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【市況】明日の株式相場に向けて=投資資金は「AI」そして「バイオ」へ

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(16日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比218円安の2万7010円と反落。米銀の相次ぐ破綻で始まった今回の世界的な波乱相場だったが、偶然とは言えないタイミングでスイスの金融大手クレディ・スイス<CS>の経営不安がクローズアップされた。SVB(シリコンバレーバンク)の大型破綻も、金融システム不安にはつながらないとの見方で市場関係者は概ね一致していたが、仮にクレディが破綻となれば、マーケット上空には2008年のリーマン・ショックを想起させるような黒雲が広がることになる。しかも、欧州にはドイツ銀行<DB>というアキレス腱がある。ドイツ銀にも不安が飛び火することでマーケットの動揺は更に倍加することになる。

 こうした非常事態ムードのなかで、朝方の東京市場は日経平均が寄り付きで400円を超える下落で始まった。2万7000円台割れはおろか2万6000円台前半まで売り込まれかねない、ロケットスタートの下げだったが、ほどなくして全体相場には浮揚力が働く格好となった。この日の午前、クレディはスイス中銀から日本円にして最大7兆円強の資金調達の準備があることを表明、これによってマーケットの不安心理は和らいだ。

 市場関係者によると「これは裏でスイス中銀に対し米国からの圧力が働いたもようで、この延長線上には他の財務脆弱な銀行、例えばドイツ銀に何かあっても、国策で支えるということを暗に示唆するものでもあった」(中堅証券マーケットアナリスト)という。つまり、金融不安は国家が支えると宣言したようなもので、これによってリスクオフの激流は堰(せ)き止められたようにも見える。ただ、この場合は間接的に市場への過剰流動性供給にあたるため、インフレを再び燃え上がらせる油になってしまう危険性とも隣り合わせだ。

 きょうの相場は個別では人工知能(AI)関連が強い動きで、前日も紹介したインフォネット<4444>は1000円トビ台で拾われるや、怒涛の大まくりで値幅制限いっぱいまで上値を伸ばした。チャットGPTの次世代モデル「GPT―4」はAIの加速度的進化を如実に物語るもので、株式市場にも絶大なインパクトをもたらしている。2045年に訪れるというシンギュラリティが、「AIが人類の叡智の総和を超え、その存在自体が社会に大きな影響を与える可能性がある転換点」と定義されるのであれば、今は既にその領域に半分足を踏み入れているような印象がある。人間では太刀打ちできない「棋神」と称したAIを採り入れた『将棋ウォーズ』を運営するのがHEROZ<4382>。同社の株価はうなぎ登りで21年12月以来1年3か月ぶりの株価水準に浮上した。また、インフォネット同様にAIチャットボット関連であるユーザーローカル<3984>も切り返しが急だ。

 AI関連企業が行った日本の経営者4600人に聞いたアンケートでチャットGPTについて知らないと答えた人が7割に達したというが、米中がAI覇権争いを繰り広げている現状においてこれが事実だとすると、日本のデジタルデバイド解消に向けた道のりの険しさを暗示する。ただし敢えて楽観的な見方をすれば、未知の領域が多い分だけAI関連株の物色テーマは懐が深いということにもなる。

 一方、ここにきてバイオ関連 にも物色人気が波及している。高配当利回りのバリュー株が目先方向感を失い、金利上昇が思わぬ向かい風に変わった銀行株の急落など、カオスの様相を呈する市場では、鉄火場的なグロース株セクターに資金が流れやすい傾向がある。バイオ関連は、やや乱暴な言い方をすれば夢を重視することで足もとの赤字が許される企業群といってもよい。特に外部メディアの業績見通しに振り回されやすいこの時期は、逆説的に「免罪符を有するバイオ」に資金が向かいやすいという面もあるようだ。きょうは急反落を余儀なくされたが、2月上旬に大きなマドを2つ空けて急騰劇を演じた免疫生物研究所<4570>のような動きがバイオ関連独特の魅力でもある。そうしたなか、サイフューズ<4892>が強い動きで、休養十分のDNAチップ研究所<2397>もマークしておきたい。

 あすのスケジュールでは、1月の第3次産業活動指数など。また、3カ月物国庫短期証券の入札が予定されている。海外では2月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)改定値、ロシア中銀の政策金利発表のほか、米国では2月の鉱工業生産・設備稼働率、3月の消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)、2月の景気先行指標総合指数などに対するマーケットの関心が高い。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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