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【市況】後場に注目すべき3つのポイント~景気懸念が広がるなかでの年内テーパリング観測

日経平均 <1分足> 「株探」多機能チャートより

19日の後場の取引では以下の3つのポイントに注目したい。

・日経平均は反落、景気懸念が広がるなかでの年内テーパリング観測
・ドル・円はしっかり、ドル買い継続で
・値下がり寄与トップは東京エレクトロン<8035>、同2位がファーストリテイリング<9983>

■日経平均は反落、景気懸念が広がるなかでの年内テーパリング観測

日経平均は反落。191.48円安の27394.43円(出来高概算4億9000万株)で前場の取引を終えている。

18日の米株式市場でNYダウは続落し、382ドル安となった。7月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で年内にも量的緩和縮小(テーパリング)を開始する可能性が示唆され、引けにかけて売りに拍車がかかった。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数も0.9%の下落となり、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は節目の20超に上昇。本日の東京市場でもこうした流れを引き継ぎ、日経平均は187円安からスタートすると、寄り付き直後に一時27357.54円(228.37円安)まで下落した。引き続き27500円を下回る局面では押し目買いや買い戻しの動きがあって下げ渋る場面もあったが、中国・上海株や香港株が軟調な出足となって再び弱含んだ。

個別では、レーザーテック<6920>、トヨタ自<7203>、ソニーG<6758>などが軟調で、郵船<9101>やソフトバンクG<9984>も小安い。三井物産<8031>が5%超下落し、日本製鉄<5401>やJFE<5411>の下落も目立つ。NY原油先物相場が大幅続落し、景気敏感色の強い市況関連株の売りにつながっているようだ。また、明治海<9115>、三菱製鋼<5632>、東海カ<5301>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、塩野義<4507>や中外薬<4519>は新型コロナウイルス治療薬・ワクチンの開発を巡り大きく上昇。ZHD<4689>も上げが目立つ。和洋菓子の値上げを発表した山崎パン<2212>が急伸し、米社とのライセンス契約締結を発表したわかもと<4512>はストップ高。MBO(経営陣の参加する買収)実施のオンリー<3376>はストップ高水準での買い気配が続いている。

セクターでは、鉄鋼、鉱業、石油・石炭製品などが下落率上位で、その他も全般軟調。上昇したのは医薬品と情報・通信業の2業種のみだった。東証1部の値下がり銘柄は全体の65%、対して値上がり銘柄は30%となっている。

本日の日経平均は海外株安が嫌気され、3ケタの下落で前場を折り返した。個別・業種別では、一昨日と同様に市況関連セクターが軟調。日本製鉄などの日足チャートを見ると足元の軟調ぶりが際立っている。海運業も買いが続かず失速する展開。一方、新型コロナ治療薬・ワクチンを巡る材料から医薬品が堅調だが、内需・(景気変動の影響を受けにくい)ディフェンシブセクターへの投資資金シフトも感じる。東証1部上昇率上位を見ても、ヘルスケアのSMS<2175>などが顔を出している。ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまりと低調。決算発表の一巡、それに26日からの米経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」を前にした様子見ムードから積極的な売買は期待しづらい。

新興市場ではマザーズ指数が+0.71%と続伸。前日の朝方、昨年8月以来およそ1年ぶりに節目の1000ptを割り込む場面があったが、その後強いリバウンドを見せた。一昨日の当欄で示唆したとおり、決算発表通過で追い証(追加担保の差し入れ義務)発生レベルの急落銘柄が減ったことは安心感につながっているだろう。QUICK社の算出する信用評価損益率は13日申し込み時点で-10.24%と4週間ぶりに改善した。これまでの下落による値ごろ感に加え、マクロ経済の影響が相対的に小さいとみられる点なども新興株の買いを誘いそうだ。もっとも、マザーズ指数も前場中ごろに本日の高値を付けると伸び悩み。株式相場全体の地合いに抗うほどの強さまでは感じられない。明日は3週間ぶりのIPO(新規株式公開)があるため、その動向からも個人投資家のセンチメントを探りたい。

