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【市況】富田隆弥のチャート倶楽部スペシャル 「彼岸底の次はセルインメイ、急がず低位株を待ち伏せ」 <GW特集>

株式評論家 富田隆弥

「彼岸底の次はセルインメイ、急がず低位株を待ち伏せ」

◆大勢基調に亀裂

 年後半相場を占う前に、コロナショックに見舞われたこれまでの今年の相場をチャートで振り返っておきたい(高値・安値はザラバ値)。

 日経平均株価NYダウとも2月まで超過剰流動性を背景に上昇基調を続けていた。テクニカル指標に高値警戒信号が多く灯っていたが、投資家は高値警戒を意識しながらも「音楽が鳴っている間は、踊り続けなければならない」とばかりに買い基調を変えなかった。運用難の地合いもあり、米国市場に世界の運用マネーが集中していた。

 NYダウの月足チャートをみると、2009年3月のリーマン・ショック安値(6469ドル)から11年間にわたりホップ、ステップ、ジャンプと三段上げを描き、三段目は腰を伸ばして今年2月12日に2万9568ドルの過去最高値をつけていた。最後に弾みをつける波動はマネーバブルの最終局面という雰囲気を漂わせていた。

 そのような状況で、過去に経験したことのない新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われた。ハシゴを外された投資家が焦ったのは言うまでもなく、2月下旬にチャートが陰転すると3月23日の1万8213ドルまでわずか1ヵ月で下落率が38%に達する暴落になった。 

 日経平均株価も1月17日の直近高値2万4115円から3月19日の1万6358円まで短期間に32%暴落し、月足チャートは18年10月の2万4448円を頭に三尊天井(左肩は18年1月の2万4129円、右肩は20年1月の2万4115円)を形成した。

 そして、3月に大きく突っ込んだところが「セリング・クライマックス」となった。いわゆる「彼岸底」となり、いま大きく切り返している。どこまで戻すか(どこまで上げるか)が当面の焦点になるが、日米とも大勢チャートが11年間の上昇基調に亀裂を入れたことを踏まえると、この先どこかで「二番底」や「二段下げ」を模索するような下落が起きることを想定しておかねばならない。エリオット波動のサイクルも「上昇三波、下降二波」で構成されており、「二段下げ」の動きがどこで表れるかが二つ目の焦点になろう。

◆戻り一巡あと、二段下げに警戒

 日米とも3月の安値からいま戻り歩調を続けている。日経平均は4月30日時点で高値2万365円まで回復し、1月高値からの下げ幅に対する半値戻し(2万236円)を達成した。NYダウは高値2万4764ドルまであり、同58%戻している。 ナスダックに至っては高値8957ポイントをつけ同73%戻しを達成、75日移動平均線や200日移動平均線を突破している。

 強い戻り歩調を続けているが、この背景としては3月下落時に入った売り方の買い戻しのほか、新型コロナ対策で打ち出された際限のない財政・金融政策への期待感により需給相場が復活していることがある。「半値戻しは全値戻し」の格言があり、NYダウは2万9568ドルを、ナスダックは2月19日の最高値9838ポイントを視野に入れてもおかしくはない。

 米国株の戻り歩調が続くのあれば、日経平均も2万4000円を視野に入れるだろう。裁定売り残が2兆4125億円(4月24日時点)と最高水準にあるので、それが買い戻しの源泉となり上昇を支援する可能性はある。新型コロナの収束状況や経済状況がどうあれ、相場は「需給が最大の材料」であるから、上昇基調が続くなら買い優勢の地合いは続こう。

 ただし、回復基調が止まって調整に転じると話は変わる。新型コロナや経済などを巡る厳しい現実が再びマーケットを覆い、需給も買い方が苦しくなり、チャートは二番底を目指して動き出すだろう。その時のチャートは「N字」型をイメージすることになる。したがって、どこで調整に転じるかをここからは注視しておかなければならない。

 日本は5月の大型連休に入ったが、5月中旬にかけて変化日(彼岸底から9週など)が続く。米国には「セルインメイ(5月に株を売って、9月まで戻ってくるな)」の格言がある。5月以降は頭打ちへの注意が必要となろう。

 新型コロナの感染拡大やあふれる失業者など実体経済は厳しさを増している。仮にコロナが終息すれば未曽有の財政・金融対策の後始末(金融引き締め)が始まり、マーケットの足かせになる。そういった厳しい現状を無視しての株価上昇には限界があると思われる。そして、いざ調整入りすると大きく戻した相場の反動を覚悟せねばならぬことになる。

 年後半の相場展望として、日経平均の高値は5~6月に「2万1500円~2万2000円」、安値は二番底模索として8~10月に「1万4800円~1万6200円」を想定する。いずれにせよ、相場は流れに従うもの。日足チャートの下値抵抗線や25日移動平均線(4月30日時点1万9177円)をチェックしておき、それを割り込むなら「陰転信号」と判断したい。

◆低位株を待ち伏せ

 注目株としては底値圏で目立たないものを2つ、取り上げておく。年後半の全体相場には調整懸念もあり、5月は「戻り売り」や「現金比率を高める」ことも一策と考える。もし、二段下げが始まると、3月急落時の如く材料に関係なく全面安となりかねず、個別銘柄で意地を張るのは避けたいし、上げているものを追いかける場合はリスク伴うことを覚悟すべきだろう。

 どのようなスタンスで挑むかは各自で判断することだが、当欄では無理せずに待ち伏せの対象として下記の低位2銘柄を参考にあげておく。

●ブロードメディア <4347> [JQ]
新春特集でも紹介したジャスダックの超低位株。株価は年初80円前後から2月高値135円まで上昇。そして3月に59円まで下落して、いま再び80円処にある。子会社再編を経て業績は黒字化、クラウドゲーム(Gクラスタ技術)やeスポーツ(教育事業)など材料豊富で、いつまでも二ケタでもたついているとは思えない。コツコツ買い下がりで対応したい。コロナ対策の給付金10万円で狙える株だ。決算発表は5月15日予定。

●大盛工業 <1844> [東証2]
下水道、地中工事を手掛ける。東京都が地盤だが、OLY工法など独自技術を有し、OLY機材のリース事業も展開。下水道の老朽化対策は道半ばで、業績は上向きが続く。3月11日に発表した20年7月期上期(19年8月-20年1月)の連結経常利益は3.76億円(前年同期比85%増)と好調な着地。コロナショックのタイミングと重なり株価は反応せず3月13日に160円の安値をつけるが、EPS25円、期末配当5円で、長期チャートで150円処は底値圏でもある。待ち伏せ妙味大とみる。

(4月30日 記、毎週土曜日に更新)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ

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