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【特集】「責任者を出せ」から「ありがとうの感謝状」で、おいしい優待投資を実践
すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 ココイチさんの場合-第2回
第1回記事「前半快走・後半足踏みの今年に、高級車2台+αを稼いだ日替わりヒーロー戦法」を読む
「従業員の態度が良くない。エリアマネージャーと話をさせてもらえないか」
登場中のココイチさん(ハンドルネーム)は、ある時、牛丼チェーン店『すき家』のレジカウンターで、店のスタッフに伝えた。精算を行う際、スタッフの対応に「問題あり」と思うところがあり、このまま見過ごすと、自分のみならず他の利用者も同じように不快に感じることもあるだろうと、行動に出た。
ココイチさんが同店を訪れたのは、運営するゼンショーホールディングス<7550>の株主優待券を利用するためだった。店側の対応が悪ければ、同社株の売却も検討していた。
だが、その後の同店の対応に感心し、こうした対応ができる企業は成長を期待できると考え、買い増しに踏み切った。その判断が吉と出て、ココイチさんは同社株で今年(2023)に300万円のリターンを獲得できた。
このゼンショHDは、ココイチさんの投資戦略の中では長期で成長を目指す2軍選手の位置づけだった。前回の記事で紹介したように、1軍選手は上昇モメンタム(騰勢)に乗り、短期で成果を示す力を秘める銘柄だ。
これに対して2軍銘柄のほとんどは、株主優待や配当以外には特段の取り柄がないような集団だ。そんな彼らを、独特の取り組みで育て上げ、1軍に昇格させていくのがココイチ流だ。
今年前半に「月間200万円のリターン獲得」を連続で達成した牽引役は、東京エレクトロン<8035>やアドバンテスト<6857>のような1軍銘柄だったが、2軍に置いていたゼンショHDの活躍も見逃せない。
基本は優待や配当期待の2軍選手を、やがては売買益も期待できる1軍選手に変身させるココイチ流の中長期投資法を見ていこう。
■ゼンショHDの月足チャート(16年10月~)
苦言を真摯に受け止め、改善したのを評価
ココイチさんがゼンショHDに投資をしたのは、約10年前の13年頃だ。株主優待の内容や、優待取りを目指して株価が動意づくのを期待して取得した。
だが、料理の味にマンネリ化を感じ、かつ減益続きで株価が停滞したこともあって、いったん保有株を半減させていた。その状況に転機をもたらしたのが、コロナ禍前の19年頃。材料の1つになったのが、冒頭に触れた一件だった。
すぐにエリアマネージャーが面会に応じ、真摯な態度でココイチさんに謝罪した。その後、スタッフの対応も改善されていき、サービス全般の質も向上していく様子がうかがえた。
それに好感して買い増したゼンショHD株は、アフターコロナの中で業績がV字回復、23年に入ってからは株価の上昇速度を強めたことで、ココイチさんは300万円のリターンを手にすることができた。
■ゼンショHDの買い増しに至った流れ
「物言うユーザー」、幅広く、そして褒めることもする
一歩間違えば、やっかいなクレーマーと受け取られ兼ねないようなことでも、ココイチさんは、自分が「何かおかしい」と思ったら、忌憚なく感じたことや意見を相手に伝える。
ただし、相手にとって耳の痛い内容だけではなく、良かったと思えることも伝える。時には、企業の幹部宛に手書きの感謝状を送ることもあるという。
現在、ボランティアで企業や行政などのアドバイザーを務めているココイチさんは、企業が顧客の支持を得るために配慮しなくてはならないことを常に考え続けている。
通常、優待株投資では、優待内容の改悪以外は関心が薄くなりがちだ。だが、ココイチさんはコンサルタントの視点で、経営姿勢に課題や改革すべきところはないか、逆に強みや優れていることなどにも目を配る。
2軍の観察では、経営者や従業員の対応を重視
2軍銘柄の多くは飲食やホテル関連が占めており、全体では約100となる。
飲食やホテルが多いのは、経済地理学を学び、その土地ごとの経済的な優位性をよく知る本人にとって、良し悪しが見極めやすいからだ。例えば、若者が多いエリアならば、その客層にマッチしたサービスを提供できているかなどを見定めていく。
■ココイチさんが受け取った株主優待の一部
撮影:本人
企業を見極める際には、「ハード面より、ソフト面の質が高いかが大事」と本人は話す。
飲食店やホテルの場合、提供する食事の味やサービスの質は、経営者の姿勢や従業員の振る舞いに表れているというのがココイチさんの考えだ。
それらの確認で、ココイチさんは独自のやり方で現場ウォッチングに精を出す。貴重な情報を引き出すために、本人が意識し工夫していることは次の通りだ。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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編集・構成/真弓重孝(株探編集部)、文・イラスト/福島由恵(ライター)
■ココイチさん(ハンドルネーム・60代・男性)のプロフィール:
元社会科教師で、定年から3年前倒しで早期退職した後、現在は経営アドバイザー等を無償で行いながら株式投資にいそしむ。40歳から200万円を元手に投資を始め、退職金2000万円を投入して信用取引を始めた頃から運用成果が向上していく。
累積投資元本約8000万円を大きく膨らませ、リターンの一部の5000万円を妻にわたし、かつ自宅や自動車を購入し、足元で残った自分の運用資産は約1億6000万円に。うち半分はファンドラップに預けてお任せ運用している。投資手法は株価上昇モメンタムを生かした短期投資と、優待株中心の中長期投資の2本柱で進行中。
ハンドルネームは「愛犬ココが一番」に由来する。
元社会科教師で、定年から3年前倒しで早期退職した後、現在は経営アドバイザー等を無償で行いながら株式投資にいそしむ。40歳から200万円を元手に投資を始め、退職金2000万円を投入して信用取引を始めた頃から運用成果が向上していく。
