増収増益基調は維持されそうだ。

 株価は特定株主による大量保有報告など株式需給面の思惑から2月下旬に大陽線で上放れ、その後も次第高の展開となっているが、PBR0.7倍台は依然として水準訂正余地があり、18年5月以来約4年10ヵ月ぶりの1000円大台乗せも視野に入る。

◎扶桑化学工業 <4368> [東証P]

 リンゴ酸やクエン酸などの果実酸で世界的シェアを持つ一方、収益牽引役を担っているのは半導体ウエハー研磨材で不可欠となっている「超高純度コロイダルシリカ」で、グローバルニッチトップの座を占めている。同商品はシリコンウエハーのファイナルポリッシングスラリーの主原料となるもので、ナノレベルの高精度が求められる半導体の微細化で必須の存在となっている。

 業績はトップライン、利益ともに急成長局面にある。前期に大幅増収増益でいずれも過去最高を更新したのに続き、23年3月期も売上高685億円(前期比23%増)、営業利益171億円(同14%増)と好調な伸びを見込み、連続のピーク更新が予想されている。

 株価は昨年10月につけた3060円を底値に戻り足が鮮明、25日移動平均線をサポートラインとする下値切り上げ波動が続いているが、収益成長が著しいにもかかわらずPER10倍台は見直し余地が大きい。昨年来高値である5000円を視野に中長期で上昇トレンドが維持される公算大だ。

◎QDレーザ <6613> [東証G]

 半導体レーザソリューションを産業や医療分野などに幅広く展開する。最先端エピタキシー技術、量子ドット技術など複数のオンリーワン的テクノロジーを駆使し、高付加価値の半導体レーザを提供する。視覚障がい者向けに網膜走査型レーザアイウェアも育成中。足もとの業績は赤字が続いているが、将来的な成長キャパシティの高さが注目されている。

 網膜投影機器の販売ではソニーとの協業契約を締結しており、大手IT企業との連携は今後の業容拡大に向けた収益基盤につながるものとして評価される。21年2月に旧マザーズ市場に上場したが、セカンダリーの初動で2070円の高値を形成している。その後は大幅な調整を強いられたものの、時価500円台は高値から70%以上水準を切り下げており、大底圏と判断してよさそうだ。

 新株予約権の行使や外資系証券の空売りなど株式需給面での不透明要因はあるが、時価総額は200億円弱に過ぎず、独自技術が開花期に入れば大幅な上値余地が意識されることになる。

◎トリケミカル研究所 <4369> [東証P]

 先端半導体向け高純度化学材料を手掛け、多品種少量生産を特長とする。低誘電率の絶縁膜材料で世界屈指の存在。高付加価値製品で高いシェアを有し、半導体の微細化・高集積化が進む中で同社の活躍余地は今後一段と広がっていく。海外売上高比率が7割を占めるが、国内向けでも日の丸半導体の最先端製品量産化に際して重要な役割を担うことになる。

 業績は文字通りの躍進といってよく、売上高、利益ともに過去最高更新基調を続けている。そうしたなか、23年1月期決算発表が今月15日に予定されており、この結果が大いに注目されるところ。23年1月期営業利益については前の期比22%増の36億2100万円の見通しにあるが、注意すべきは24年1月期の業績予想を保守的に提示する可能性があることだ。

 しかし、中期的な成長シナリオには全く陰りはない。仮に決算発表で下押すような場面があれば、そこは絶好の買い場提供場面と捉えたい。時価総額はまだ800億円程度であり、長い目でみれば、ここからの株価倍増も十分可能なポテンシャルを内在させている。

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