さて、前日のNYダウは引けにかけて下げ幅を広げ、日足チャートで長めの陰線を付ける格好となった。まだまだ「高値圏での調整」と捉える向きが多い一方、シクリカル(景気敏感株)、グロース(成長株)、ディフェンシブが揃って売られるなど引け味の悪さを懸念する声も聞かれた。「長期金利は比較的落ち着いている」との指摘はあるが、ミシガン大学の8月消費者態度指数が発表された先週末以降、株式が堅調な場面でも一貫して低下(債券価格は上昇)してきたためだろう。7月小売売上高の発表後に下げ渋る場面も見られたものの、反騰の兆しは見られない。原油先物相場の下落などからも世界経済の減速懸念が強まっていることが窺える。

実際、7月の米住宅着工件数が3カ月ぶりに減少するなど、このところ市場予想を下回る経済指標が目立つ。また、米バンク・オブ・アメリカ(BofA)が公表した8月の機関投資家調査では、世界の景気見通しを示す指数(「強くなる」から「弱くなる」の回答を引いたもの)が+27%と前月比20pt低下し、昨年4月以降で最も低い水準になったという。一方で、7月のFOMC議事要旨では年内にもテーパリングを開始する可能性が示唆された。年内のテーパリング開始観測自体は以前からあったが、むしろ足元で広がるのは「テーパリング開始時には既に景気後退局面入りしているのでは」という「政策エラー」への懸念だろう。

ちなみに前述の調査結果に絡んでかどうかは定かでないが、前日の先物手口ではBofA証券が東証株価指数(TOPIX)先物を売り越していた。短期筋のものとみられるクレディ・スイス証券の日経平均先物、TOPIX先物買い越しも観測されたが、景気減速懸念から米長期金利が伸び悩む局面で海外勢が日本株のエクスポージャー(投資残高)を高めるとは考えにくい。今秋の衆院解散・総選挙や、それに先立ち期待される経済対策による日本株持ち直しシナリオを描く市場関係者も多いが、筆者は懐疑的にみている。「日本株は割安」との主張も、見方を変えればそうと言えない。紙面の都合でこのあたりの詳細はまた後日説明したい。

さて、足元で香港ハンセン指数の下落率は1.5%前後まで拡大してきた。根強い押し目買いが入っているとはいえ、後場の日経平均も引き続き軟調な展開になるとみておきたい。(小林大純)

■ドル・円はしっかり、ドル買い継続で

19日午前の東京市場でドル・円はしっかりとなり、109円後半から110円前半に水準を切り上げた。前日公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨はタカ派的な内容となり、ドル買いが継続。一方でクロス円の上昇は抑制され、アジア株安が警戒される。

ここまでの取引レンジは、ドル・円は109円76銭から110円12銭、ユーロ・円は128円47銭から128円70銭、ユーロ・ドルは1.1684ドルから1.1719ドル。

■後場のチェック銘柄

・ホットマン<3190>、北日本紡績<3409>など、7銘柄がストップ高

※一時ストップ高(気配値)を含みます

・値下がり寄与トップは東京エレクトロン<8035>、同2位がファーストリテイリング<9983>

■経済指標・要人発言

【経済指標】

・豪・7月失業率:4.6%(予想:5.0%、6月:4.9%)
・豪・7月雇用者数増減:+0.22万人(予想:-4.31万人、6月:+2.91万人)

【要人発言】

・豪統計局
「7月の失業率は労働市場の強さとみるべきではない」

・オアNZ準備銀行総裁
「ロックダウンがなければ、政策金利を引き上げた可能性がかなり高い」
「政策金利を中立水準に向け徐々に引き上げる方針」
「18カ月で住宅価格を引き下げる計画」

<国内>
特になし

<海外>
特になし

《CS》

 提供:フィスコ

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