累積投資元本約8000万円を大きく膨らませ、リターンの一部の5000万円を妻にわたし、かつ自宅や自動車を購入し、足元で残った自分の運用資産は約1億6000万円に。うち半分はファンドラップに預けてお任せ運用している。投資手法は株価上昇モメンタムを生かした短期投資と、優待株中心の中長期投資の2本柱で進行中。
ハンドルネームは「愛犬ココが一番」に由来する。
第1回記事「前半快走・後半足踏みの今年に、高級車2台+αを稼いだ日替わりヒーロー戦法」を読む
「従業員の態度が良くない。エリアマネージャーと話をさせてもらえないか」
登場中のココイチさん(ハンドルネーム)は、ある時、牛丼チェーン店『すき家』のレジカウンターで、店のスタッフに伝えた。精算を行う際、スタッフの対応に「問題あり」と思うところがあり、このまま見過ごすと、自分のみならず他の利用者も同じように不快に感じることもあるだろうと、行動に出た。
ココイチさんが同店を訪れたのは、運営するゼンショーホールディングス<7550>の株主優待券を利用するためだった。店側の対応が悪ければ、同社株の売却も検討していた。
だが、その後の同店の対応に感心し、こうした対応ができる企業は成長を期待できると考え、買い増しに踏み切った。その判断が吉と出て、ココイチさんは同社株で今年(2023)に300万円のリターンを獲得できた。
このゼンショHDは、ココイチさんの投資戦略の中では長期で成長を目指す2軍選手の位置づけだった。前回の記事で紹介したように、1軍選手は上昇モメンタム(騰勢)に乗り、短期で成果を示す力を秘める銘柄だ。
これに対して2軍銘柄のほとんどは、株主優待や配当以外には特段の取り柄がないような集団だ。そんな彼らを、独特の取り組みで育て上げ、1軍に昇格させていくのがココイチ流だ。
今年前半に「月間200万円のリターン獲得」を連続で達成した牽引役は、東京エレクトロン<8035>やアドバンテスト<6857>のような1軍銘柄だったが、2軍に置いていたゼンショHDの活躍も見逃せない。
基本は優待や配当期待の2軍選手を、やがては売買益も期待できる1軍選手に変身させるココイチ流の中長期投資法を見ていこう。
■ゼンショHDの月足チャート(16年10月~)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
苦言を真摯に受け止め、改善したのを評価
ココイチさんがゼンショHDに投資をしたのは、約10年前の13年頃だ。株主優待の内容や、優待取りを目指して株価が動意づくのを期待して取得した。
だが、料理の味にマンネリ化を感じ、かつ減益続きで株価が停滞したこともあって、いったん保有株を半減させていた。その状況に転機をもたらしたのが、コロナ禍前の19年頃。材料の1つになったのが、冒頭に触れた一件だった。
すぐにエリアマネージャーが面会に応じ、真摯な態度でココイチさんに謝罪した。その後、スタッフの対応も改善されていき、サービス全般の質も向上していく様子がうかがえた。
それに好感して買い増したゼンショHD株は、アフターコロナの中で業績がV字回復、23年に入ってからは株価の上昇速度を強めたことで、ココイチさんは300万円のリターンを手にすることができた。
■ゼンショHDの買い増しに至った流れ
アルバイト社員が使えるはずの優遇措置を、「使えない」と間違った対応 |
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正社員にアルバイト社員の間違いを指摘しても、苦笑いしているだけで謝りもなし |
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店長が休暇中だったので、エリアマネージャーとの面談を要求 |
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後日、エリアマネージャーが面談に応じ、丁寧なお詫びと今後の改善の意向が示される |
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後日、社員の対応に改善が見られ、サービス全体も向上 |
「物言うユーザー」、幅広く、そして褒めることもする
一歩間違えば、やっかいなクレーマーと受け取られ兼ねないようなことでも、ココイチさんは、自分が「何かおかしい」と思ったら、忌憚なく感じたことや意見を相手に伝える。
ただし、相手にとって耳の痛い内容だけではなく、良かったと思えることも伝える。時には、企業の幹部宛に手書きの感謝状を送ることもあるという。
現在、ボランティアで企業や行政などのアドバイザーを務めているココイチさんは、企業が顧客の支持を得るために配慮しなくてはならないことを常に考え続けている。
通常、優待株投資では、優待内容の改悪以外は関心が薄くなりがちだ。だが、ココイチさんはコンサルタントの視点で、経営姿勢に課題や改革すべきところはないか、逆に強みや優れていることなどにも目を配る。
2軍の観察では、経営者や従業員の対応を重視
2軍銘柄の多くは飲食やホテル関連が占めており、全体では約100となる。
飲食やホテルが多いのは、経済地理学を学び、その土地ごとの経済的な優位性をよく知る本人にとって、良し悪しが見極めやすいからだ。例えば、若者が多いエリアならば、その客層にマッチしたサービスを提供できているかなどを見定めていく。
■ココイチさんが受け取った株主優待の一部
撮影:本人
企業を見極める際には、「ハード面より、ソフト面の質が高いかが大事」と本人は話す。
飲食店やホテルの場合、提供する食事の味やサービスの質は、経営者の姿勢や従業員の振る舞いに表れているというのがココイチさんの考えだ。
それらの確認で、ココイチさんは独自のやり方で現場ウォッチングに精を出す。貴重な情報を引き出すために、本人が意識し工夫していることは次の通りだ。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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