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【市況】インフレがもっと冷え込むとの見方にはリスクも留意

 今週発表の一連のインフレ指標はインフレの粘着性を示していたが、FRBにとってはまだ前進していると言えるとの指摘も出ている。大部分はガソリン価格上昇によるもので、市場はFRBへの見方を変えておらず、来週のFOMCは据え置きを確実視している状況。

 短期金融市場は年内あと1回の追加利上げを50%弱の確率で織り込んでいる。インフレが年末までに冷え込むというシナリオは一見、良さそうには見えるが、上手く行かないケースも多分にあるという。

 自動車価格を考えてみると、パンデミックにより半導体の供給が途絶えたため、新車の供給が大幅に制限され、中古車価格が高騰した。その後は半導体の供給が正常化し、新車の生産台数も回復したことで、中古車価格は下落している。水曜日に発表された米消費者物価指数(CPI)によると、先月の中古車・トラック価格は2022年1月の水準から10%下落。オークションでは中古車価格はさらに下落しており、マンハイム中古車価格指数はピーク時から18%下落している。さらに、新車との比較でパンデミック前の2019年の新車と中古車の価格差に戻るには、更に中古車価格は12%下落する必要があり、下落は今後さらに進む可能性があるという。

 ただし、自動車メーカーと全米自動車労組(UAW)の労使対立が続いており、それは確実なことではない。ストライキによってディーラーへの車の供給が減れば、中古車価格は再び上昇する可能性があるとも指摘している。

 住宅価格も冷え込みそうだ。米CPIの8月の家賃は前年比7.8%上昇したが、これは賃貸契約したばかりの人も、少し前に契約した人も含め、一般の賃借人が支払っている金額を反映している。そのため、新規の家賃の変化を捉えるには時間差があるが、新規契約の家賃の上昇率は大幅に低下しており、今後の米CPIでは、住宅インフレはより低くなることが予想されるという。

 しかし、他のサービス価格は逆に上昇する可能性がある。例えば米労働省は10月から医療保険の新しいデータを米CPIに取り入れる予定で、エコノミストは医療保険インフレのペースが上がると予想している。

 最後にガソリン価格の上昇がある。特にサウジとロシアによる減産を反映し、米国人がガソリン価格上昇を目の当たりにすれば、FRBがインフレとの闘いが終わりに近づいているとは言いづらくなる。エネルギーコストの上昇は航空運賃などにもある程度影響する。

 よって、投資家がこの先のインフレの冷え込みに賭けるのは理に適っているのかもしれないが、リスクも留意すべきだと述べている。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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