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【特集】新・三現主義で脚光、メンテナンス革命「予知保全」関連株 が活躍舞台へ <株探トップ特集>

生産性の向上が利益に直結する製造業では、生産設備の高い稼働率が重視される。そのためには適切なタイミングでメンテナンス作業を行う必要があり、予期せぬ稼働停止を防ぐ「予知保全」への関心が一段と高まっている。

―設備のメンテナンス業務に変革、トラブル予兆を見える化する企業に商機―

 新型コロナウイルスの感染拡大で企業を取り巻く環境が激変するなか、製造業の現場ではテクノロジーを活用した省人化や効率化が従来以上に求められている。特に、三現主義(机上で判断するのではなく、“現場”で不具合の起きた“現物”をみて、“現実”を確認することで問題解決を図る考え方)が重視される保全と呼ばれる設備のメンテナンス作業は、先端技術による業務支援が効果的だとされる。今後も感染のリスクを軽減しつつ、従来と同様の品質を保つ努力が必要とされる状況が続くとみられ、生産ラインや工場設備の安定的な稼働を実現する「予知保全」のニーズは更に高まりそうだ。

●生産性向上のカギ握る設備稼働率

 予知保全とは、日々稼働し続ける工場内の機械や設備をセンサーなどで計測・監視し、そのデータをもとに故障や異常の兆候を事前に予知して部品の交換や修理を行い、予定外の生産ラインの停止を回避する保全方法。故障の兆候を確実につかむことができれば、ベテラン工員の勘やノウハウに頼っていた部品交換のタイミングを誰でも正確に知ることが可能になるほか、定期的に整備・保守を行う予防保全で発生するオーバーメンテナンス(まだ十分に使える部品でも交換されてしまうこと)を回避でき、機械・設備の稼働率も向上する。また、予知保全によって維持活動の時間が削減され、付加価値を生む改善活動の時間を創出できることも大きなメリットだ。

 経済産業省が5月に公表した「2021年版ものづくり白書」によると、新型コロナの感染拡大による先行き不透明感から設備投資が見送られる傾向がある一方、金属工作機械や第二次金属加工機械、鋳造装置の多くが導入から15年以上経過しており、その老朽化が指摘されている。生産活動を左右する機械・設備を効率的にメンテナンスすることは製造業にとって必要不可欠であり、設備の状態変化に応じた適切なタイミングでの保全を実施するソリューションを提供する企業の更なるビジネス拡大が期待される。

●ソリューション提供企業続々

 コネクシオ <9422> は今月、モーターやポンプなどの回転機にワイヤレス振動センサーを取り付けるだけで、遠隔で異常検知や故障予兆検知を始めることができるワンストップ IoTソリューション「Smart Ready IoT 回転機のAI予知保全ソリューションセット」の販売を開始すると発表した。これまでは予知保全システムの導入に関して、センサーから通信、クラウドなど広範囲にわたる知見を持つ人材不足や開発・導入期間、コストの問題などで検討が進まないという課題があったが、このソリューションでは予知保全に適した選定済みセンサーや人工知能(AI)、アプリケーションをオールインワンパッケージとして提供する。

 ウイングアーク1st <4432> は6月、製造業でのAI活用推進を目的としたソリューション開発で、ビジネスインテリジェンス(BI)専業ベンダーのジール(東京都品川区)及びデータ&AI企業である米データブリックスの日本法人と協業することを明らかにした。ウイングアークのBIダッシュボード「MotionBoard(モーションボード)」と、データブリックスの統合データ分析基盤「レイクハウス・プラットフォーム」上での機械学習などのAI技術を活用することで、需要予測や予知保全、在庫適正化を実現するソリューションの提供を目指すという。

 東京エレクトロン デバイス <2760> は6月、製造設備の異常検知・故障予測による予知保全の実現に向け、正常時の設備の時系列データから最適な異常検知モデルを自動生成する新たなAI技術を開発した。データ分析の専門家が設備の異常データを長期間にわたって複数回取得し、繰り返し行ってきた異常検知モデルの最適化作業は、この技術を用いることで作業時間を大幅に短縮するとともに、実際に故障が発生するまで異常検知モデルの効果・精度を検証することができないという課題を解決できるとしており、製造業向けソリューションとして展開する考えだ。

 NEC <6701> グループのNECファシリティーズは4月、施設管理のノウハウを取り入れたIoTやAIを活用することで、施設管理業務の品質を向上させる次世代型工場施設管理業務の提供を開始した。同業務は施設管理業務最適化サービス、異常予兆検知・保全サービス、エネルギー原単位管理サービス、設備投資計画作成支援サービスの4つを体系化したもの。工場施設の老朽化による生産ラインの突発停止、エネルギー効率の低下、運用コストの増大といった設備運用のリスクに対応したサービスとして、25年度には施設管理事業の売上高300億円を目指すとしている。

 日本精工 <6471> は4月、機械部品の状態監視・診断アプリケーション「ACOUS NAVI(アコースナビ)」の提供を開始した。これはファナック <6954> の製造業向けオープンプラットフォーム「FIELD system(フィールドシステム)」向けアプリとして展開しているもので、振動加速度データをもとに機械設備内の軸受やボールねじ、リニアガイドの予知保全を実現する。収集した振動データを技術者が詳細に分析する「データ詳細分析サービス」や、損傷・劣化した軸受やボールねじを調査・分析する「現品調査サービス」なども手掛けており、同社は予知保全に関するサービスで26年に年間5億円の売り上げを目指す。

 このほか、故障予知サービス「MMPredict」を提供するYE DIGITAL <2354> [東証2]、故障予知に特化したビッグデータ分析プラットフォーム「PDX」を手掛けるISID <4812> 、予知保全システム「PICCS(ピックス)」を運営するJMACS<5817.T>、予兆検知を実現する製造業向けIoTサービス「OMNIedge(オムニエッジ)」を展開するTHK <6481> 、故障予兆など解析するソリューション「Falkonry(ファルコンリー)」を取り扱うSCSK <9719> にも商機がありそうだ。

●コロナ禍で加速するリモート化

 ニューノーマル(新常態)における働き方としてテレワークが普及するなか、これまでリモートワークが難しいとされてきた製造業の現場でも遠隔地から指示を行う動きが広がりつつあり、関連銘柄を押さえておきたい。

 パーソルホールディングス <2181> グループのパーソルプロセス&テクノロジーは、エコモット <3987> [東証M]とリモートモニタリング業務で協業し、6月下旬からエコモットが提供するクラウドカメラなどのIoTソリューションを活用した「IoT監視サービス」の提供を開始。インターネットイニシアティブ <3774> のIoTプラットフォーム「IIJ産業IoTセキュアリモートマネジメント」は同月、創販(千葉県東金市)が新たに開発したボンベ残圧監視システムに採用された。

 また、サイバネットシステム <4312> は4月、米PTC<PTC>の拡張現実(AR)開発プラットフォーム「Vuforia(ビューフォリア)」の販売及び技術サポートをスタートした。「Vuforia」は、既存の3D CAD設計データを有効活用して自社でARの動作設定やコンテンツを作成するツール、ビデオ通話とあわせて遠隔地の現場作業者に指示できるソフトウェアなど製造業のニーズに応える機能が豊富に搭載されており、リモート環境でも製造、品質管理、保守メンテナンスの大幅な効率化が期待できるとしている。

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