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【特集】金は株安懸念による逃避買い再開なら支援要因に <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 金の現物相場は5月、米中の通商協議に対する懸念が出たことをきっかけに地合いを引き締めた。米中の通商協議で交渉決裂は回避されたが、米国の関税引き上げに対し、中国が報復措置を発表すると、貿易摩擦激化に対する懸念から金が急伸し、4月11日以来の高値1300.94ドルをつけた。

 これまでドル高を受けて金ETF(上場投信)から投資資金が流出したが、貿易摩擦に対する懸念を受けて米株価が急落するとともにMSCI新興国通貨指数が13日の取引で年初からの上げを全て消しており、株安に対する懸念から金が資金の逃避先(セーフヘイブン)として見直されると支援要因になるとみられる。トランプ米大統領は、6月28、29日に日本で開かれる20ヵ国・地域(G20)首脳会議に合わせ、習近平国家主席と会談する方針を表明しており、それまでに通商協議が合意に達するかどうかが当面の焦点である。

●米中の通商協議継続も貿易摩擦で先行き懸念

 米中の通商協議で、中国側が一部の合意済み事項について態度を転換したことを受け、トランプ米大統領が2000億ドル相当の中国製品に対する関税を10日から10%→25%に引き上げる方針を表明したことをきっかけに先行き懸念が高まった。

 9~10日の通商協議で交渉決裂は回避され、トランプ米大統領は「急ぐ必要はまったくない。我々は中国がこれまでの合意を覆さないことを望みながら交渉を続ける」とツイートした。ただ、米大統領は新たに3250億ドル相当の中国製品に追加関税を発動する手続きを始めたことも明らかにした。

 一方、中国が13日に米国からの600億ドル相当の輸入品に対する追加関税を最大25%に引き上げる方針を発表すると、貿易摩擦激化に対する懸念から株価が急落した。対中関税引き上げに対する報復措置で、6月1日から実施する。中国外務省の耿爽報道官は、同国が海外からの圧力に屈することは決してないと表明、交渉に関しては常に前向きとしつつも、中国は国益を守ると言明した。

 中国が譲歩せずに時間をかけて交渉する見通しとなり、米中の貿易戦争は長期化するとみられる。6月のG20首脳会議までに合意に達しなければ、米国は3250億ドル相当の中国製品に追加関税を発動する可能性がある。

●景気減速が示されれば金に逃避買いも

 第1四半期の米国内総生産(GDP)速報値は年率換算で前期比3.2%増と、前期の2.2%増から加速し、事前予想の2.0%増を大幅に上回った。ただ、今年の米経済成長が鈍化するとみられているなか、米中の貿易摩擦が激化する見通しとなったことで第1四半期がピークとなり、第2四半期からは減速することになりそうだ。

 一方、中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)で、これまでの景気刺激策の効果が浸透しつつある兆しも出ていると指摘されたが、貿易摩擦激化で景気減速が警戒される。4月の中国の製造業PMIは50.1(前月50.5)と拡大・縮小の分かれ目となる50を2ヵ月連続で上回ったが、拡大ペースは前月から鈍化した。事前予想は50.5。

 財新/マークイットの製造業PMIは50.2で前月50.8から低下した。事前予想51.0から予想外の低下で、輸出受注や雇用が再び縮小した。経済指標で景気減速が示されると、株安に対する懸念から金に逃避買いが入るとみられる。

 また、13日の株価急落で米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が高まったことも金の支援要因である。CMEのフェドウォッチによると、12月のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準は金利据え置きの確率が26.3%(前週45.8%)に低下、2.00~2.25%への利下げの確率は41.1%(同39.8%)、1.75~2.00%への利下げの確率は24.5%(同12.5%)に上昇した。ただ、米ダラス地区連銀のカプラン総裁は、米FRBは利上げや利下げを行わず忍耐強く様子を見守るべきとの考えを示しており、当面は米中の通商協議や株価、景気の動向を確認することになりそうだ。

●サウジの石油タンカー破壊行為の行方も焦点

 サウジアラビアのファリハ・エネルギー相は、同国の石油タンカー2隻が12日、アラブ首長国連邦(UAE)フジャイラの沖合いで「意図的な妨害行為」の標的になったと明らかにした。米政府はイラン産原油の禁輸措置を巡る適用除外措置を5月1日から撤廃した。イラン当局者によると、イラン産原油の輸出は5月以降、日量50万バレルに低下する可能性があるという。イランは国際的な核合意を維持するための条件として、少なくとも日量150万バレルの石油輸出を要求している。イラン外務省の報道官は、12日に起きたサウジの石油タンカーへの攻撃への懸念を示し、捜査を求めた。今回の攻撃で地政学的リスクが意識されると、金の支援要因になる可能性がある。

●13日の株価急落で金ETFに投資資金が戻る

 金の内部要因では、金ETFから投資資金が流出していたが、13日の株価急落を受けて投資資金が戻った。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は5月10日時点で733.23トンとなり、2018年10月9日以来の低水準となったが、13日時点では前日比3.23トン増の736.46トンとなった。株安に対する懸念やFRBの利上げ観測などを受けて投資資金が戻るようなら、金の支援要因になるとみられる。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは4月23日時点の3万7395枚を目先の底として拡大に転じた。5月7日時点は7万5411枚。当面のピークとなった2月19日時点の14万5647枚まで買い余地が残っている。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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