【市況】高値圏レンジ相場~インフレ色の強い物色へシフトか【フィリップ証券】
「暑さ寒さも彼岸まで」と言われる中で彼岸の期間中の3/22に付けた年初来高値4万1087円は当面の相場の転換点となるのだろうか? 人間の人生が遠い過去に影響されるかのように、日経平均株価も1989年大納会(12/29)の終値3万8915円および同日高値3万8957円は当面の期間、相場レンジ中心値として機能する可能性があるだろう。
銀行の日銀当座預金へのペナルティ金額の徴収だったマイナス金利が解除されたこと、公示地価の33年ぶりの高い上昇率、更に春闘で33年ぶりの高さとなる賃上げ率と、日本経済および日本株市場を中長期的に押し上げる内在的なポジティブ要因は今後強まりこそすれ、弱まることは当面想定されにくい。それでも、外部環境である海外要因は無視できないところだ。
第1に、地政学リスクの高まりである。イスラエル軍による親イラン組織・イラン大使館を標的としたシリア空爆でイランの報復が懸念されるほか、イスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への攻撃で食料支援活動を行ってきた国際的NGO(非政府組織)スタッフが死亡したことで後ろ盾である米国政府もイスラエル政府を非難。中東の原油供給への影響から原油価格が上昇。また、ウクライナ情勢も、モスクワでの大規模テロ事件を契機にロシアがウクライナ主要都市へ攻撃を激化。
それらを背景に金価格が高騰している。大阪取引所の金先物価格は円安プラス効果もあり、3/4に1グラム1万円の歴史的高値を超えたばかりで4/4に1万1200円台まで上昇加速。金利情勢に関わりなく実物資産の価値が顕在化の様相だ。
第2に、米中における景況感の急速な改善が相場の流れを変えている。3月の米国ISM(供給管理者協会)製造業景気指数が経済活動拡大・縮小の境目50を1年半ぶりに超えたことに加え、国家統計局発表の3月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)も50.8と、昨年3月以来高水準となった。米国では今後の物価上昇圧力への波及、および米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げへの影響が半導体関連や大型ハイテク株を中心とした米国株へネガティブに働くことが懸念される。
他方、不動産不況の先が見えないとして大きく売られていた中国株はその反動も相まって予想外のリバウンド局面を迎える可能性もあろう。その辺りの動向も、日本株の物色動向を大きく左右する可能性がありそうだ。
関連銘柄
TOTO<5332> ※中国経済関連
・1917年に現ノリタケカンパニーリミテド<5331>から衛生陶器事業を分離独立。温水洗浄便座「ウォッシュレット」やバス・キッチン・洗面商品が主製品。日本住設、海外住設、新領域の3事業を営む。
・1/31発表の2024/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比0.5%減の5247億円、営業利益が同24.5%減の329億円。日本住設事業(売上比率68%)が同3%増収・14%営業増益だったものの、海外住設事業(同27%)が売上横ばい・38%営業減益、新領域事業も同31%減収・55%営業減益。
・通期会社計画は、売上高が前期比2.7%増の7200億円。営業利益が同4.3%減の470億円、年間配当が同横ばいの100円。中国大陸事業(9M売上比率12%)が中国不動産市況低迷および在庫調整に伴い9Mで前年同期比52%営業減益も、中国経済は国家統計局発表の3月の製造業購買担当者指数(PMI)が50.8と活動拡大・縮小の境目50を超えて1年ぶり高水準と底入れから回復の道筋。
ロイヤルホールディングス<8179> ※賃上げ関連
・1951年に日本航空国内線と同時に福岡空港で機内食搭載と喫茶営業開始。ファミレス「ロイヤルホスト」や天丼「てんや」展開のほか、「リッチモンドホテル」運営や機内食も。双日<2768>が筆頭株主。
・2/14発表の2023/12通期は、売上高が前期比33.6%増の1389億円、経常利益が同2.4倍の52.66億円。外食事業(売上比率44%)は、同16%増収・8%経常増益(42億円)。コントラクト事業(同31%)は同88%増収・82%経常増益、ホテル事業(同21%)は同27%増収・経常利益2.3倍と伸長。
・2024/12通期会社計画は、売上高が前期比6.0%増の1473億円、経常利益が同8.2%増の57億円、年間配当が同8円増配の28円。3月既存店売上高はロイヤルホストが前年比5.4%増、てんやが同3.2%増と堅調。4日発表の春闘賃上げ率が全体5.24%と33年ぶり高水準。ファミレス顧客層も、サイゼリヤやガストなどの低価格帯店舗からロイヤルホストなどの中高価格帯店舗へシフトしている面もあろう。
