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【特集】プラチナ相場は堅調も、ロシア制裁でリスク回避の調整局面を警戒 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとした原油や金の急伸につれ高となり、昨年7月以来の高値1126ドルをつけた。ロシアは欧米に北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大を要求し協議を重ねたが、受け入れられず攻撃に踏み切った。西側諸国は制裁を発動し、2月26日には国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの金融機関を排除することを決定した。

 ロシア経済が孤立し、プラチナ・パラジウム の輸出が途絶えることは相場の支援要因である。ただ、ロシアのウクライナ侵攻を受けて石油会社や自動車会社がロシアから撤退し、投資家心理が悪化し株安に振れた。株安が進むとプラチナ・パラジウム市場で利食い売りが進み、調整局面が警戒される。

 一方、ロシアとウクライナの停戦交渉が開始されており、交渉がまとまるかどうかも焦点となる。プーチン大統領はマクロン仏大統領との会談で、ウクライナの「非軍事化、非ナチ化」による中立化とクリミア支配の承認を和平の条件とした。ミンスク合意よりもハードルが上がっており、ウクライナが受け入れることはないとみられる。ウクライナ軍の抵抗が激しく、首都キエフへのロシア軍の進軍は遅れており、戦闘が長期化する可能性がある。原油 、パラジウムの動向次第ではプラチナに押し目買いが入るとみられる。

●各国の金融政策の見通しも焦点

 1月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比7.5%上昇し、約40年ぶりの大きな伸び率となった。また、1月の米小売売上高は前月比3.8%増となった。自動車などの購入が急増するなか、前月の落ち込みからプラスに転じた。個人消費が堅調となるなか、高インフレが続いており、米連邦準備理事会(FRB)は15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを決定することが見込まれている。インフレ懸念を受けてブラード米セントルイス地区連銀総裁は7月1日までの3会合で合計1%の利上げを実施すべきと主張している。

 ロシアのウクライナ侵攻と欧米の制裁発動で景気の先行き懸念もあり、今後発表される経済指標と各市場の動向を確認したい。今週は4日に2月の米雇用統計の発表がある。事前予想は非農業部門雇用者数が前月比40万人増(前月46万7000人増)、失業率が3.9%(同4.0%)となっている。

 一方、欧州ではロシアのウクライナ侵攻を受けてドイツが2022年予算で国防費に1000億ユーロを追加し、国内総生産(GDP)比で2%以上へと大幅に引き上げると発表し、外交政策を大転換した。ウクライナに武器を直接供与する方針も示した。また、ロシア産ガスへの依存度を引き下げるため、エネルギー政策も大転換する方針を示し、石炭火力発電所と原子力発電所の運用期限を延長する可能性がある。

 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は2月25日のパリでの非公式会合で「ユーロ圏の物価と金融の安定の確保に向け、ECBには責務の範囲内で、必要なあらゆる措置を実施する用意がある」と述べた。また、次の措置について10日のECB理事会で分析すると述べており、内容を確認したい。

●プラチナ堅調もETFから投資資金が流出

 プラチナETF(上場投信)残高は2月28日の米国で35.72トン(1月末36.60トン)、英国で16.82トン(同16.40トン)、南アフリカで12.91トン(同13.06トン)となった。合計で0.61トン減少した。プラチナ価格は1月末から堅調に推移し、レンジを上放れて一段高となったが、新型コロナウイルスの感染拡大などで景気の先行き懸念も残り、投資資金が流出した。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、2月22日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万7540枚(前週1万0132枚)に拡大した。昨年12月21日の1268枚を底として拡大し、昨年11月16日以来の高水準となった。テクニカル面での改善を受けて新規買いが入った。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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