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【特集】OPECプラスは生産調整を透明化へ、失われた信頼を取り戻す契機となるか <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 石油輸出国機構(OPEC)プラスは、2027年から生産能力の基準として最大持続可能生産能力(MSC)を導入することを決定した。MSCとは、1年間持続可能な生産量を指し、一時的な増産要因を排除した実質的な生産能力を示す指標である。OPECプラスの画期的な取り組みとして評価する声が大きい。OPEC事務局によれば、ロシア、ベネズエラ、イランなど制裁対象国を除き、米コンサルティング会社が各国のMSCを算出する予定だ。2027年に向けたMSC評価プロセスは来年1月に始まり、同年9月に完了する。OPECプラスは生産能力を毎年更新するため、このプロセスを今後も繰り返す。

 OPECプラスが減産に向けて生産枠を設定する際、ベースライン(生産能力)は産油国にとって極めて重要な意味を持つ。実際の生産量と比べてベースラインを高めに設定できれば、協調減産による生産減少幅を抑えることが可能となる。このため、石油収入を最大化しようとベースラインを誇張する産油国が多く、ベースライン設定は長年にわたり政治的混乱を招いてきた。協調減産が 相場を押し上げる局面では、生産能力を過大に主張したい誘惑がさらに強まるが、今後は第三者によるMSC算定によってこうした粉飾が排除される見通しだ。なお、現時点では委託先の米コンサルティング会社名は公表されていない。

●自主減産の前倒しは導入を見据えた動きという見方も

 MSCが実際に利用されるのは2027年以降であるため、来年の相場に直接的な影響はほとんどないだろう。しかし、生産枠やベースラインを巡る不信感は大きく薄れるとみられる。これまでは、ベースラインの水準が政治的な産物として扱われてきた面があり、根拠の不明確な数値を基に生産枠を決めても、恣意的な減産にしかならないとして市場参加者に疑問視されてきた経緯がある。主要産油国が現実からかけ離れた能力値を掲げ、協調減産の意義を強調しても、市場が継続的に反応しない局面もある。相場を安定させるはずの減産に対する否定的な認識が積み重なった結果が、現在の低調な相場を招いていると言っても過言ではない。OPECプラスが将来にわたって市場安定化を目指すのであれば、MSC導入は失われた信頼を取り戻す契機となり得る。

 OPECプラスの主要8ヵ国はすでに日量220万バレルの自主減産を解消しており、さらに166万バレル規模の自主減産についても10月から巻き戻しを開始している。過去の協調減産や自主減産は、上述のとおり現実とややかけ離れた生産能力を前提としていた可能性があることから、MSC導入を見据えたうえで急ぎ減産を解消しているのではないかという見方もある。今年、主要産油国が日量220万バレルの自主減産を前倒しし、市場参加者を驚かせた場面があったが、今になって答え合わせが行われている印象だ。MSC導入によって主要産油国が相場に対する影響力を取り戻せるのか、続報に注目したい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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