スカパーJSATホールディングス<9412> ※日米首脳会談の防衛関連
・2007年にスカイパーフェクト・コミュニケーションズとジェイサットが経営統合。衛星通信サービスと放送事業者へ衛星回線提供「宇宙事業」、通信衛星・光通信回線の放送(スカパー!)関連「メディア事業」を営む。
・2/7発表の2024/3期9M(4-12月)は、営業収益が前年同期比2.7%増の910億円、営業利益が同22.9%増の205億円。宇宙事業は営業収益が同10%増の427億円、営業利益が同30%増の39億円と業績を牽引した。メディア事業は営業収益が同3%減の483億円、営業利益が同2%減の41億円。
・通期会社計画を上方修正。グローバル・モバイルや国内衛星ビジネスの伸長を受けて営業収益を前期比0.3%増の1215億円(従来計画1210億円)、営業利益を同12.0%増の250億円(同:225億円)とした。年間配当は同横ばいの20円で据え置き。米国防総省は4/2、宇宙空間で民間企業の力を総合し抑止力を高める「商業宇宙統合戦略」を発表。同社は衛星を使う「宇宙状況監視(SSA)」で協力方針。
カナモト<9678> ※北海道・ラピダス関連
・1964年に北海道室蘭市で設立。建機レンタル・販売大手として北海道を基盤に広域展開。日本以外でも豪州、中国、ベトナム、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピンで事業を展開する。
・3/8発表の2024/10期1Q(11-1月)は、売上高が前年同期比1.2%増の501億円、営業利益が同3.6%減の29.85億円。中古建機販売が適正資産構成の観点から減収も建機レンタルは各種大型プロジェクト進行に加えインフラ整備、防災対策工事など需要堅調。海外事業等出遅れが響き減益。
・通期会社計画は、売上高が前期比4.0%増の2053億円、営業利益が同17.9%増の141億円、年間配当が同横ばいの75円。経済産業省は4/2、国内で最先端半導体の製造を目指すラピダスに24年度で最大5900億円の支援(累計で最大9200億円)を発表。5365億円が北海道千歳工場の建設費や極端紫外線(EUV)露光装置など導入費他に充てる見通し。北海道基盤の同社へ追い風となろう。
※フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。
株探ニュース
銀行の日銀当座預金へのペナルティ金額の徴収だったマイナス金利が解除されたこと、公示地価の33年ぶりの高い上昇率、更に春闘で33年ぶりの高さとなる賃上げ率と、日本経済および日本株市場を中長期的に押し上げる内在的なポジティブ要因は今後強まりこそすれ、弱まることは当面想定されにくい。それでも、外部環境である海外要因は無視できないところだ。
第1に、地政学リスクの高まりである。イスラエル軍による親イラン組織・イラン大使館を標的としたシリア空爆でイランの報復が懸念されるほか、イスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への攻撃で食料支援活動を行ってきた国際的NGO(非政府組織)スタッフが死亡したことで後ろ盾である米国政府もイスラエル政府を非難。中東の原油供給への影響から原油価格が上昇。また、ウクライナ情勢も、モスクワでの大規模テロ事件を契機にロシアがウクライナ主要都市へ攻撃を激化。
それらを背景に金価格が高騰している。大阪取引所の金先物価格は円安プラス効果もあり、3/4に1グラム1万円の歴史的高値を超えたばかりで4/4に1万1200円台まで上昇加速。金利情勢に関わりなく実物資産の価値が顕在化の様相だ。
第2に、米中における景況感の急速な改善が相場の流れを変えている。3月の米国ISM(供給管理者協会)製造業景気指数が経済活動拡大・縮小の境目50を1年半ぶりに超えたことに加え、国家統計局発表の3月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)も50.8と、昨年3月以来高水準となった。米国では今後の物価上昇圧力への波及、および米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げへの影響が半導体関連や大型ハイテク株を中心とした米国株へネガティブに働くことが懸念される。
他方、不動産不況の先が見えないとして大きく売られていた中国株はその反動も相まって予想外のリバウンド局面を迎える可能性もあろう。その辺りの動向も、日本株の物色動向を大きく左右する可能性がありそうだ。
関連銘柄
TOTO<5332> ※中国経済関連
・1917年に現ノリタケカンパニーリミテド<5331>から衛生陶器事業を分離独立。温水洗浄便座「ウォッシュレット」やバス・キッチン・洗面商品が主製品。日本住設、海外住設、新領域の3事業を営む。
