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【市況】6月中旬までに一旦逆戻り~金融政策決定会合関連の注目銘柄【フィリップ証券】


 日本株に何が起こっているのだろうか? 日経平均株価は、6/17の安値3万7950円から19営業日目の7/11に4万2426円まで勢いよく上伸。ところが、その9営業日後の7/25には3万7825円の安値を付けてその期間の値上がり幅を全て吐き出した。上昇の要因は、指数連動ETFの分配金捻出の売りが控える中で先回りしていた先物売りが買い戻しを迫られたこと、夏のボーナス支給の新NISAへの投資、および10日に半導体ファウンドリ世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>の6月売上高が堅調だったことなどが挙げられる。

 流れの転換のきっかけは11日発表の6月の米消費者指数(CPI)の発表だった。その後、米大統領選におけるトランプ氏銃撃の暗殺未遂事件を契機として同氏が掲げる政策に沿った「トランプ・トレード」が活発化。これが半導体関連銘柄への売りに繋がった点が第1のポイントだろう。バイデン大統領が米大統領選撤退を発表後、米民主党の後継候補がハリス副大統領に予想以上の速さで一本化したことでトランプトレードの勢いも減退。これが第2のポイントだろう。

 上記の背景の下、国内では自民党有力政治家から金融政策正常化に係る異例の発言が相次いだことに加え、日銀金融政策決定会合で国債買い入れオペ半減と利上げ見通しの報道がなされた。低利の円調達から高金利通貨で運用する「円キャリートレード」の巻き戻しと見られる動きから、為替の急速な円高ドル安が進展。円売りヘッジ付きで日本株のロング(買い)ポジションをとっている海外投資家もポジションを解消したとみられる。

 米国ではナスダックS&P500指数の上昇をけん引してきた時価総額の大きいハイテク株の見通しが、好決算だったアルファベット<GOOGL>が売られたことで悪化。中国も、経済政策を決める重要会議「3中全会」が投資家の失望を買ったことに加え、政策金利の引き下げが人民元安を通じて資金流出を招いている。

 米大統領選挙年の夏場は、通常の「夏枯れ」に加えて政策の先行きへの不透明感から相場がこう着・調整局面になりやすい。2012、2016、2020年の株式市場もそのような感じだった。今年6月下旬~7月上旬の動きが異例だった面もあろう。J-REIT(不動産投資信託)の中には、産業ファンド投資法人 <3249> 、イオンリート投資法人 <3292> 、ヘルスケア&メディカル投資法人 <3455> 、いちごホテルリート投資法人 <3463> など、1・7月決算銘柄(7/29権利付き最終日)で予想分配金利回りが足元で5%超のものがある。日銀金融政策決定会合での利上げを懸念して足元売られている面もあるなか、利上げが実際に行われたとしても「ハト派的利上げ」とみなされる余地もありそうだ。これらの分配金権利落ちは、新NISAの成長投資枠で配当金・分配金目的での投資が検討されよう。



参考銘柄

ヘルスケア&メディカル投資法人 <3455>

・介護医療事業のシップヘルスケアホールディングス <3360> に加え、三井住友銀行、NECキャピタルソリューションを主要スポンサーとするヘルスケア特化型J-REIT。2017年11月にJ-REIT初の病院資産を取得。

・3/19発表の2024/1期(昨8-今1月)は、営業収益が前期(2023/7期)比横ばいの24.38億円、営業利益が同1.1%減の12.54億円、1口当たり分配金が同1.4%減の3285円(利益超過分配金を除けば同3.2%増の2919円)。利益超過分配金は減価償却費の20%方針。1月末現在48物件・稼働率100%。

・2024/7期(2-7月)会社計画は、営業収益が前期(2024/1期)比3.1%増の25.14億円、営業利益が同2.9%増の12.90億円、1口当たり分配金が同1.5%減の3235円。2025/1期までの会社予想分配金利回り(7/25終値)は5.11%、株式のPBRに相当するNAV(純資産)倍率が0.92倍。日銀金融政策決定会合を月末に控えて利上げ警戒から東証REIT指数が軟調に推移。分配金利回りは好機だろう。


フューチャー <4722>

・1989年設立。業務システムを中心として顧客企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を主に手がけており、ITコンサルティング&サービス事業およびビジネスイノベーション事業を展開する。

・7/23発表の2024/12期1H(1-6月)は、売上高が前年同期比16.3%増の329億円、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却費)が同14.7%増の79.45億円。売上比率86%のITコンサルティング&サービス事業は地域金融機関向け案件が堅調に推移。ビジネスイノベーション事業も営業黒字へ転換。

・通期会社計画は、売上高が前期比18.3%増の702億円、EBITDAが同13.2%増の170億円、年間配当が同2円増配の42円。融資支援システム「FutureBANK」は全国30行の地域金融機関に導入。生成AI(人工知能)組み込み検証進む。また、SBIホールディングス <8473> との業務提携に基づきSBI出資先の地銀中心に「次世代バンキングシステム」を導入。16日に安定稼働開始。地銀の成長を支える存在だ。


シーユーシー <9158>

・2014年にエムスリー <2413> 子会社として設立。「医療機関」(国内医療機関への経営支援および海外での足病・静脈疾患クリニック運営)、「ホスピス」、「居宅訪問看護」の3事業セグメントを営む。

・7/24発表の2025/3期1Q(4-6月)は、売上収益が前年同期比38.3%増の105.97億円、EBITDAが同55.0%増の19.21億円。医療機関は64%増収(44.03億円)、12%EBITDA増益。ホスピスは47%増収(32.68億円)、EBITDAが5.17億円(前年同期1900万円)。居宅訪問看護は6%増収、EBITDA10%減。

・2025/3通期会社計画は、売上収益が前期比29.9%増の429億円、EBITDAが同29.6%増の65億円(年間配当は無配)。居宅訪問看護は採用増が利益面で響くも、医療施設の後継者問題が深刻となる時代の潮流が同社のM&A支援報酬の増加にも反映。また、中小規模施設より利益率の高い50床規模施設の稼働率上昇がホスピス事業の成長後押し。エムスリー傘下による営業面での相乗効果が大きいだろう。

フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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