【特集】6G時代を見据えた次世代通信基盤、「IOWN」関連株は新成長ステージ突入<株探トップ特集>
NTTが次世代通信基盤「IOWN」で初の商用サービスを開始する。高速・大容量・低遅延といった特徴があり、世界標準となれば関連企業も恩恵を受けそうだ。
―社会を変える可能性秘める最新技術、NTTの第1弾サービス開始で関心高まる―
NTT <9432> [東証P]が16日から次世代通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network:アイオン)」構想の実現に向けた初めての商用サービスとして、通信ネットワークの全区間で光波長を専有するオールフォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network:APN)IOWN1.0の提供を開始する予定だ。「高速・大容量」と「低遅延・ゆらぎゼロ」といった特徴は総務省が掲げる「Beyond 5G推進戦略(いわゆる6G推進戦略)」の中核要素となっており、社会を大きく変える可能性を秘めていることから関連銘柄に注目したい。
●eスポーツなど幅広い分野で活用へ
IOWN構想とは、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想。2024年の仕様確定、30年の実現を目指して研究開発が進められている。こうした背景には、モノのインターネット(IoT)の広がりやサービスの多様化により、データに基づいた分析やアクションを行う社会へと急速に変貌しつつあり、将来的にデータ容量・電力容量の大幅な増加や通信遅延などの課題に直面することが挙げられる。
NTTグループでは未来のデータ社会の実現に向けて、従来のエレクトロニクス(電子)ベースの通信ネットワークと比較して、伝送容量を125倍、エンドツーエンド(通信を行う二者を結ぶ経路全体、もしくはその両端)の遅延を200分の1、電力効率を100倍にするAPNの実現を目標にさまざまな研究開発に取り組んでいる。今回商用サービスが開始されるAPN IOWN1.0は、遠隔合奏や遠隔レッスン、 eスポーツ、リモートプロダクション(中継現場と編集スタジオなどをネットワークで接続しリモートで映像制作を行うこと)、実験計測機など機器の遠隔操作、データセンター間の緊密な連携などでの活用が想定されており、同グループではeスポーツ分野・ライブ・エンターテインメント分野のイベントを実施するとしている。
このほかにも「低遅延」などを生かせる事例としては、自動運転やコネクテッドカーなどが考えられる。NTTグループは世界標準となり得るIOWNの普及推進を加速させる構えで、6G時代のネットワーク分野で主導権を握れば国内関連企業も恩恵を受けそうだ。
●IOWN GFメンバーに活躍期待
IOWNはNTTグループの構想であるが、グローバルでの標準化を前提に進められており、20年1月にはNTTとソニーグループ <6758> [東証P]、米半導体大手インテル<INTC>が発起人となって「IOWN Global Forum(IOWN GF)」が設立された。この国際フォーラムは、これからの時代のデータや情報処理に対する要求に応えるために、新技術、フレームワーク、技術仕様、リファレンスデザイン(参照設計図)の開発を通じ、シリコンフォトニクスを含むオールフォトニクス・ネットワーク、エッジコンピューティング、無線分散コンピューティングから構成される新たなコミュニケーション基盤の実現を促進することが目的で、幅広い業種の国内企業が参画している。
ミライト・ワン <1417> [東証P]は、通信建設会社として培ってきた知見を生かし、高度化する通信ネットワークの構築への対応をはじめ、社会インフラのスマート化ニーズに応えるソリューションの提供に注力している。IOWN GFでは、これまでの実績に裏付けされた技術力を活用し、革新的な技術の実証や社会実装に向けた課題に取り組み、スマートインフラ・プロバイダーとしての活躍が期待される。
エクシオグループ <1951> [東証P]は、関連事業及び関連技術開発の推進を目的とした「IOWN推進室」を設置している。NTTなどが進める取り組みとの協業推進や、次世代コミュニケーション基盤に必要な先進技術の実証・調査活動などをミッションに掲げており、今後の動向から目が離せない。
日揮ホールディングス <1963> [東証P]は、エンジニアリング企業として培ってきた技術、知見、ノウハウを提供する。加えて、IOWN構想の実現によって膨大な情報が瞬時に処理され高速で伝送されることで、プラントの設計・調達・建設・メンテナンス役務やプロジェクトマネジメントシステムへの活用だけでなく、安全かつ効率的なエネルギー・社会インフラ基盤の構築を目指す構えだ。
santec <6777> [東証S]は経営理念として、人間中心の希望に満ちた高度情報化社会であり平和で心温まる未来の理想郷「オプトピアの創造」と独創的な光技術でオプトピアの創造と発展に貢献する「光の先駆者」を掲げている。同社はIOWN構想の実現への取り組みは経営理念を具体的に体現するものと考えており、光部品関連事業や光測定器関連事業で培った技術と知見を生かし、他の参画メンバーと連携してスマートな世界の実現を目指すとしている。
ピアズ <7066> [東証G]はIOWN GFに参画することで、最新の動向を収集するとともに、長期ビジョンである「未来都市実現促進」の一翼を担う企業となるべく「IOWN」技術を活用した事業創出を目指すという。
スカパーJSATホールディングス <9412> [東証P]は21年5月、NTTと新たな宇宙事業のための業務提携契約を締結している。IOWNに取り組むNTTと、衛星通信や衛星放送をはじめとする宇宙事業での豊富な技術・実績を持つスカパーJの連携により、宇宙統合コンピューティング・ネットワークによるイノベーションで新たな宇宙インフラを構築したい考えだ。
このほかIOWN GFには、日産化学 <4021> [東証P]、イビデン <4062> [東証P]、信越化学工業 <4063> [東証P]、三菱ケミカルグループ <4188> [東証P]、住友ベークライト <4203> [東証P]、東洋インキSCホールディングス <4634> [東証P]、伊藤忠テクノソリューションズ <4739> [東証P]、AGC <5201> [東証P]、三菱マテリアル <5711> [東証P]、古河電気工業 <5801> [東証P]、住友電気工業 <5802> [東証P]、フジクラ <5803> [東証P]、ルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]、アンリツ <6754> [東証P]、アドバンテスト <6857> [東証P]、村田製作所 <6981> [東証P]、オリンパス <7733> [東証P]、リコー <7752> [東証P]、凸版印刷 <7911> [東証P]、大日本印刷 <7912> [東証P]、KDDI <9433> [東証P]、SCSK <9719> [東証P]などが名を連ねている。
●見逃せないイマジカGとACCESS
また、見逃せないのがIMAGICA GROUP <6879> [東証P]だ。同社は22年12月、NTTとIOWN時代のリアル・サイバー融合空間の表現・演出技法に関する総合的な共同検討に着手したと発表。イマジカGのクリエイティブとテクノロジー、NTTの映像音声・3次元空間情報・感性情報などの処理に関する先進技術を掛け合わせることで、IOWNの高度なデジタルツインコンピューティングによって可能となる新たなメディア体験やコミュニケーションUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)を具体化するという。
ACCESS <4813> [東証P]は、21年7月にNTTとIOWN構想の実現を目的に業務提携した。22年2月には米子会社のIP Infusionが、NTTのIOWN APNを用いた非圧縮8K120p映像の伝送技術の開発で、ホワイトボックス型ネットワークオペレーティングシステム(OS)「OcNOS」を提供した実績がある。
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