【市況】テクニカル強気転換も裏付けに自信持てず/後場の投資戦略
日経平均 <1分足> 「株探」多機能チャートより
日経平均 : 27898.37 (+399.50)
TOPIX : 2019.67 (+25.10)
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は久々に大幅に上昇、根強い戻り待ちの売りから長らく明確に超えることができていなかった27500円水準を大きく上放れ、2月6日高値27821.22円を超えてきている。27500円を挟んだ長いもみ合いを経た後の上放れとあって強気トレンドへの転換が期待される展開だ。2月東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)が前年同月比+3.3%と1月(+4.3%)から大幅に鈍化したが、銀行株なども上昇するなど本日の東京市場ではセクターを問わずほぼ全面高となっている。銀行株については、生鮮食品を除く食料とエネルギーを除いたコアコアCPIは+3.2%と1月(+3.0%)から加速していることもあり、金融緩和の修正路線に変更なしと捉えられているようだ。
前日の米株式市場も引け味良く、重要な形で取引を終えた。週次失業保険申請件数が予想外に減少したほか、10-12月期単位労働コスト改定値が予想を上回ったことで長期金利が上昇する中、寄り付き後は売りが先行した。しかし、その後の米連銀総裁の発言を受けて投資家心理が改善すると、大きく切り返して主要株価指数は揃ってプラスで終えた。一昨日に200日移動平均線を割り込んで下落トレンド入りが懸念されたナスダック総合指数は25日線を下値支持線とした反発により終値で200日線上に復帰。ナスダックに続いて200日線割れが警戒されていたS&P500種株価指数も200日線がしっかりとサポートとなる形で大きな陽線を描いた。日米ともにテクニカル的には強気派を支援する展開だ。
背景としては、米アトランタ連銀のボスティック総裁と米ボストン連銀のコリンズ総裁の発言が挙げられる。ボスティック総裁は利上げ幅については今後のデータ次第と柔軟性を持たせたが、基本的には0.25ptの利上げを支持し、利上げ幅の再加速には現状は積極的でない様子。また、マーケットが好感したのは今夏にも利上げ停止の可能性があることを示唆したことだ。コリンズ総裁も同様の見解を示したこともあり、米金利が全面的に上昇する中でも株式市場は終盤にかけて持ち直した。
一方、ボスティック総裁についてはこれより前の日の1日には、政策金利を5.00-5.25%に引き上げた後は、2024年もしばらくその水準で維持する必要性について言及し、米10年債利回りの4%乗せの材料を与えた人物だ。政策金利の上限を5.25%にした後は据え置くべきと発言している時点で、単純に現状の政策金利水準から逆算すれば、昨日の発言の通り夏頃にはいったん利上げが打ち止めになることは自明のこと。一昨日はそれよりも来年も高水準の金利が続くことをネガティブに捉えていたはず。それが昨日はすでに自明のことをポジティブに捉え直すという何ともちぐはぐな様相を呈している。
前日の米株式市場の引け味が良かったとはいえ、為替の円安水準にも大きな変化がない中、今日の東京市場の上昇率がやけに大きいのも少し気掛かり。前引け時点での東証プライム市場の売買高は5億株台にとどまっており、値幅程には商いが膨らんでいない点も気になる。やや需給主導的な面が否めず、今後の展開には少し注意したい。
今晩は米供給管理協会(ISM)の2月非製造業(サービス業)景況指数が発表される。前回1月分は55.2と大幅に改善し、景況感の拡大を示す50を一気に回復した。今回は54.6と引き続き高い水準が予想されている。先週は米2月サービス業購買担当者景気指数(PMI)が予想以上に大きく改善しことをきっかけに米長期金利の大幅上昇につながった。このため、今晩の米ISMサービス業景況指数の結果を受けた金利動向に注意したい。金利の動き次第では相場が再びネガティブな反応に転換する可能性は残されており、予断を許さないだろう。足元でトレンド転換が期待される株式市場だが、日経平均の28000円超えはハードルが高いとみておきたい。(仲村幸浩)
《AK》
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