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【特集】“飛び恥”返上の切り札「バイオジェット燃料」関連株、空の脱炭素化推進に威力 <株探トップ特集>

世界的な脱炭素化の流れを受け、航空業界でもCO2削減の取り組みが本格化している。こうしたなか、関心が高まっているのがカーボンニュートラルなバイオジェット燃料だ。

―ANAは50年度までにCO2排出実質ゼロへ、カギ握るカーボンニュートラル燃料―

 主要7ヵ国(G7)が5月20~21日に開いた気候・環境相会合は、産業革命前に比べた気温上昇を1.5度以下に抑えることで合意した。地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」での1.5度に抑制するとの努力目標から一歩踏み込んだかたちで、これを実現するためには二酸化炭素(CO2)排出削減の取り組みを更に加速させる必要がある。2019年度時点の国内CO2排出量は産業部門(総排出量の約35%)に次いで運輸部門(約19%)が多く、問題視されているひとつが航空機分野。世界ではCO2排出量の多い航空機の利用を避ける「フライト・シェイム(飛び恥)」という言葉が広がっているが、汚名返上のカギを握るのがバイオマス原料をもとに製造される「バイオジェット燃料」だ。

●30年の市場規模1900億円に

 ANAホールディングス <9202> は4月26日、航空機の運航によって発生するCO2排出量について、50年度までに実質ゼロを実現すると発表した。従来は50年までに05年比で半減させる目標を掲げていたが、政府の温室効果ガス削減目標を踏まえ、環境負荷軽減への取り組みを加速させる。また、日本航空 <9201> も50年までにCO2排出量実質ゼロを目指すことを打ち出しているほか、米航空機製造大手のボーイング<BA>はすべての民間航空機を30年までにCO2排出量を大幅に削減できる航空機用燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」で飛行させることを目指すとしている。

 こうした背景には、国際民間航空機関(ICAO)が20年以降、国際航空に関してCO2排出量を増加させないとの目標を採択していることがあり、この目標を達成するためには、運航方式の改善、機体やエンジンの効率改良(新技術導入)、代替燃料、市場メカニズムの活用を組み合わせることが必要であるとされている。また、国際航空運送協会(IATA)は50年時点でCO2排出量を05年比で半減させる目標を掲げている。

 国土交通省の資料によれば、CO2総排出量に占める航空分野の割合は5%程度と自動車に比べると少ないが、航空機で1キロメートル移動する際の排出量は乗客1人当たり98グラムで、バスの57グラムや鉄道の17グラムを上回っている。世界的に低炭素化要求が強まり、航空業界にも厳しい目が向けられるなか、同省は3月に「航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会」の初会合を開き、SAFの導入を促進する構えをみせている。バイオジェット燃料の市場は現時点でほぼ皆無だが、政府が20年12月に策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の資料では、ICAOなどのグローバル目標に後押しされ、30年時点で日本の航空会社(国際線)だけで最大1900億円の市場規模に拡大すると予想されている。

●藻類由来の燃料が国際規格取得

 SAFの製造技術にはさまざまあるが、なかでも有望視されているのが微細藻類由来の燃料だ。ユーグレナ <2931> は今年3月に、微細藻類の一種であるユーグレナ(和名:ミドリムシ)を用いて生産したバイオジェット燃料について、国際規格への適合が外部検査機関によって認められたと発表。燃料の開発は米石油大手のシェブロン<CVX>などと共同で行った。同社はバイオジェット燃料に関して供給のメドが立ったとして、年内のフライト実現に向けて航空運送事業者や航空局などとの最終調整を進めている。

 IHI <7013> は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と、ボツリオコッカスという微細藻類を使ってバイオジェット燃料を安定生産する研究に取り組んでおり、昨年6月には国際規格を取得したことを明らかにした。これにより、同燃料は所定の割合で既存のジェット燃料と混合して民間航空機の運航に提供することが可能になり、航空機が排出するCO2の削減が期待できるという。

 Jパワー <9513> は昨年10月、「海洋ケイ藻のオープン/クローズ型ハイブリッド培養技術の開発」がNEDOの「バイオジェット燃料生産技術開発事業/微細藻類基盤技術開発」に採択されたと発表。同社は08年度から水資源確保の点で淡水性微細藻類よりも利点があると考えられる海洋性微細藻類を用いた研究を行っており、今後の動向に注目したい。

 バイオベンチャー群である“ちとせグループ(グループ全体の統括会社の所在地はシンガポール)”は4月から、藻類を活用した新産業をつくる日本発の企業連携型プロジェクト「MATSURI(まつり)」を始動した。同プロジェクトには三菱ケミカルホールディングス <4188> 、三井化学 <4183> 、日本精化 <4362> 、花王 <4452> 、DIC <4631> 、ENEOSホールディングス <5020> 、日本特殊陶業 <5334> 、ホンダ <7267> などが参加しており、燃料やプラスチック、食品、化粧品の製品開発を行う計画。25年に世界最大級の藻類培養設備を建設し、年14万トン(乾燥重量)の藻類を供給できる体制を確立するとしている。

●東洋エンジは米社と協定書締結

 航空分野でのCO2排出量削減につながる有効手段としてバイオジェット燃料に注目する企業はほかにもある。東洋エンジニアリング <6330> は今年2月に、再生可能燃料の製造技術の分野で商業化プロジェクト推進に向けて、米ベロシスと包括的業務協力を定める協定書を締結した。ベロシスの保有技術であるマイクロチャンネル技術によるFT合成(一酸化炭素と水素の混合ガスから触媒を用いて液状炭化水素を合成する技術)と、東洋エンジのエンジニアリングを組み合わせ、木質バイオマスや都市ゴミ、産業施設から排出されるCO2などからSAFやその他燃料を製造する設備について、協業して案件開拓とプロジェクト実行を推進する。

 また、富士石油 <5017> は昨年11月、環境エネルギー(広島県福山市)及びHiBD研究所(北九州市若松区)とバイオジェット燃料の製造に関する共同研究契約を結んだ。環境エネルギーとHiBD研究所が持つバイオジェット燃料製造技術に、富士石油が事業活動で培った石油精製に関する知見を掛け合わせて技術開発を推進していく方針。同社がこのほど公表した第三次中期事業計画では、20年代半ばに次世代バイオ燃料の供給開始を目指すことが掲げられている。

株探ニュース

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