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【特集】桂畑誠治氏【“一蓮托生”日米株式市場、次の展開はこうなる】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―日経平均400円超下落、再び押し寄せるリスクオフの波―

 週明け15日の東京株式市場は大きく売り優勢に傾き日経平均株価は400円を超える下げとなった。前週末に大幅続落で始まったものの体勢を立て直し大引けはプラス圏で着地、同日の米株市場も主要指数が揃って切り返しに転じ、これで世界株安のトレンドは一区切りついたかにも見えた。しかし、今回の動乱相場は一筋縄ではいかないようだ。果たして米国株市場の急落は期間限定のガス抜きで終わるのかどうか。また、米国と一蓮托生の日本株市場の行方はどうなるのか。第一線で活躍する市場関係者にずばりその見解を聞いた。

●「11月後半以降は2万3000円台で強調展開へ」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 まず、米国株市場については、ここから一段と大きく水準を下げる公算は小さく、早晩下げ止まる形が想定される。しかし、当面は戻り足も鈍くリバウンドは限定的なものとなろう。米長期金利は上昇一服となっているが、今回の急落の背景には米景気の先行きに対する警戒感がある。ムニューシン米財務長官が中国を為替操作国に指定する可能性に言及したことも不安心理を増幅させたが、結局のところは米中貿易戦争の様相が強まるなかで、自国経済への悪影響に身構える形で売りを誘発した。また株式需給面では、CTAによるアルゴリズム売買の影響も受けたとみられる。

 ただし企業業績は好調であり、中間選挙後は目先の不透明要因が払拭され、年末にかけて米株市場は上昇傾向をたどるとみている。中間選挙については、上院を共和党が制し下院は民主党が勝利するという“ねじれ”をメインシナリオとして株式市場は織り込んできた。上院、下院とも民主党が制する可能性もあるが、この場合は政策が決まらない“ねじれ”よりはむしろ株式市場にとってはポジティブとみている。

 いずれにせよ、トランプ米大統領は雇用拡大を最重要視しており、FRBは利上げによる影響で景気を鈍化させることは避けたいという姿勢で一貫している。ここからのNYダウの予想レンジとして下値は2万5000ドルを大きく下回るような調整は見込みにくい。上値については中間選挙後、年末にかけて上昇するシナリオが有力で、最高値2万6828ドル(終値ベース)をうかがう展開も考えられる。

 一方、東京市場は円高に対する警戒感が再燃している。ムニューシン財務長官により日米貿易協議に為替条項を取り入れる可能性が示唆されたことで、輸出採算向上に対する期待が後退、主力株中心に上値が重い状況だ。しかし、為替は中期的見地に立てば日米の金融政策の違いからドル買い・円売りの動きが次第に強まることが予想される。目先は米国との通商摩擦問題が意識され、企業も今期業績見通しに対する慎重さは拭えないが、最終的に通期業績は計画よりも上乗せされるケースが増えるだろう。実態面を映す形で日経平均は戻り相場の道筋をたどることになりそうだ。下値は2万2000円台を割り込む場面があってもそこはイレギュラーで買い場となる。11月後半から米株市場に追随する格好で上値を指向、2万3000円台での強調展開を予想する。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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