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【特集】BRACがアナリストレポートそのものを評価するアワードを開催

表彰に続き開催された「良きベーシックレポートとは?」をテーマにパネルディスカッション

「リサ―チの力を日本の価値創造につなげたい!」

―べーシック・レポート・アワード・コミッティ(BRAC)がアナリストレポートそのものを評価するアワードを開催―

 べーシック・レポート・アワード・コミッティ(BRAC)は、11月3日(土)に東京理科大学葛飾キャンパスにおいて開催された合同連携シンポジウム『あるべき知情財と人財の創造』*で、「ベーシック・レポート・アワード(BRA)」の発表と表彰を行った。その後、「良きベーシックレポートとは?」をテーマにパネルディスカッションが行われ、熱い議論が交わされた。

 従来意識の変革を促すスチュワードシップ/コーポレートガバナンス両コードの制定や「伊藤レポート」が存在意義を増す中で、資本市場において企業と投資家の結節点を担う「セルサイドアナリスト」の役割が十分にクローズアップされてこなかった。それでも長期的な企業価値に立脚したレポートを書くアナリストはいながらも、プレゼンテーション能力が不十分だったり、時間軸が長すぎたりして正当な評価を得られていない場合が多く、また証券会社も必ずしも目先の売買手数料収益に繋がる訳ではないこともあり、ベーシックレポートの執筆を推奨しているとは限らないという現実が存在している。こうした背景を踏まえ、過去の一定期間に発行されたセルサイドレポートのうち、企業価値の視点に立って事業・経営の深い洞察が行われ、投資に活かされ、企業と投資家の対話の質を高めることに貢献したものを表彰することが「ベーシック・レポート・アワード(BRA)」の目指すところである。

 「ベーシック・レポート・アワード(BRA)」では、「レポート」の内容そのものについて、「ファンダメンタル(国際視点、国際比較、業界分析、競争力分析、長期分析(歴史)、BS/CF、バリュエーションなど)」および「インサイト(オリジナリティ、ロジック、予想妥当性、実践性、社会影響度など)」を評価基準としており、自薦、他薦を含めて約50のレポートの中から、12本のレポートを最終選考にノミネートし、同日、第1回目の優秀賞、特別賞、奨励賞を発表した。(以下、受賞者とレポートテーマ)

■優秀賞
青木英彦氏 小売業界「完全版:革新の探求~全体最適しかない~」
桂竜輔氏 シャープ「液晶分離後の姿を見据える」
甲谷宗也氏 ヘルスケア業界「広義IVD業界~日本医療機器興国論 臨床検査編~」
■特別賞
和田木哲哉氏 半導体製造装置「半導体製造装置の基礎:2016」
■奨励賞
鈴木克彦氏 運輸業界「トラック同乗第一弾:ラストワンマイルの宅配トラックに同乗」
劉京元氏 MRO市場「企業を"繋ぐ"無数の商材がオンライン化へ」

 表彰式に続き行われたパネルディスカッションは、『良きベーシックレポートとは?』をテーマに、モデレータをBRACの発起人である佐藤明氏**(株式会社バリュークリエイト代表取締役)が務め、受賞したベーシックレポートについて、それぞれの評価ポイントや理由を参加者とともに検証するという座談会形式で進行された。評価軸については若林秀樹氏(東京理科大学専門職大学院MOT教授)が、また、奥野一成氏(農林中金バリューインベストメンツ株式会社常務取締役CIO)と槙野尚氏(みさき投資インベストメント・オフィサー)が受賞レポートの説明を担った。

 パネルディスカッションには、若林秀樹氏、奥野一成氏、槙野尚氏、ロバート・アラン・フェルドマン氏(東京理科大学専門職大学院MOT教授)の4人のパネリストの他に、優秀賞を受賞した青木英彦氏と桂竜輔氏が加わり、中身の濃い意見交換が行われた。その後、会場からの質問に対してパネリストが答えるやり取りがあり、大盛況のうちにセレモニーは終了した。

*2018年11月3日(土)開催:
東京理科大学葛飾キャンパス開催~合同連携シンポジウム『あるべき知情財と人財の創造』

**佐藤明氏談:
 「セルサイドレポートが短期視点に偏りすぎている!」との問題意識から、元アナリストやバイサイドの方々と、長期視点の優れたレポートを表彰する「ベーシック・レポート・アワード(BRA)」という企画を立ち上げました。

 私自身、2000年までは証券アナリストとして、それ以降は、経営者のアドバイザー、投資家として経営と投資に関わってきました。日本企業の企業価値創造には、アナリスト・投資家と、経営者の厳しくも建設的な対話が必要で、そのためには、質の高いアナリストレポートと、アニュアルレポート(統合報告書含む)の車の両輪であると感じています。

 多くの方との対話でも共通の認識になってきました。アニュアルレポート・統合報告書にはアワードがありますが、アナリストレポートに対する賞はありません。株式市場の世界的な潮流の中で、短期視点でのレポートが増えましたが、いくつかの証券会社で、ベーシックレポート(名前はいろいろありますが)が出てくるようにもなりました。

 この賞では、素晴らしいレポートを書いたアナリストを讃え、経営者や実務家と共有することで、アナリストも持っているナレッジを活かすことができればと思っています。試行錯誤ではありますが、皆さまのご参加、応援、関係者の方々へのシェアをお願いできればと願います。

以上

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