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【特集】政府本腰で上昇機運に乗る、脱炭素本命の「水素関連株」が真価発揮へ <株探トップ特集>

9月25日に開催された水素閣僚会議で、30年までに世界で1億5000万トンの水素需要を創出する目標が打ち出された。これをきっかけに取り組みが加速する可能性があり、関連銘柄から目が離せない。

―30年までに世界で1.5億トンの需要を創出、目標設定で取り組み加速へ―
 
 3日の米株式市場で米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めの長期化観測が一段と強まったことを背景にNYダウが約4カ月ぶりの安値に沈み、この日の東京市場ではリスク回避の動きから日経平均株価が大幅続落した。株式相場に対する先行き不安が高まるなか、変わらないのが国際的な 脱炭素化の潮流だ。

 経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は9月25日、燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しないことから脱炭素に向けた燃料として期待される 水素の利用拡大に向けた国際協力を推進するための「第6回水素閣僚会議」を開催した。この国際会議では、2030年までに世界で1億5000万トンの水素需要を創出する目標などを設定。22年の会議で示された30年までに水素の供給量を年9000万トンとする目標に、需要量の目標が加わったことで各企業の取り組みが加速する可能性があり、関連株に目を配っておきたい。

●カーボンニュートラル実現に必要不可欠

 CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる カーボンニュートラルを実現するためには、水素の利用拡大が一つの重要な手段となり、特に産業及び運輸といった排出削減が困難な業界や電力業界で有効とされる。そのためには、現在計画されている再生可能由来及び低炭素水素製造プロジェクトの着実な実施と追加的なプロジェクトを創出していくことが必要不可欠となるが、国際エネルギー機関(IEA)の「Global Hydrogen Review 2023」によると、建設段階または最終投資決定まで進んだプロジェクトはわずか4%。この主な要因となっているのが需要の不確実性とされる。

 こうしたことから、今回の会議では30年までに1億5000万トンの需要を生み出し、そのうち9000万トンまで再生可能由来及び低炭素水素で賄われる(内訳としてはおおよそ発電が40%、製鉄や化学をはじめとする産業部門が38%、輸送で20%、及びその他)という目標を追加した。この目標達成には、水素の供給コストを化石燃料と同程度の水準まで低減させることや、インフラの不足を解消する支援スキームの整備の加速や更なる拡充が欠かせず、今後は水素関連の投資が本格化しそうだ。

●着々と進むサプライチェーンの構築

 水素のサプライチェーン(供給網)構築への取り組みとしては、川崎重工業 <7012> [東証P]が9月27日、川崎臨海部の水素需要の開発を通じた地域経済の持続的な発展と、国内におけるカーボンニュートラルの早期実現を目指すため、川崎市と連携協定を締結した。同社は液化水素運搬船など水素関連機器の大型化を担っているほか、商用化実証でも長期的に安価で安定したエネルギーを供給する大規模液化水素サプライチェーンの構築でも重要な役割が期待されており、今後の動向が注目される。

 三菱重工業 <7011> [東証P]は9月20日、高砂製作所(兵庫県高砂市)で整備を進めてきた水素の製造から発電までにわたる技術を世界で初めて一貫して検証できる「高砂水素パーク」の本格稼働を開始したと発表。今後は次世代水素製造技術の導入を順次拡充するとともに、ガスタービン実機での水素混焼・専焼(100%水素)の実証を行うことで、製品信頼性の向上を図るという。

 三井化学 <4183> [東証P]とIHI <7013> [東証P]、三井物産 <8031> [東証P]、関西電力 <9503> [東証P]は8月30日、大阪の臨海工業地帯を拠点とした水素・ アンモニアのサプライチェーン構築に向けた共同検討に関する覚書を締結したと発表。4社の経験や知見を結集し、関西や瀬戸内地域に水素・アンモニアを供給する体制の整備を目指す構えだ。

 エア・ウォーター <4088> [東証P]と戸田工業 <4100> [東証P]は8月8日、北海道豊富町で未利用天然ガスを活用した地域CO2フリー水素サプライチェーンの構築に向けた取り組みを開始したことを明らかにした。25年度をメドに水素製造システムを確立させ、水素製造コストの低減と水素サプライチェーンのクリーン化を目指すとしている。

 トーヨーカネツ <6369> [東証P]と岩谷産業 <8088> [東証P]は7月19日、液化水素を貯蔵する円筒形の大型タンクを共同開発すると発表した。6月に改定された経産省策定の「水素基本戦略」では、発電事業用水素発電の本格導入開始は30年ごろとされ、その実現に向けた大規模サプライチェーン構築では大型液化水素貯槽が重要なインフラとなることから、容量5万立方メートルのタンクの開発を目指すとしている。

●テクニスコ、スクリンなどにも注目

 このほかの関連銘柄としては、テクニスコ <2962> [東証S]に注目したい。岡山大学は9月14日、室温で動作可能な高感度水素センサーを同社と共同開発したと発表。従来型はセンサー自体を数百度以上に加熱する必要があった。開発したセンサーは、消費電力を抑えて非加熱でのガス漏れ検知ができるといった特長があり、水素自動車や燃料電池などのクリーンな水素エネルギーへの応用が期待される。

 SCREENホールディングス <7735> [東証P]は9月14日、彦根事業所(滋賀県彦根市)に水素関連事業の製品を生産する新棟を建設すると発表した。新棟では水素をつくる際に使う水電解装置の中核部品である「セルスタック」や、燃料電池に使われる膜電極接合体(MEA)と呼ばれる部材を生産する計画で、水素関連を新たな成長の柱にしたい考えだ。
 
 レゾナック・ホールディングス <4004> [東証P]と三菱化工機 <6331> [東証P]、岐阜大学は9月14日、アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステムの共同研究をスタートしたことを明らかにした。これは燃焼器用改質器ユニットなどを開発するもので、レゾナックはアンモニア分解触媒の開発などを担い、化工機は実用機の設計・製作・実証試験などを担当するとしている。

 那須電機鉄工 <5922> [東証S]と日本フイルコン <5942> [東証S]、化工機の3社は、水素吸蔵合金配送システムの認知度向上と実証実験を目的に、8月26日に開催された「南多摩駅夕涼み会2023」に水素を利用したクリーン電源を提供した。水素吸蔵合金配送システムとは、製造した高純度の水素を専用のタンクに貯蔵し、電気を必要とする利用先まで運搬後、水素を再び取り出し、燃料電池を使って電力を供給・利用する一連のプロセス。なお、夕涼み会で那須鉄は吸蔵合金、吸蔵合金ボンベ、吸蔵合金ユニットの製作、フイルコンは水素を使って電気を発生させる可搬型燃料電池システムの製作、化工機は水素の製造と水素吸蔵合金配送システムへの供給を担当した。

 また、福島県南相馬市で水素燃料電池発電所の運用を開始したミライト・ワン <1417> [東証P]、水素分離膜モジュールを開発済みの日本精線 <5659> [東証P]、水素関連事業向け圧縮機を扱う加地テック <6391> [東証S]、液体水素の設備で使用される極低温バルブ類の開発・製品化・販売に注力する宮入バルブ製作所 <6495> [東証S]、高圧水素圧力計測機器を手掛ける長野計器 <7715> [東証P]、産業技術総合研究所とギ酸からの高圧水素製造装置の小型・実用化モデルに関する共同研究開発を進めている東京計器 <7721> [東証P]などのビジネス機会も広がりそうだ。

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