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【特集】金は調整局面、米中協議再開の行方と為替動向が焦点に <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト ト 東海林 勇行
 金の現物相場は9月に入り、2013年4月以来の高値1556.65ドルを付けたのち、調整局面を迎えた。米中の追加関税が発動したことや、通商協議に対する不透明感、米経済指標の悪化で景気後退に対する懸念が高まったことが支援要因になった。

 ただ、米中が10月に閣僚級の通商協議を開催することで合意したことや、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が景気後退は予想していないと述べ、ドル高に振れると、利食い売りなどが出た。また、香港行政長官が逃亡犯条例改正案の撤回を表明したことや、英国で欧州連合(EU)離脱延期法案が成立し、合意なき離脱が阻止されつつあることも下げ要因となった。

 しかし、今後、米国は中国製品に対する関税率引き上げや追加関税発動を予定しており、米中の貿易戦争は激化する方向に変わりはない。米国の労働市場は堅調だが、製造業の減速によりそれが悪化すると、個人消費が伸び悩む可能性が出てくる。

 17~18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げが見込まれており、ドル安が再開すると、金の買い意欲は強まるとみられる。また、12日の欧州中央銀行(ECB)理事会で包括的な刺激策が決定されるかどうかも目先の焦点である。

●10月の米中の通商協議に向けた動きが当面の焦点

 米中の追加関税が9月1日に発動した。米国は1250億ドルの中国製品に対して15%の追加関税を発動し、中国も報復措置として750億ドルの米国製品に対して5~10%の追加関税を課した。中国が追加関税発動を控えて交渉優先の姿勢を示したが、協議はまとまらなかった。

 10月の米中の通商協議に向けて、トランプ米大統領は来週、中国側と協議すると表明したが、米中のスタンスに変わりがなければ合意するのは難しいとみられる。米大統領は、交渉が2期目まで持ち越しとなれば一層困難になるとしており、中国が来年の大統領選まで合意しないことも意識している。

 今後、米国は2500億ドルの中国製品に対する関税率を10月1日に25%から30%に引き上げ、12月15日には3000億ドルの残り1750億ドルの中国製品に対して15%の追加関税の発動を予定している。中国も12月15日に米国製品に対する追加関税を予定している。

 中国人民銀行は3日、人民元の対ドル基準値を1ドル=7.0884人民元に設定、市場では7.18台まで下落し、人民元は約11年ぶりの安値を付けた。7.2~7.3人民元まで下落すると、追加関税が相殺されるとみられている。米国は8月5日、中国を為替操作国に認定している。

 ムニューシン米財務長官は、中国と為替問題で協議することを明らかにし、中国人民銀行の易綱総裁も10月の協議に参加すると表明した。

●米経済指標はまちまちの内容

 8月の米ISM製造業景気指数は49.1と前月の51.2から低下し、2016年8月以来の節目となる50を割り込んだ。米中の貿易戦争激化が影響し、景気後退に対する懸念が高まった。ただ、米ISM非製造業総合指数(NMI)は56.4と前月の53.7や事前予想の54.0を上回った。

 また、8月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が13万人増と事前予想の15万8000人増を下回ったが、失業率は3.7%と3ヵ月連続で前月から横ばいとなった。時間当たり平均賃金は0.4%増加し、2月以来の伸びとなった。13日には8月の米小売売上高の発表があり、個人消費の動向も確認したい。

 CMEのフェドウォッチによると、9日の米短期金利先物市場で12月のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準の確率は1.25~1.50%が30.1%(前月36.1%)、1.50~1.75%が48.8%(同45.7%)、1.75~2.00%が20.0%(同13.1%)となった。17~18日のFOMCでは1.75~2.00%と0.25%の利下げが見込まれ、年末までに2~3回の利下げが予想されている。

●金ETF残高は増加

 金の内部要因では、米中の貿易戦争激化やFRBの追加利下げ見通しを受けて逃避買いが入り、金ETF(上場投信)残高が増加した。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は9月9日時点で882.42トンとなり、1ヵ月前の839.85トンから42.57トン増加した。4日時点の895.90トンからは一部利食い売りが出ている。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは9月に入り引き続き拡大し、2016年7月以来の高水準となった。9月3日時点で30万0547枚となり、1ヵ月前の29万2545枚から拡大した。調整局面を迎え、買い玉が減少するとみられるが、先行き懸念に変わりがなければ安値は買い拾われ、大幅な買い越しが続くと予想される。

(minkabu PRESS CXアナリスト ト 東海林 勇行)

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