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【市況】国内株式市場見通し:半導体のけん引役に期待、FOMC議事録に注目

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより

■3万円手前での上値の重さ確認、半導体は絶好調

今週の日経平均は反発。週間の上げ幅は135.90円(+0.46%)となった。週初15日は好調な7-9月期実績及び通期計画の上方修正を発表した東京エレクトロン<8035>の大幅上昇を手掛かりにハイテク株を中心に買いが入り、日経平均は166.83円高の29776.80円となった。16日は材料難のなか朝方はもみ合いが続いていたが、米中首脳協議の結果が伝わると、香港ハンセン指数などが強含み、日経平均は一時29960.93円まで上昇。しかし、ヘッドラインに反応した機械的な買いにとどまり、失速すると、結局31.32円高と小幅高にとどまった。

週半ばからの日経平均は、近くて遠い3万円を手前に根強い売りに押される展開となり、17日、18日と続けて下落。米国では10月小売売上高が予想を上回ったこともあり、好決算を発表したホーム・デポなどの小売企業が買われたほか、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が史上最高値を更新するなどの追い風もあり、東京市場でも半導体関連株は堅調だった。しかし、鉄鋼や海運などの市況関連株を中心にその他のセクターが冴えず、日経平均は軟調な値動きに。18日には一時29402.57円と29500円を割り込む場面もあった。午後には岸田政権が打ち出す経済対策の規模が財政支出ベースで55.7兆円に及ぶとの報道をきっかけに、一時上昇に転じる動きも見られたが、買いは続かず、結局、下落した。

ただ、週末の日経平均は147.21円高の29745.87円と3日ぶりに反発。米半導体メーカーのエヌビディアが第3四半期決算において市場予想を上回る実績及び第4四半期見通しを示したことで、再びSOX指数が最高値を更新。これを刺激材料に週末は半導体関連株が改めて相場のけん引役となった。東京エレクトロン、SCREENHD<7735>などが朝方から大幅高で上場来高値を更新、午後は信越化学<4063>、TDK<6762>、キーエンス<6861>など他の主力株も上げ幅を拡げ、日経平均は大引けまで騰勢を強める、引け味のよい終わり方となった。

■外部環境に影響されやすい

来週の日経平均は一進一退か。米国の半導体メーカーや小売企業の決算発表も終わり、注目企業の決算は一巡した。米中の小売売上高をはじめとした注目の経済指標の発表も終えたことから、ここからは一段と手掛かり材料が乏しくなる。その分、米国の期待インフレ率や長期金利の動向のほか、為替など外部環境の動きに影響を受けやすい展開となりそうだ。

国内では、19日に閣議決定された岸田政権による経済対策は財政支出で56兆円程度、事業規模にして79兆円程度と、従来よりも大規模になることが判明したが、相場の反応は限られた。給付金など分配政策が中心で、市場が求める成長戦略の色が薄いことや、一時は「当面触ることを考えていない」とした金融所得課税の引き上げについて、来年以降に本格的に議論する方向で調整に入ったとも伝わっており、こうした面が相場にネガティブに働いていると考えられる。成長に関する部分について、より具体的な話が出てこない限りは、日経平均が明確に3万円を回復するには今しばらく時間がかかりそうだ。

来週は、国内は23日が祝日で休場の一方、米国は25日が感謝祭の祝日で休場となり、それぞれ立会いが4日に限られる。材料としては週半ばの24日に集中しており、米国で10月の耐久財受注、個人消費支出・個人所得、PCEコアデフレータ、新築住宅販売などの経済指標のほか、11月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の公表が予定されている。

11月のFOMCでは予想通り量的緩和縮小(テーパリング)開始が正式に決定された一方、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は「インフレは一時的」との姿勢を維持し、早期利上げには慎重な見解を示した。しかし、その後に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)は、変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアで前月比+0.6%と、9月の+0.2%から大きく加速。11月の政策決定会合で予想に反して利上げを見送った英国でも、10月のコアCPIは前年前月比+3.4%と9月の+2.9%から加速した。こうした背景から、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.7%台と歴史的な高値圏での推移が続いており、一時は後退した早期利上げ懸念も再び高まっている。

このため、FRBが政策判断として重要視するPCEコアデフレータの結果や、11月FOMC議事要旨における将来の利上げに対する政策メンバーの見解などが注目される。材料難のなか注目度は高いとみられ、利上げ前向きな内容が窺えるとグロース(成長)株中心に利益確定売りの口実とされる可能性がありそうだ。

■半導体の押し目での買い意欲を確認したい

個別では、引き続き好決算や国策テーマに絡んだところで半導体関連株に人気化した買いが向かいそうだ。7-9月期は供給網混乱、電力不足、東南アジアでの新型コロナ感染拡大など様々な懸念事項があり、多くの産業が苦しんだなか、半導体関連の企業決算は世界的にとりわけ好調で、「何だかんだ言ってやっぱり半導体は強い」という印象を強烈に残した。国内でも今週は、東京エレクトロン、レーザーテック<6920>、SCREENHDが上場来高値を更新し、ルネサスエレクトロニクス<6723>も4年ぶりの高値を記録するなど、半導体セクターの強さが際立った。全体的に材料難のなか、相対的な安心感のある半導体関連株には根強い買いが入りそうで、高値更新劇に期待したい。

■米PCEコアデフレータ、FOMC議事録など

なお、来週は22日に米10月中古住宅販売、米5年債入札、23日に米7年債入札、24日に米7-9月期国内総生産(GDP)改定値、米10月耐久財受注、米10月個人消費支出・個人所得、PCEコアデフレータ、米10月新築住宅販売、FOMC議事要旨(11月開催分)、26日に10月都区部消費者物価指数、米ブラックフライデーなどが予定されている。

《FA》

 提供:フィスコ

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