・1/31発表の2024/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比0.5%減の5247億円、営業利益が同24.5%減の329億円。日本住設事業(売上比率68%)が同3%増収・14%営業増益だったものの、海外住設事業(同27%)が売上横ばい・38%営業減益、新領域事業も同31%減収・55%営業減益。
・通期会社計画は、売上高が前期比2.7%増の7200億円。営業利益が同4.3%減の470億円、年間配当が同横ばいの100円。中国大陸事業(9M売上比率12%)が中国不動産市況低迷および在庫調整に伴い9Mで前年同期比52%営業減益も、中国経済は国家統計局発表の3月の製造業購買担当者指数(PMI)が50.8と活動拡大・縮小の境目50を超えて1年ぶり高水準と底入れから回復の道筋。
ロイヤルホールディングス<8179> ※賃上げ関連
・1951年に日本航空国内線と同時に福岡空港で機内食搭載と喫茶営業開始。ファミレス「ロイヤルホスト」や天丼「てんや」展開のほか、「リッチモンドホテル」運営や機内食も。双日<2768>が筆頭株主。
・2/14発表の2023/12通期は、売上高が前期比33.6%増の1389億円、経常利益が同2.4倍の52.66億円。外食事業(売上比率44%)は、同16%増収・8%経常増益(42億円)。コントラクト事業(同31%)は同88%増収・82%経常増益、ホテル事業(同21%)は同27%増収・経常利益2.3倍と伸長。
・2024/12通期会社計画は、売上高が前期比6.0%増の1473億円、経常利益が同8.2%増の57億円、年間配当が同8円増配の28円。3月既存店売上高はロイヤルホストが前年比5.4%増、てんやが同3.2%増と堅調。4日発表の春闘賃上げ率が全体5.24%と33年ぶり高水準。ファミレス顧客層も、サイゼリヤやガストなどの低価格帯店舗からロイヤルホストなどの中高価格帯店舗へシフトしている面もあろう。
スカパーJSATホールディングス<9412> ※日米首脳会談の防衛関連
・2007年にスカイパーフェクト・コミュニケーションズとジェイサットが経営統合。衛星通信サービスと放送事業者へ衛星回線提供「宇宙事業」、通信衛星・光通信回線の放送(スカパー!)関連「メディア事業」を営む。
・2/7発表の2024/3期9M(4-12月)は、営業収益が前年同期比2.7%増の910億円、営業利益が同22.9%増の205億円。宇宙事業は営業収益が同10%増の427億円、営業利益が同30%増の39億円と業績を牽引した。メディア事業は営業収益が同3%減の483億円、営業利益が同2%減の41億円。
・通期会社計画を上方修正。グローバル・モバイルや国内衛星ビジネスの伸長を受けて営業収益を前期比0.3%増の1215億円(従来計画1210億円)、営業利益を同12.0%増の250億円(同:225億円)とした。年間配当は同横ばいの20円で据え置き。米国防総省は4/2、宇宙空間で民間企業の力を総合し抑止力を高める「商業宇宙統合戦略」を発表。同社は衛星を使う「宇宙状況監視(SSA)」で協力方針。
カナモト<9678> ※北海道・ラピダス関連
2624 円 (4/5終値)
・1964年に北海道室蘭市で設立。建機レンタル・販売大手として北海道を基盤に広域展開。日本以外でも豪州、中国、ベトナム、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピンで事業を展開する。
・3/8発表の2024/10期1Q(11-1月)は、売上高が前年同期比1.2%増の501億円、営業利益が同3.6%減の29.85億円。中古建機販売が適正資産構成の観点から減収も建機レンタルは各種大型プロジェクト進行に加えインフラ整備、防災対策工事など需要堅調。海外事業等出遅れが響き減益。
・通期会社計画は、売上高が前期比4.0%増の2053億円、営業利益が同17.9%増の141億円、年間配当が同横ばいの75円。経済産業省は4/2、国内で最先端半導体の製造を目指すラピダスに24年度で最大5900億円の支援(累計で最大9200億円)を発表。5365億円が北海道千歳工場の建設費や極端紫外線(EUV)露光装置など導入費他に充てる見通し。北海道基盤の同社へ追い風となろう。
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当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提供している証券会社との契約に基づき対価を得る場合があります。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。
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