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【特集】丸山義正(SMBC日興証券)が斬る ―どうなる?半年後の株価と為替―

 日米の株式相場が好調だ。日経平均株価は史上初めて4万円の大台を突破。S&P500種株価指数は5000ポイントの大台に乗せ、ダウ工業株30種平均も4万ドルに迫っている。AI(人工知能)、半導体関連ブームを背景に、資本市場に大量の資金が流入しているためだ。もっとも、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突は収束のメドがつかず、世界的なインフレもなお続く。中国経済の停滞懸念も強まっており、市場の先行き不透明感が払拭されたわけではない。アナリストやエコノミストなどの専門家は、「半年後の株価」や「半年後の為替」をどう見ているのか。インタビューを通じて、著名アナリストに予測してもらい、その背景を詳報する。第24回はSMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストに話を聞いた。

●丸山義正(まるやま・よしまさ)
SMBC 日興証券株式会社 金融経済調査部 チーフマーケットエコノミスト。1995年日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。大企業向け融資営業に従事した後、2001年より調査部にて日本経済及び産業構造、企業行動の分析を担当。BNPパリバ証券にて日本経済担当エコノミストを務め、伊藤忠商事にて米州及び日本を中心に新興国まで含むグローバルな経済、政治、金融市場の分析を担った後、2014年8月にSMBC日興証券に入社し、2016年4月より現職。

丸山義正氏の予測 4つのポイント
(1) 半年後の日経平均株価は4万円程度
(2) 半年後のS&P500種株価指数は5200ポイント程度
(3) 半年後の円相場は1ドル=145円程度
(4) 日本市場では半導体、自動車などのセクターに注目

――日米の株式相場が好調に推移しています。半年後(9月末)の日米株価の予測を教えてください。

丸山:私は半年後の日経平均株価を4万円程度(3万8000~4万2000円)だと予測しています。S&P500種株価指数は5200ポイント程度(5000~5500ポイント)だと見ています。

――足もとの数値から大きく動かないという予測ですね。米国株の予測の背景を教えてください。

丸山:米株式相場を押し上げた要因には一時的なものが多くありました。例えば、金融当局が2022年まで新型コロナウイルスの感染拡大の経済への悪影響を抑制するために超低金利を続けていたことです。さらに、米国と中国との政治経済の摩擦を受けて半導体など製造業が国内生産に回帰。建設投資が大幅に増加していました。今年はこうした押し上げ要因がはげ落ち、株式相場にマイナス要因となります。このため、この半年は株価上昇が一服するでしょう。

 一方で米景気や株価が大きく減速することはありません。これまでの米景気の後退局面では、「企業心理が悪化して大規模なリストラを実施し、個人消費が低迷する」というパターンが繰り返されてきました。今回はコロナ禍での人手不足を経験した米企業がリストラに慎重で、消費が大きく落ち込む可能性は低いと考えています。

――市場関係者の間では、米労働需給の逼迫を受けた賃金インフレを懸念する向きもあります。

丸山:米当局がインフレ抑制に手間取っているのは確かです。ただ、米経済はこれまでの高成長からノーマルな成長に変わっていきます。すでに米物価は沈静化しつつあり、近い将来に期待インフレ率が2%程度まで下がっていくでしょう。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、インフレが落ち着いてくれば、たとえ雇用関連の指標が強くても金利を引き下げるという立場です。利下げが始まれば株式相場の押し上げにつながります。

――米国は11月に大統領選を控えています。米大統領選挙の年は株式が好調になる傾向があると言われます。

丸山:民主党、共和党のどちらの大統領候補が勝利しても、来年1月までは米株式相場は上昇するでしょう。その後は大統領の政策次第です。バイデン大統領が勝った場合は、米利下げの影響と相まって米株価はある程度上昇していくでしょう。トランプ前大統領が勝った場合は、政策に不透明要因が残り、株式相場にも何らかの影響を及ぼすリスクが残ります。

――外国為替市場の動きは株式市場にも大きな影響があります。半年後の円ドル相場をどう見ていますか。

丸山:私は1ドル=145円程度だと考えています。FRBは6~7月から年3回利下げする見通しです。日銀は年度内に1回、来年度に1回利上げすると見ています。日米の金融政策の方向性が違うため、円はドルに対してやや上昇する見通しです。

――日本の株式相場も今後半年間は現状維持と予想されています。理由を教えてください。

丸山:日本はすでに「失われた30年」の間続いたデフレスパイラルから脱却しました。賃金と物価が上昇し、企業収益が増えやすい環境が整いつつあります。実質賃金も年内にプラスに転じていくでしょう。デフレ脱却を受けて、今後は中期的にも一定の経済成長が見込めます。こうした日本経済の復活は、株価にも反映されていくでしょう。

 ただ、今年は製造業の株価を押し上げてきた円安が円高に転じる可能性が高いと考えています。円高になれば、製造業の株価を押し上げてきた円安効果がはげ落ち、株式相場にはマイナスになります。このため、この半年間は株価の大きな上昇は見込めません。日米ともに、この半年は株価上昇の端境期で、その後はさらに株価が一段高を目指すと予想しています。

――注目している株式市場のセクターを教えてください。

丸山:日本株では半導体、自動車です。好不況を繰り返す半導体市況の「シリコンサイクル」は足もとで回復する途上にあります。今後1~2年は回復が続くとみられます。半導体製造装置や半導体関連の素材産業、化学など関連株には買いが続くでしょう。過度な円高・ドル安にならない前提であれば、自動車にも注目です。電気自動車(EV)が失速しているのは、この分野で出遅れた日本企業にとってはむしろプラスに働くと考えています。

 米国株も半導体セクターは日本同様、買い優勢だと考えられます。これに加えて、コロナ禍で一足早く在庫調整を終えた製造業の業績が上向くとみています。ただ、製造業の中でも、自動車は売れすぎの反動でやや業績は下押し圧力がかかるでしょう。

――2024年から新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、多くの個人投資家が株式市場に参入してきました。投資の初心者へのアドバイスをお願いします。

丸山:日本は長い低迷期を経て、物価や賃金が上昇するようになり、名目GDP(国内総生産)が前年比で持続的なプラスに転じました。物価が上がれば企業収益も増えやすくなり、株価も上がりやすくなります。このため、個人投資家もある程度、安心して投資できる経済環境が整ったと言えるでしょう。まずは日本株や米国株のインデックスファンドなどに積み立て投資することから始めてはいかがかと思います。

【タイトル】

(※聞き手は日高広太郎)

◆日高広太郎(ジャーナリスト、広報コンサルティング会社代表)
【タイトル】
1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京本社の社会部に配属される。小売店など企業ニュースの担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京本社の経済部に配属。財務省、経済産業省、国土交通省、農水省、日銀、メガバンクなどを長く担当する。日銀の量的緩和解除に向けた政策変更や企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。第一次安倍内閣時の独ハイリゲンダムサミット、鳩山政権時の米ピッツバーグサミットなどでは日経新聞を代表して同行取材、執筆。東日本大震災の際には復興を担う国土交通省、復興庁のキャップを務めた。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年8月に東証1部上場(現プライム市場)のB to B企業に入社し、広報部長。2019年より執行役員。2022年に広報コンサルティング会社を設立し、代表に就任。ジャーナリストとしても記事を複数連載中。2022年5月に著書「B to B広報 最強の戦略術」(すばる舎)を出版。内外情勢調査会の講師も務め、YouTubeにて「【BIZ】ダイジェスト 今こそ中小企業もアピールが必要なワケ」が配信中。



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