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【特集】地方都市再生の決定打、快走する「LRT」関連銘柄に熱視線 <株探トップ特集>

宇都宮ライトレールの成功でLRTへの関心が高まっている。地域活性化にもつながるLRTの導入を検討する自治体も多く、関連銘柄のビジネスチャンスにつながろう。

―宇都宮「ライトライン」の成功で注目度急上昇、人口増加や地価上昇の効果も―

 8月26日、栃木県宇都宮市と芳賀町を結ぶ宇都宮ライトレール(LRT)「ライトライン」が開業1周年を迎えた。開業1年間の利用者数は470万人以上と当初予想を約2割上回る好調ぶりで、9月12日には利用者数が想定よりも約3カ月以上早く500万人を突破した。

 「ライトライン」の開業効果は人口の増加や地価の上昇にも表れており、宇都宮市の人口は市全体では減少傾向にあるなか、LRT沿線では2012年からの12年間で8%強増加。また、栃木県が9月17日に発表した基準地価(7月1日時点)によると、住宅地の上昇率が最も高かった宇都宮市陽東6丁目付近、上昇率2位の陽東4丁目付近、上昇率3位の東宿郷3丁目付近はいずれも「ライトライン」の沿線にあたる。このように地域活性化にもつながることから全国各地からもLRTへの関心が高まっており、関連銘柄に注目したい。

●バリアフリーで環境にやさしい移動手段

 LRTは「Light Rail Transit(ライト・レール・トランジット)」の略称で、低床式車両(LRV)などを活用した次世代型路面電車システムのこと。LRVを利用しているので車両の床が低く、また停留場の改良により停留場と車両に段差が少ないことで、高齢者や車いす、ベビーカーでもスムーズに乗り降りすることができるなどのメリットがある。また、自動車が進入できない専用のレールを走行するため、渋滞に巻き込まれることなく時間に正確であることや、二酸化炭素(CO2)などの排気ガスを車両から排出しないことから環境にやさしい点なども注目されている。

 海外ではヨーロッパの各国やアメリカ、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、オーストラリア、中国などの都市で運行されている。国内でも富山市などで運行されており、街のシンボルになっている。

●コンパクトシティづくりの軸

 「ライトライン」の成功は、単に交通手段としてLRTを導入したということではなく、LRTを街づくりの軸に据えた「ネットワーク型コンパクトシティ(NCC)」化を目指したところにある。NCCとは中心市街地や駅周辺、産業や観光に魅力がある地域などを拠点として集約(コンパクト化)し、それらを利便性の高い公共交通などで連携(ネットワーク化)した都市のことで、これにより子どもから高齢者まで便利に暮らし続けることができる街づくりを目指しているという。

 宇都宮市は今後、「ライトライン」をJR宇都宮駅の西側に延伸する計画を立てており、25年度に軌道事業の特許申請を行い、30年代前半の開業を目指す。これが実現すると、JR宇都宮駅と東武宇都宮駅がLRTで結ばれることになり、更なる利便性の向上が期待されている。

●既に路面電車が走る街にもインパクト

 「ライトライン」のほかにも、06年に日本で初めてLRTが導入された「富山ライトレール」などの成功で、LRT導入を検討する自治体も出始めた。東京都江東区では、JR総武支線(越中島貨物線)の一部や明治通り沿いの東京都有地を活用し、亀戸・新木場間にLRTを整備する構想を策定。この20年ほど大きな動きはなかったが、24年3月に策定した「臨海部都市交通ビジョン」で構想の検討が盛り込まれたことで、再始動が期待されている。また、沖縄県那覇市は40年度の開業を目指してLRTの整備構想を打ち出した。

 更に、既に路面電車が走っている熊本市や広島市でもネットワークの充実に向けた取り組みが活発になっている。特に広島市ではこれまで駅前広場にあった路面電車の乗り場を、JR広島駅構内へと移す工事を進めており、来年春の完成を目指している。完成後はJRと市電の行き来がスムーズになり、これまで以上に街の発展に貢献しそうだ。

●LRTの関連銘柄

 このようにLRTに向けた社会の関心は高まっており、今後導入を検討する新たな自治体が出てくる可能性もある。関連銘柄には要注目だろう。

 宇都宮の「ライトライン」で注目されるのはIHI <7013> [東証P]だ。子会社新潟トランシス(新潟県聖籠町)が04年にボンバルディア・グループとLRVに関する技術供与契約を締結して以降、LRVを手掛けており、「ライトライン」にも車両を納入。そのほか富山市や岡山市、熊本市など数多くの自治体にLRVを納入した実績が豊富にある。また、明電舎 <6508> [東証P]は「ライトライン」に車両走行用の電力を供給する変電機器を担当しており、新設された4つの変電所のうち、3つの変電所(今泉、平出、清原)に設備を納入した。

 LRV車両で新潟トランシスと肩を並べるのが阪急阪神ホールディングス <9042> [東証P]傘下のアルナ車両(大阪府摂津市)だ。01年に純国産初となるLRV「リトルダンサー」シリーズを開発し、鹿児島市や愛媛県松山市などに採用された。その後もLRV車両のラインアップを拡充させ、愛知県豊橋市や富山市、長崎市、札幌市などに納入している。

 近畿車輛 <7122> [東証S]は、広島電鉄 <9033> [東証S]にLRVを納入しており、04年12月には国産初のフルフラットLRVを共同開発した。海外への納入実績も豊富にあり、米ロサンゼルスやシアトルなどへLRVを納入している。

 車両本体以外では、ナブテスコ <6268> [東証P]が鉄道車両向けのユニットブレーキやブレーキ制御装置、ドア開閉装置などを手掛けており、前述のアルナ車両の「リトルダンサー」の開発にも参画。特にドア開閉装置は新幹線から通勤形電車、LRVまで、あらゆる用途の車両に適応するラインアップをそろえているのが強みだ。

 東洋電機製造 <6505> [東証S]は、パンタグラフをはじめ主制御装置や補助電源装置など鉄道車両用のさまざまな電機品を手掛けており、ナブテスコ同様に「リトルダンサー」の開発に携わった経緯がある。また、近畿車が開発した国産初のフルフラットLRVの開発にも参画している。

 レシップホールディングス <7213> [東証S]は、バスや鉄道向け電装機器を手掛けており、LRTでは「富山ライトレール」にICカードシステムを納入した実績を有する。また、日本よりもLRTが浸透している米国でも運賃収受システムなどの受注実績がある。

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