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【市況】高水準の裁定買い残を抱えたメジャーSQ週~日本株は波乱の予感も【フィリップ証券】


 「魔のメジャーSQ週」、「魔の水曜日」「波乱のメジャーSQ算出日」などは来るのだろうか? 3・6・9・12月の第2金曜日は先物(ラージとミニ)とオプションの期近限月の最終決済に係る特別清算値(SQ値)を決める「メジャーSQ」日。日経平均株価指数のSQ値はその金曜日の225銘柄の各々の始値(日経平均株価の始値ではない)の平均だ。6月限の先物とオプションの取引は前日の木曜日が取引最終日となる。

 市場参加者が固唾を飲んで見守ることになるのが、現物と先物の裁定取引(アービトラージ)のポジション動向である。5/31時点の「現物買い・先物売り」の裁定買い残は2兆5881億円、「現物売り・先物買い」の裁定売り残を差し引いた純買い残は2兆2404億円。これは2018年1月第4週以来の高水準に上る。裁定買い残維持のためには、売り建てている期近(6月限)の先物を買い決済して期先の限月の先物にロールオーバー(乗り換え)する必要がある。裁定取引の裁定買い残を解消すれば同時に現物買いも売り処分され、日経平均株価の下落要因となる。今回はそのような波乱の元になる残高を特に大きく抱え込んでしまっている。

 元々波乱を起こしやすい週に、日本時間で12日の夜間に5月の米CPI(消費者物価指数)、13日の早朝に米FOMC(連邦公開市場委員会)とパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長の会見、14日には日銀金融政策決定会合の結果発表と植田総裁の会見が行われる。発表前に相場が大きく売られていれば買い戻しの契機となり、逆に先に買われていれば些細なことでも売りの材料にされやすいという「相場(需給)のアヤ」にも要注意だろう。

 日銀金融政策決定会合については、植田総裁が6日、「金融政策の正常化を進めていく際には国債買い入れの減額が適当」との認識を示した。同じく6日、中村審議委員が「当面は現状の政策維持が妥当」とするなど、メンバーの中でも見方が一部分かれる。

 いずれにせよ、足元の国内債券市場(長期金利)は6月の国債大量償還月を控えて買いが入りやすい面がある。財務省による10年物と30年物の国債入札も強め(長期金利は低下方向)の結果だった。足元では長期金利上昇は銀行株の上昇要因となるものの、不動産株はじめ日本株全体の売り要因となりやすい。ただ、今月は3ヵ月毎の国債大量償還月に伴う債券買い需要、国債先物の最終受渡決済を控えて売り方の現物調達需要が債券市場を下支え(長期金利の上昇を抑制)しやすい面もある。

 5日に発表された4月の毎月勤労統計調査では、物価上昇分を差し引いた実質賃金が前年同月比0.7%減と25ヵ月連続減少となった。とはいえ、基本給にあたる所定内給与は同2.3%増と約30年ぶりの高い伸び率だ。実質賃金上昇と長期金利上昇が連動するようになれば、長期金利と株価の上昇も連動する好循環になる可能性大であり、実質賃金のプラス転換が大いに待たれよう。

フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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