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【通貨】日本の仮想通貨に関する取り組みは片手落ち【フィスコ・ビットコインニュース】


仮想通貨やICO(Initial Coin Offering/新規仮想通貨公開)によるクラウドファンディングは、世界の資本を日本に集める方法として大きな可能性を秘めている。

なかでもいち早く仮想通貨関連の法整備に取り組んでいた日本にとっては、仮想通貨やICOをうまく外貨獲得の方向へと誘導することができれば、日本再生のひとつの切り札となる可能性もあるはずだ。

Coin Scheduleによれば2017年度のICOによる資金調達額は約39億ドルにおよび、2018年に入ってからはICOによってすでに28.6億ドルもの資金調達が行われている(3月8日時点)。メッセージアプリのテレグラムは、ICOによってわずか3週間程で世界中の81人の投資家から約8.5億ドル分(約900億円相当)の資金を調達している。

仮想通貨技術を利用するトークンによる資金調達であるICOという仕組みは、国の枠組みを簡単に飛び越えて、巨額の資金をスピーディに獲得することができる可能性を見せてくれる。

ところが、日本では外貨が流出しやすい仮想通貨取引所の整備を優先して行っているものの、外貨獲得手段として有望なICOを厳しく規制する方向へ舵取を行う模様だ。自民党・IT戦略特命委員会とFinTech推進議員連盟(議連)とは、早ければ今年3月末までにICO規制に関して一定の結論を出すとしている。

2月13日、日本で仮想通貨交換業者の登録をせずにICOの営業・勧誘を行っている点を不正として、マカオを拠点とするブロックチェーンラボラトリーに対し、金融庁は改正資金決済法に基づく警告を出した。

また、最近では、新規事業の旅行提案サービス(世界の観光スポットの巡回ルート検索サービス)でICOの実施を計画し、日本語のホワイトペーパーまで作成していた、タイを本拠とするタビット社に対し、金融庁は「日本居住者にICOを購入させるなら、日本の仮想通貨交換業者としての登録をしなければならない。」との警告を発している。これを受けて、タビット社は日本居住者へのトークン販売を断念する旨を発表した。

今後、もしも金融庁へ仮想通貨取引事業者としての登録がない事業会社のICOを原則として禁止する方針となる場合には、大幅に間口は絞られることとなるだろう。

現状、仮想通貨の日本円建てによる取引のシェアは、クリプトコンペアによればビットコインでは日本円が49.26%とトップを占める(3月8日時点)。しかし、日本発信の大型ICO案件は他国に比して決して多いものではない。また、今後厳しい規制が実施された場合、詐欺案件が減少するというメリットはあるものの、大きなイノベーションへとつながる、もしくは新しいプロジェクトの促進につながる芽を更に阻害する形にもなり得る。

極論すればだが、このような片手落ちの選択をするのであれば、中国のように仮想通貨に関連する事業は全面禁止とする方がまだましといえるかもしれない。

2008年改正貸金業法の全面施行が迫る中、借入総額の総量規制などによって、消費者金融などの正規業者を利用できていた利用者が貸し付けを受けられず、規制強化が闇金の台頭を促すという事態があったが、今回の仮想通貨関連の規制についても、このような望まない結果を生み出す可能性もある。

利用者保護を念頭に置くことはもちろんであるが、イノベーションの促進、ひいては外貨獲得という国家としての重要事項をいかに阻まない規制対応が行われるかが注目される。

《MT》

 提供:フィスコ

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